「普段元気な愛犬が突然、白い泡を吐いてしまった」
そんなとき、何が原因なのか、すぐに病院へ行くべきか、迷う飼い主さんも多いはずです。健康な犬でも、時々白い泡を吐くことがあります。必ずしも重大な問題とは限りませんが、体調に異常があり、何か病気に罹っていることも考えられます。場合によっては、危険な状態で、早急な対応が必要なケースもあるため、見極めが重要です。
ここでは、犬が白い泡を吐く理由や適切な対処法、考えられる病気のリスクなどについて解説していきます。いざというときに慌てないために、ぜひ参考にしてください。
犬が白い泡を吐くのはなぜ?6つの原因
犬が突然、白く泡立った液体を吐くと、病気ではないかと不安になるものです。けれども、すべてのケースが深刻な異常というわけではありません。
白い泡の嘔吐には、比較的よくある生理的な理由から、見過ごしてはいけない病気の兆候まで、さまざまな原因が考えられます。ここでは、飼い主が押さえておきたい代表的な原因を紹介します。
犬が吐いた白い泡は、胃液や唾液、水などです。空腹時に水を一気に飲んだり、過剰に出た唾液を飲み込むことで、白い泡を吐くことがあります。
また、空腹状態が長時間続くと、胆汁が胃に逆流したり、胃酸が増えすぎたりして、吐いた白い泡に黄色い液体が混ざることもあります。
どちらも、その後ケロッとしていて、食欲もある場合は、ご飯を食べて胃に何か入ることによって落ち着くことが多いので、深刻度は低いです。
1. 空腹や食事の間隔があきすぎている
犬は空腹が長く続くと、胃酸が過剰に分泌され、胃の粘膜が刺激されることがあります。その結果、胃液と唾液が混ざった白い泡を吐くことがあるのです。朝起きてすぐや、夕方の散歩前など、前回の食事から時間が経っているときに起こりやすい傾向があります。
吐いたあとにケロッとして元気があり、食欲も通常通りであれば、過度に心配する必要はないかもしれません。とはいえ、繰り返すようであれば、食事の回数やタイミングを見直すことが大切です。
2. 急いで水を飲んだ・飲みすぎた
運動後や興奮したあとに水を一気に飲んでしまうと、胃が急に冷やされたり、水分と唾液が胃酸と混ざって、白い泡状の液体を吐いてしまうことがあります。暑い時期や、散歩帰りのタイミングは注意が必要です。
こうした嘔吐は比較的一時的で、その後は元気なことも多いのですが、水を飲んでもすぐに吐いてしまう状態が続く場合は、内臓への負担や病気の可能性も考えられます。落ち着いてから少量ずつ水を与えるとよいでしょう。
3. 環境の変化などでストレスを感じている
犬はストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、胃腸の動きに影響が出ることがあります。たとえば、環境の変化(引っ越し・旅行・来客)、長時間の留守番、大きな音や慣れない場所などが引き金となり、嘔吐を引き起こすことがあります。
ストレス性の嘔吐は、空腹時と重なって白い泡として出ることも多く見られます。愛犬の生活リズムや周囲の変化を思い返し、思い当たることがないか確認してみましょう。
4. 胃腸や内臓の病気を抱えている
白い泡を吐く様子が続いたり、元気がない、下痢や発熱をともなう場合は、何らかの病気が関係している可能性があります。胃炎や腸炎、膵炎、腎臓や肝臓の不調など、内臓の疾患によって嘔吐が生じるケースもあります。
高齢の犬や持病のある子では、症状が急激に進行することがあるため注意が必要です。嘔吐物に血が混じっていたり、吐いたあとにぐったりしている場合は、早めに動物病院を受診し、適切な検査と治療を受けましょう。
5. 異物を飲み込んだ・食べすぎている
好奇心旺盛な犬は、散歩中や室内で落ちているものを口にしてしまうことがあります。ビニールや紐、プラスチックなどの異物を飲み込むと、消化ができずに吐き戻すことがあり、その際に白い泡が混ざることもあります。
また、一度に大量の食べ物を食べたあとに、消化不良を起こして吐くケースも。特に幼犬や食いしん坊の犬ではよくある原因のひとつです。誤飲が疑われる場合は、無理に吐かせず、速やかに動物病院に相談することが大切です。
6. 車や電車などで乗り物酔いをしている
犬も人間と同じように、車や電車などの揺れによって乗り物酔いを起こすことがあります。酔うことで気分が悪くなり、吐き気やよだれ、そして白い泡を吐くといった症状が出ることがあります。
乗り慣れていない犬や、過去に乗り物で体調を崩した経験がある犬は注意が必要です。乗車前に食事を控えたり、車内を涼しく保つなど、酔いにくい環境づくりも対策のひとつです。移動後に嘔吐が見られた場合は、休息をとらせ、様子をしっかり観察しましょう。
