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愛犬の呼吸が普段より早いと感じたら、それは体調不良のサインかもしれません。日常的に見られるパンティング(口を開けて舌を出し、速く浅い呼吸をすること。主な目的は体温調節のために行います。)から、深刻な健康問題を示唆する異常な呼吸まで、その原因と対処法について解説します。
犬の呼吸が早くなる主な原因
1. 運動後
犬も人間と同じく、運動時には筋肉が大量の酸素を消費するため、体外から酸素を早く取り込もうとして呼吸が速くなります。これは正常な生理的現象で、運動を終えてしばらくすると呼吸は自然に落ち着きます。
ただし、少しの運動で息が荒くなったり、運動を嫌がったりする場合は、心臓や呼吸器に問題があるかもしれません。そのため、体調や体型に合わせて適度な運動を心がけ、運動後には十分な水分を与えて休息を取らせることが大切です。
2. 体温調節
犬は、人間のような汗腺がほとんどないため、汗をかいて体温を調節することができません。代わりに、パンティング(口を開けて舌を出し、速く浅く呼吸する行動)によって体温を調節します。パンティングは、運動後や気温が高い時に見られる正常な生理現象です。
暑い時期や体温が上昇した際に犬の呼吸が速くなるのは、体温調節のための自然な反応です。通常は、涼しい場所に移動させるか安静にしていれば、呼吸は正常に戻ります。
犬にとって快適な環境温度は21〜25℃、湿度は50〜60%程度です。室内の温度や湿度を適切に管理するためには、エアコンや除湿器の使用が効果的です。
3. ストレス
ストレスにより不安や恐怖、緊張、興奮を感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になり、その結果、一時的に呼吸が速くなることがあります。生活環境の急激な変化などでよくみられる反応ですが、時間の経過や原因が取り除かれることで、正常な呼吸に戻る場合がほとんどです。
4. 加齢による心肺機能の低下
年齢を重ねると、体の様々な機能が低下し、特に筋力や心肺機能の衰えが目立つようになります。そのため、以前は問題なく行えていた運動や散歩でも疲れやすくなり、呼吸が速くなることがあります。これは、加齢による自然な変化であり、一般的には問題ありませんが、過度な疲労を避けるために、愛犬の年齢に合わせた適切な運動量を心がけることが大切です。
5. 怪我や病気による痛み
犬の呼吸が速くなる原因のひとつに、怪我や病気による痛みが考えられます。
怪我は外見で確認できることもありますが、病気による痛みは専門家でないと判断が難しい場合が多いです。日頃から愛犬の体を触って観察し、痛がる箇所がないかチェックすることで早期に問題を察知することが可能です。
6. 異物誤飲
異物を食べてしまった場合、喉や食道に詰まって気管を圧迫し、呼吸困難を引き起こすことがあります。この状況では、呼吸が荒くなるほか、吐き出そうとしてえずく、よだれを垂らすなどの症状が見られます。さらに、舌が青紫色になる、粘膜が白くなるなどの重篤なサインが現れた場合は直ちに病院へ連れて行きましょう。
誤飲や誤食は、食道の詰まりだけでなく、毒性のある食材による中毒症状を引き起こすこともあるため、犬が危険な食材を摂取した可能性がある場合も、速やかに動物病院を受診することが重要です。
7.体重過多(肥満)
太り過ぎも、呼吸が乱れる原因になります。体重が多過ぎると酸素飽和度、呼吸の換気量、呼吸時間が早まり、呼吸器機能が低下します。反対に体重の低下は心拍数が少なくなり、肺や心臓への負担が軽減され、呼吸も安定してきます。
犬の通常な呼吸数
犬の正常な呼吸数は、1分間に10〜35回とされ、小型犬は大型犬に比べて呼吸数が多くなる傾向があります。
通常、安静時には鼻呼吸を行いますが、活動時や興奮している時には、パンティング(口を開けて舌を出し、速く浅く呼吸する行動)が見られることもあります。
犬の呼吸数は外気温や感情の変化によっても変動するため、夏場や興奮時には呼吸数が増えることが一般的です。呼吸が速くなった場合は、それが一時的なものなのか、病気が隠れている可能性があるのかを見分けるために、日頃から安静時や睡眠中の呼吸数を把握しておくと良いでしょう。
いずれにしても、普段から愛犬の呼吸の様子を観察し、異変があれば速やかに対応することが大切です。
犬の呼吸数の測り方
犬がリラックスしている安静時に、呼吸数を測ってみましょう。
胸やお腹が上下する動きを、1呼吸としてカウントします。
- 安静時(寝ている時やじっとしている時)、1分間に何回呼吸するかを数えます。
- 短時間で測定する場合は、10秒間の呼吸数を6倍にするか、15秒間の呼吸数を4倍にして、それを1分間の呼吸数とします。
- 測定は犬がリラックスしている状態で行い、日常的にその数値を把握しておくことで、異常があった際にすぐに察知することが可能です。
