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健康や美容によいと注目が集まっている「はちみつ」
愛犬ちゃんの健康のために与えたいと考える飼い主さんも多いようですが愛犬ちゃんに与えてもいいのでしょうか。結論からいえば、はちみつには様々な注意点があり、必ずしも犬にとって良い作用ばかりではありません。はちみつの糖質を中心に、メリット、デメリットを理解し、適切に使用することが大切となります。
はちみつは血糖値の上昇に注意
はちみつには、血糖値を上げる性質があります。健康な状態のときには、多少の血糖値の乱高下は問題ありませんので、少量であればあげても問題ないです。ただし、8歳を超えるシニア期や腎臓、肝臓などの内臓疾患をかかえている犬に継続的にあげることは、注意しましょう。
血糖値の急上昇、急降下は、インスリンなどのホルモンの過剰分泌や細胞の炎症に繋がり、様々な病気の引き金となると言われています。天然の甘味料だからというヘルシーなイメージに惑わされずに、適材適所で活用することが求められます。
1.糖尿病
はちみつと砂糖の糖質を比べると、
・はちみつの糖質 75.3g(100gあたり)
・砂糖の糖質 104.2g(100gあたり)
はちみつの糖質は砂糖より少なくなっています。
ですが、はちみつに主に含まれる糖質(果糖)は、吸収されるとすぐに肝臓でブドウ糖と中性脂肪に作り替えられ、血糖値を上昇させていきます。
「果糖」は砂糖の「ショ糖」よりも体内吸収が速いので、実は砂糖よりも血糖値を上げやすくなっています。このような注意点から、血糖値に注意が必要な糖尿病のある犬には、はちみつは与えない方が良いでしょう。特に糖尿病でインスリン治療を受けている場合は、はちみつを食べさせてはいけません。
2. ガン
血糖値が高いと、なぜガンを発症しやすいのでしょうか。血糖値が高くなるとインスリンの分泌にも変化が生じ、それが細胞の炎症に繋がり、細胞本来の修復再生機能が低下すると推定されています。
また血糖値が上がると、すい臓はより多くのインスリンを分泌するため、血液中のインスリン濃度が慢性的に高い状態を引き起こします。また、インスリンと似ているIGF-1の分泌も盛んになります。こうした物質の増加が、肝臓や腎臓、すい臓などの細胞に影響を及ぼし、細胞のガン化や増殖を引き起こすと考えられています。高血糖の状態を放置している期間が長いほど、リスクが高くなる傾向があります。
ガン細胞は通常、速いスピードで増殖するため、多くのエネルギーを必要とします。つまり、ガン細胞はたくさんのブドウ糖を必要とします。ガン細胞は正常細胞の3~8倍ものブドウ糖を取り込まなければ、その生命活動を維持できないという事が判っています。
ブドウ糖に代謝されやすく体内吸収が速やかなはちみつの果糖は、ガンにとって格好の餌となります。既にガンに罹患している場合はもちろんの事、ガンを未然に防ぐ点においても、はちみつは積極的に与えない方が良いと言えるでしょう。
3.内臓疾患の引き金になる可能性が
はちみつはGI値が高く、血糖値を急激に上げる食品です。
なぜ血糖値を急激に上げることが良くないのかというと、ひとつは急激な血糖値の上昇にともなって、一気にインスリンが分泌されてしまうからです。インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込み、エネルギーに変えたり、脂肪に変えて蓄えることで血糖値を下げます。したがって、一気にインスリンが分泌されることで脂肪の蓄積につながり、肥満の原因となります。
それでも処理しきれなかった過剰な血糖は、「糖化」(体のコゲ)という形で体に悪影響を及ぼします。人間では体の糖化がすすむと、細胞の劣化が進み、腎機能や目の病気、認知症を引き起こすと言われています。
また、短時間で血糖値の上昇と下降が起こることを「血糖値スパイク」と呼び、頻繁に繰り返されることで、血管の老化の原因となります。 これにより、免疫の低下や血管の損傷を招き、感染症にかかりやすくなる、腎臓病など疾患のリスクを上げることにつながります。
上記のような状態は、はちみつを1回摂取しただけでは起こりませんが、継続的に過剰摂取を繰り返した場合、そのリスクが上がることを理解しておきましょう。
その他の注意点 花粉症、肥満、ボツリヌス症
犬にはちみつを与える際に注意したい点は上記の他にもあります。はちみつを摂る事で花粉によるアレルギー症状がでることがあります。はちみつは、ミツバチが花の蜜を集めたものを抽出し加工した製品なので、作られる過程で花粉が紛れ込んでいる場合があるからです。
これまで花粉症がなかった犬でも、はちみつを食べたあとに下痢や嘔吐、皮膚の発赤や痒みなどが見られた際には、花粉アレルギーの可能性が考えられます。
また、はちみつは糖質が多く100gあたり329kcalと、カロリーも高い食品です。前述にもあるように、はちみつの糖質である「果糖」は非常に体内吸収が良いので、与えすぎると愛犬が肥満気味になってしまいます。
ボツリヌス菌による食中毒にも要注意です。腎不全など腎臓に疾患を持っている犬、腸の機能や免疫力が低下している犬には、ボツリヌス症を発症するリスクが高まると言われています。犬が健康で腸の状態も良ければ中毒を起こす心配は少ないと言われていますが、腸内環境が成熟していない幼犬や、働きが弱まっているシニア犬、免疫力が落ちている犬、毒素を出しにくい腎不全の犬には感染のリスクが高いので与えることは避けた方が良いでしょう。
※ボツリヌス症※
ボツリヌス菌は、土の中に広く存在している細菌で、熱に強いため加熱しても死ぬことがありません。ボツリヌス菌の「芽胞(がほう)」という卵のような休眠状態の菌が腸の中に入ると、発芽・増殖します。そして毒素を出し、ボツリヌス症が引き起こされます。
症状としては、便秘や元気消失など、最悪の場合は死に至ります。筋肉や神経に影響を及ぼすので、中毒になると歩けなくなったり、呼吸困難に陥ったりします。
犬は何歳(いつ)からはちみつを食べられる?