白い泡以外の嘔吐物の原因
犬が吐くものは白い泡だけとは限りません。嘔吐物の色や性状によって、体調の変化や病気のサインを読み取るヒントになることもあります。ここでは、「白い泡以外の嘔吐物」が見られたときに考えられる代表的な原因について、見た目ごとに解説します。
黄色い液体を吐いた場合
犬が黄色っぽい液体を吐いたときは、胆汁が胃に逆流している可能性があります。これは「胆汁嘔吐症候群」と呼ばれ、空腹時間が長くなったり、食事のリズムが不安定なときに起こりやすい症状です。
とくに朝方、胃の中が空っぽの状態で起きやすく、白い泡と混ざって吐き出されることもあります。
食べたものがそのまま出てきた場合
食べたばかりのドッグフードやおやつが、ほとんど消化されずに吐き出されることがあります。これは「吐き戻し」や「逆流」と呼ばれるもので、食後すぐに起こりやすいのが特徴です。早食いや興奮、運動直後の食事などが原因になることが多く、一過性であればそれほど心配はいりません。
血が混じっている場合
嘔吐物に赤い血や、黒っぽい血の混じったものが見られた場合は、胃や腸など消化器のどこかで出血が起きている可能性があります。新しい出血であれば赤く、胃酸によって変色した場合はコーヒーかす状や黒褐色になります。
胃潰瘍、腫瘍、異物誤飲による損傷など、放置できない原因が隠れていることもあるため、血の混じった嘔吐があったときはすぐに動物病院で診てもらいましょう。
緑色の液体を吐いた場合
犬が草を食べたあとに緑色の液体を吐くことがあります。これは草の繊維や胆汁が混ざったものと考えられ、軽い胃のむかつきや、体内にある異物を排出しようとする自然な反応のこともあります。
ただし、庭や公園などにある植物の中には、犬にとって有害なものもあるため、どんな草を食べたかがわからない場合や、吐いたあとに元気がないようすが続く場合は、安全のために受診を検討してください。
嘔吐しやすい年齢や犬種
1. 嘔吐しやすい年齢
幼犬やシニア犬は、年齢によって原因は異なりますが、吐いてしまうことが多くなります。
幼犬の場合、嘔吐の原因として最も多いのは誤飲です。好奇心旺盛な幼犬の目に届くところには、小さなものや食べ物と間違えそうなものを置かないように気を付けてあげましょう。
一方、シニア犬は、加齢に伴い消化機能が衰えてくるので、食べ過ぎや早食い、空腹、食べ物が合わない、などが嘔吐の原因になることがあります。 またシニア犬が発症しやすいとされる、腎不全、肝不全、腸閉塞、膵炎、尿路結石、胃腸のトラブル、寄生虫感染症などの病気がきっかけで、嘔吐につながることもあります。
2. 嘔吐しやすい犬種
犬は四足で立っているため、胃が横向きになっており、少ない労力で吐き出しやすい体型をしています。
なかでも、チワワ、ポメラニアン、トイプードルなどの超小型犬は、他の犬種に比べて吐きやすい傾向があります。また、フレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズーなどの短頭種は、消化器官が短く、飲み込んだものが胃へ届くまでの距離も短いため、吐き戻しを起こしやすい体質といえるでしょう。
犬が白い泡を吐いた際の対処法
突然愛犬が白い泡を吐くと、驚きと不安で頭が真っ白になるものです。けれども、吐いたあとも元気があり、1回限りの嘔吐であれば、家庭で落ち着いて様子を見ることもできます。
ここでは、飼い主ができる具体的な対処法を3つのステップでご紹介します。無理のない範囲で実践し、必要に応じて獣医師の判断を仰ぎましょう。
1. 少量の水分やフードを与える
嘔吐後は、脱水症状を防ぐことが大切です。白湯や常温の水を少量ずつ舐めさせることで、水分補給を促しましょう。次にふやかしてペースト状にしたフードをほんの一口ほど与えて反応を見ます。その後6時間ほど吐く様子がなければ、少しずつ通常の食事に戻すことができます。
ただし、無理に食べさせるのではなく、あくまで愛犬の様子を見ながら慎重に進めてください。温度やにおいに敏感になっていることもあるため、食いつきや好みの傾向も参考にするとよいでしょう。
2. 経過観察して与える量を増やす
最初の一口で問題がなければ、時間を空けて少しずつ食事量を増やしていきます。
たとえば1時間後に吐き気が見られなければ、次は1日分のフードの4分の1をふやかして与えるのが目安です。その後も吐かないようであれば、数回に分けて与えることで胃への負担を減らせます。
