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犬のてんかんは、脳の神経細胞が異常な興奮をすることによって引き起こされます。てんかんを起こすと、突然倒れたり、意識を失って痙攣したりと、家族にとっては驚きや不安に襲われることが多いでしょう。
ここでは、そんなてんかんの原因や症状、そして対処法について解説します。
犬のてんかんとは
てんかんは、反復的な発作を特徴とする神経疾患のひとつで、脳の神経細胞が異常な興奮をすることによって引き起こされます。発作は通常、短期間の脳の機能の変化を伴い、意識障害、けいれん、筋肉のこわばりなどの身体的症状を引き起こすことがあります。
てんかん発作が持続する場合は、早急に獣医師に相談することが必要です。
てんかんになりやすい犬種
特発性てんかんは、犬で最も多く、発生率は約100頭に1~5頭の割合とされています。この病気は、6ヶ月齢から6歳までの間に発症しやすく、特定の犬種で発症リスクが高いと考えられています。
特に、イタリアン・グレーハウンド、シベリアン・ハスキー、ゴールデン・レトリバー、ビーグル、ダックスフンド、プードル、ボストン・テリア、ペキニーズ、アメリカン・コッカー・スパニエルなどは、てんかんの発症リスクが高い犬種です。
これらの犬種を飼っている場合は、日頃から症状に注意し、気になる症状や異常がみられたら、早めに動物病院に相談しましょう。
犬のてんかんの種類
特発性てんかん
特発性てんかんは、脳に構造的な異常が認められないてんかんの総称で、脳波検査でのみ、てんかん特有の異常が確認されます。特発性てんかんは、多くの場合、6歳までに初めて発症することが特徴です。発作時以外は正常な行動が見られ、通常の生活が可能です。
また、血液検査、尿検査、MRIなどの他の検査でも特に異常は認められません。原因が特定できないため「特発性」と呼ばれ、通常、遺伝的要因が関与していると考えられていますが、そのメカニズムはまだ明確には解明されていません。
構造性てんかん
構造性てんかんは、脳腫瘍、脳炎、脳血管障害、頭部外傷など、脳の病変が原因で発作が起こるタイプのてんかんです。このタイプでは、脳に明確な異常が確認され、発作を引き起こす病変が特定されます。
通常、MRI検査や脳脊髄液検査を通じて診断が行われ、原因となる病変の治療が必要です。発作以外にも、神経的な異常や行動の変化が見られることがあり、特に高齢の犬に多く見られますが、若い犬でも発症が報告されています。
犬のてんかん発作の主な症状
てんかんの発作には、症状の現れ方により、いくつかの種類に分類されます。
軽度の発作であれば、数秒から数分以内におさまり、その後は何事もなかったかのように元気を取り戻すこともあります。
全般発作
てんかんが脳全体に広がり、体全体に症状が現れるタイプの発作です。発作中は、意識を失っていることも多く、主な症状として以下のようなものがあります。
・全身の筋肉が硬直する
・手足をガクガク震わせる
・放心状態になる
・全身のけいれん
・犬かきのような動きをする
・全身の筋肉の脱力
・失禁や脱糞を伴うこともある
発作の前兆として、いつも以上に甘えてきたり、不安そうにしたり、そわそわするなど、性格や行動に変化が見られることがあります。
さらに、大きな発作が治まった後には、うろうろと歩き回る、呼びかけにも反応が薄い、ふらふらする、など発作の後遺症が数十分続くこともありますが、このような症状は、時間の経過とともに完全に消失します。
焦点性発作
てんかんが脳の一部で発症し、体の一部に限局して症状が現れる発作です。発作中も意識があることが多いですが、一時的に意識が低下することもあります。主な症状は以下のとおりです。
・体が硬直して突っ張る
・四肢や顔の筋肉が小刻みにけいれんする
・口をくちゃくちゃと動かす
・何もないのに空中に向かって噛みつく(ハエ噛み行動)
・落ち着きがない
・よだれが大量に出る
※その他
▪非けいれん性全般発作
脳内で発作が起こっているにもかかわらず、全身に痙攣が見られないタイプの発作です。症状としては、脱力状態になる、一見眠っているように見えるなど判断するのが難しい場合があります。
愛犬がてんかんになった際の対処法
1. 身の回りの安全を確保する
自宅で犬がけいれんなどの発作を起こした場合、直接発作を止めることはできませんが、犬が家具にぶつかったり、段差から落ちたりするのを防ぐために、周囲を柔らかいタオルやクッションで囲むなどの対策を講じることが大切です。
また、発作中は体に触れることは避けた方がよいでしょう。犬は、発作中に自分の体をコントロールできず、無意識に噛みついてしまうことがあるためです。そのため、犬が動き回っている時は、無理に体を抑えつけたり揺さぶったりせず、周囲の環境に気を配りながら、注意深く見守ることが重要です。
2. てんかんの発作時間を記録する
ほとんどの発作は2〜3分以内におさまり、長くても5分程度で終息します。発作中の様子や持続時間を正確に伝えられるよう、動画で撮影したり、発作の開始・終了時間をメモしておくとよいでしょう。
ただし、1回の発作が5分以上続く場合や、発作が完全におさまる前に次の発作が起こる(重積発作)、または24時間以内に2回以上の発作が発生する(群発発作)といった状況が見られた場合は、できるだけ早く動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰いでください。
3. 落ち着いて様子を観察する
発作中の犬に対しては、体を揺さぶったり話しかけたりすると、脳に余計な刺激を与えて状況を悪化させる恐れがあります。また、意識がない状態の犬は、反射的に噛むことがあるため、怪我を防ぐためにも発作中は犬を無理に触らず、落ち着いて様子を見守りましょう。
4. 観察記録をもとに動物病院を受診する
発作にはさまざまな症状があるため、発作時の様子を動画で記録しておくと、動物病院での説明がスムーズになります。また、発作が起こった際の天候や、刺激となるような音、光など、いつもと違う状況があれば、あわせて記録しておくと、発作の引き金となる要因を特定する手がかりになります。
さらに、発作がおさまった後の状態(もうろうとしたり、目が回っているような行動など)も動画に残しておくと、動物病院での診断に役立ちますのでお勧めです。
まとめ
てんかんは、脳の疾患であり、予防が難しいものですが、適切に管理すれば犬の生活の質を維持しながら長く共に過ごすことが可能です。
発作が起きた際には、周囲の環境を迅速かつ安全に整え、特に発作が5分以上続く、連続して発作が起きる、1日に2回以上発生する場合はすぐに動物病院に相談しましょう。
発作の様子を動画に記録し、診察時の参考資料として役立ててください。薬物治療を開始した際には、投薬量と投薬間隔を守り、発作の頻度を減らすことを目指します。そのためには、発作の観察が治療の手がかりとなるため、動物病院との連携が欠かせません。
■犬のてんかんとは
・てんかんになりやすい犬種■犬のてんかんの種類
・特発性てんかん
・構造性てんかん■犬のてんかん発作の主な症状
・全般発作
・焦点性発作■愛犬がてんかんになった際の対処法
1.身の回りの安全を確保する
2.てんかんの発作時間を記録する
3.落ち着いて様子を観察する
4.観察記録をもとに動物病院を受診する