呼吸数を測定することで、犬が快適に過ごしているか、ストレスや健康上の問題がないかを確認することができます。暑い時期や環境の変化により呼吸数が変わることもあるため、季節ごとにも観察しておくと役立つでしょう。
犬の呼吸が早いことで懸念される病気
1. 呼吸器疾患(肺炎や気管支炎)
■肺炎
肺炎は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫などによる感染が原因で、肺胞とその周辺に炎症が生じる感染症です。このほか、誤嚥(食べ物や液体が気管に入ること)や刺激性の薬物、ガスの吸入などが原因で起こることもあります。
主な症状として、咳、鼻水、呼吸困難、震え、食欲不振、発熱などが見られ、場合によっては肺以外の場所にも感染が広がる可能性があります。肺炎は重症化しやすく、特に子犬や老犬では命に関わるリスクが高いため、症状が見られたら迅速に獣医師の診断を受けることが重要です。
■気管支炎
気管支炎は、主にウイルスや細菌による感染、寄生虫、ハウスダスト、タバコの煙などの化学物質、あるいは誤飲が原因で、気管支に炎症が生じる病気です。
犬が気管支炎にかかると、特徴的な乾いた咳をします。また、食欲不振や元気の低下が見られることもあります。この状態が慢性化すると治療が困難になり、重症化すると呼吸困難を引き起こすおそれがあるため、症状が現れたらできるだけ早く適切な対応をとることが重要です。
2. 心臓病
■僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓病の中で最も一般的なタイプで、心臓の左心房と左心室を隔てる僧帽弁が正常に閉じないことで血液が逆流する病気です。
この病気は初期段階では無症状であることが多いですが、進行すると運動や興奮時に咳が出るようになり、さらに悪化すると疲労感、体重減少、パンティング(呼吸が荒くなる)、呼吸困難などの症状が現れることがあります。また、毛細血管から血液中の水分が漏れ出し、肺水腫になる恐れもあります。
■心筋症
心筋症は、心臓の筋肉(心筋)に異常が生じ、心臓の機能が低下する病気です。心筋が正常に収縮できなくなると、酸素を含んだ血液が全身に十分に循環せず、体内の酸素不足が引き起こされます。これによって、呼吸数の増加やパンティング(呼吸が荒くなる)などの症状が現れることがあります。
3. 中毒症状
犬が危険な食材を誤飲・誤食してしまった場合、その食材による中毒症状が原因で呼吸数が異常に増えることがあります。
犬の呼吸が早い場合の対処法
1. 伏せの姿勢をとらせてあげる
一般的に、うつ伏せの姿勢は犬にとって呼吸しやすい体勢です。さらに、顎の下にタオルや枕を置くことで呼吸がより楽になることがあります。横向きや仰向けの姿勢は、肺が圧迫されやすいため、通常は避けた方が良いでしょう。
また、犬にとって快適な環境は、温度が21〜25℃、湿度が50〜60%程度とされています。そのため、必要に応じてエアコンを利用し、室温を適切に保って犬が快適に過ごせる環境を整えることが重要です。
2. 動物病院を受診する
愛犬に以下の症状が見られる場合は、緊急性が高いため、速やかに動物病院を受診してください。
・自然な呼吸ではなく、努力呼吸が見られる場合
(胸郭や肩を大きく動かして息をしている状態)
・上を向いて呼吸している、または通常の姿勢で呼吸できない
・長時間にわたり咳が続いている
・舌や口内の粘膜が青色や紫色(チアノーゼ)、または白っぽく変色している
・異常な呼吸が5分以上続いている
・横になることができず、立ったまま苦しそうにしている
受診の際には、状況を詳細に伝えるために、愛犬の呼吸状態を動画に撮影し、服用中の薬があれば一緒に病院に持参すると役立ちます。また、運動直後や暑さなど明確な原因がある場合には、涼しい場所で様子を見ることも大切ですが、状態が改善されない、もしくは悪化する場合は、すぐに病院を受診することが推奨されます。
まとめ
呼吸の異常は、病気や体調不良のサインであることが多く、見逃すと命に関わる状況につながることもあります。そのため、愛犬の呼吸の変化が見られた場合には、注意深く観察し、速やかに対処することが重要です。異常な呼吸が観察されたときは、できるだけ早く獣医師の診断を受けることをおすすめします。
■犬の呼吸が早くなる主な原因
1.運動後
2.体温調節
3.ストレス
4.加齢による心肺機能の低下
5.怪我や病気による痛み
6.異物誤飲
7.太り過ぎ(肥満)■犬の通常な呼吸数
1分間に10〜35回■犬の呼吸数の測り方
安静時に胸やお腹の上下動を観察すること■犬の呼吸が早いことで懸念される病気
1.呼吸器疾患(肺炎や気管支炎)
2.心臓病
3.中毒症状■愛犬の呼吸が早い場合の対処法
1.伏せの姿勢をとらせてあげる
2.動物病院を受診する