犬にはちみつを与えるのに、何か月から、何歳からという厳密な決まりはありません。ただし、腸内環境が育った1歳を過ぎてから与えるのが良いと言えるでしょう。また免疫に不安のある状態で与えることは避けたいので、持病のある犬や老犬にも、大量に与えることは避けた方が無難でしょう。
犬にはちみつを与える3つのメリット
1. 食いつきUPにつながる
犬は甘いものが大好物です。ケーキやクッキー、パンなど人間と同様な食いつきを示すことが多いです。食欲が無く、全く食べない場合、少量でも効果的にカロリー(エネルギー)補給できるは、食べない状態のときには大変有効です。はちみつがNGというより、食欲の状態によっては、効果的にエネルギー補給できるという点でメリットがあります。
2. 多彩な糖質を摂取できる
はちみつの約80%は糖質で、なかでも主成分である「ブドウ糖」と「果糖」はこれ以上分解する必要がない単糖類なので、犬の体内に入ると胃腸に負担をかけずに、速やかにエネルギーに変換されます。健康な犬の疲労時にはちみつを与えれば、素早いエネルギーチャージを期待できます。
3. ポリフェノールを摂取できる
はちみつには、「カフェ酸」「フェルラ酸」「ケンフェロール」「クリシン」など、10種類以上のポリフェノールが含まれています。ポリフェノールには、体の細胞をサビさせる活性酸素を除去する抗酸化作用や殺菌作用、抗菌作用があるので、病気の予防や老化防止に役立つと考えられます。
4. ミネラルを摂取できる
ミネラルはさまざまな種類の相互作用によって血液や筋肉、骨などを造ったり、神経の伝達をスムーズにするなど生体の維持に欠かせないもので、はちみつには、鉄分、マグネシウム、カリウムなどの多種類のミネラルがバランスよく含まれています。
犬への適切なはちみつの与え方
量
犬にはちみつを与えたい場合、1日あたりの適量は体重1kgに対し1g程度です。 とはいえ、愛犬の体格や体調によって適正量は異なりますし、アレルゲンとなる可能性もありますので、初めて与える場合はこの基準よりも少ない量で与えてみてください。 水に薄めて少量を与えるなどの方法もあります。毎日はちみつを食べる事に関しては、前述したようなリスクがあるので、お勧めは出来ません。ただし、摂り難い薬を服用するなど、はちみつを与える必要性がある場合は、その薬を服用出来る量のみに止めて活用する様にしましょう。
食べ方
ヨーグルトには整腸作用があり、人間でも便秘や下痢を改善してくれることはよく知られていますが、犬にもその効果があるといわれています。腸の不調があるときや食欲のない時に与えるといった目的がある場合は、ヨーグルトにはちみつを加えると嗜好性が高くなるので、良い効果となる事があります。ただし、嗜好性の高いものは、いつの間にか摂取量が増える事が多いです。毎日ではなく、胃腸の不調などの理由がある時だけに止めておいた方が良いでしょう。
犬にはちみつをあげる際に気をつけておきたいこと
加工品は避け、純粋や精製はちみつをあげるようにする
はちみつを利用した加工品はクッキーやヨーグルトなどさまざまありますが、人間が食べる製品は砂糖などが大量に含まれているので犬には与えないようにしましょう。
犬に与えても良いはちみつの種類としては以下の通りです
◆純粋はちみつ
蜂が花や樹木から集めてきた蜜に、一切の添加物を加えず、成分の調整も行っていないはちみつです。商品には「純粋」「Pure」と書かれています。
◆加熱はちみつ
加熱はちみつとは、蜂が集めた密に、水飴や果糖、ショ糖などを加えて加工されたものです。国際基準では加糖は認められていませんが、日本では糖類を40%未満まで添加したものが「加熱はちみつ」として認められています。
◆精製はちみつ
蜂が集めた蜜から匂いや色などを取り除き、はちみつの甘味だけを抽出したものを、精製はちみつといいます。加熱濃縮処理をしたあとに、色や香りを調整していることが多いようです。
マヌカハニーを代替商品として使用する
マヌカハニーとは、主にニュージーランドに自生するマヌカの花から採取されたはちみつで、強力な殺菌・消毒作用が認められています。マヌカハニーは一切の加工を行っていない純粋なはちみつで、血糖値の上昇指数(GI値55前後)と低い部類に入ります。犬がはちみつが大好きという場合、その代替商品としてマヌカハニーを使用するのは、有効と言えそうです。
まとめ
はちみつのメリット…
食欲が無く、全く食べない場合、少量でも効果的にカロリー(エネルギー)補給できるは、食べない状態のときには大変有効です。はちみつがNGというより、食欲の状態によっては、効果的にエネルギー補給できるという点でメリットがあります。
はちみつのデメリット…
はちみつには、血糖値を上げる性質があり、健康な状態のときには、多少の血糖値の乱高下は問題ないものの、8歳を超えるシニア期や腎臓、肝臓などの内臓疾患をかかえている犬に継続的にあげることは、注意しましょう。
血糖値の急上昇、急降下は、インスリンなどのホルモンの過剰分泌や細胞の炎症に繋がり、様々な病気の引き金となると言われています。天然の甘味料だからというヘルシーなイメージに惑わされずに、適材適所で活用することが求められます。