1日2回が通常の食事回数なら、1日分のフード量は変えずに1日3〜4回に回数を増やしたり、夜寝る前にも少量与えたりすると、空腹時間を短縮でき、朝方の嘔吐予防にもつながります。
また、そもそもその犬に必要なフード量が足りていない場合もあるため、1日に与えるフード量を増量するなどの見直しも必要です。元気があっても、体重が減ってきているようなら、栄養バランスを見直すサインかもしれません。
3. 症状が継続する場合は動物病院を受診する
白い泡を1度だけ吐く程度であれば、特に心配する必要はないかもしれません。しかし、24時間以内に何度も嘔吐を繰り返す場合や、水分すら受け付けないようであれば、速やかに動物病院を受診しましょう。
嘔吐は体調の不調を知らせる重要なサインのひとつ。胃腸のトラブルや感染症、内臓の病気など、思わぬ原因が隠れていることもあります。とくに高齢の犬や持病のある犬では、症状が悪化しやすいため、早めの判断が大切です。
迷ったときは、吐いたようすや時間帯、吐いたものの色・においをメモしておくと、診察時の助けになります。
病院に連れて行くべき症状
犬が白い泡を吐いたとき、必ずしも病気とは限りませんが、なかには早急な診察が必要なケースもあります。吐いたあとに見せる様子や、ほかの体調変化に注目することで、受診のタイミングを見極めることができます。
ここでは、「この様子が見られたら病院へ連れて行った方がいい」という4つのポイントを見ていきましょう。
1. 嘔吐を繰り返して治らない
白い泡を一度吐いただけで元気にしている場合は、様子を見る選択もありますが、数時間おきに何度も吐くようであれば注意が必要です。飲食後すぐに吐いてしまったり、水分すら受け付けない状態が続く場合は、空腹が原因とは言い切れません。
そのままにしておくと脱水症状に陥るリスクもあるため、食事は控え、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。嘔吐物の色や量、時間帯などを記録しておくと、診察時に役立ちます。
2. 普段に比べて元気がない
白い泡を吐くだけでなく、元気がなくぐったりしている場合は、何らかの病気に罹っているかもしれません。また、腹部が膨らんでいたり、発熱やけいれんが見られる場合も、病気が疑われるため、動物病院への相談をお勧めします。
嘔吐の原因としては、細菌やウイルスの感染症、腫瘍、ホルモン関連の病気、胃腸や肝臓、腎臓の疾患などが考えられます。特に、胃拡張や胃捻転だった場合は緊急を要するため、速やかな病院受診が重要です。
3. 下痢や血便の症状がある
嘔吐だけでなく、下痢や血便といった消化器系のトラブルが同時に見られる場合は、体の中で炎症や感染が起きているおそれがあります。胃炎や腸炎、腎不全、膵炎などが原因となることが多く、放っておくと症状が進行する可能性もあります。
これらの症状が見られるときは、できれば便を持参して早めに獣医師の診察を受けましょう。
4. 食欲がない
白い泡を吐くのは空腹時によく見られますが、本来空腹であれば食欲もあるはずです。そのため、フードを出しても口をつけない、好きなおやつにも反応しないといったようすがある場合は、空腹以外の問題が隠れていると考えた方がよいでしょう。
消化器系の不調だけでなく、発熱や痛み、内臓疾患などが影響しているケースもあります。食欲不振が1日以上続くときは、念のため病院で診てもらうことをおすすめします。
まとめ
犬は、空腹時に白い泡を吐くことがありますが、その後も食欲があり、断続的に吐くことがない場合は、少量の食べ物を与えることで胃が落ち着くことが多いです。
嘔吐後は、脱水症状にならないように、少量の水を舐めさせたり、消化の良いペースト状のフードを少量ずつ与えるなど、経過観察しながら、徐々に与える量を増やしていくと良いでしょう。
ただし、嘔吐を繰り返している、元気がない、下痢など他の症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
■犬が白い泡を吐くのはなぜ?6つの原因
1.空腹や食事の間隔があきすぎている
2.急いで水を飲んだ・飲み過ぎた
3.環境の変化などでストレスを感じている
4.胃腸や内臓の病気を抱えている
5.異物を飲み込んだ・食べ過ぎている
6.車や電車などで乗り物酔いをしている■白い泡以外の嘔吐物の原因
・黄色い液体を吐いた場合
・食べたものがそのまま出てきた場合
・血が混じっている場合
・緑色の液体を吐いた場合■嘔吐しやすい年齢や犬種
・嘔吐しやすい年齢:幼犬、シニア犬
・嘔吐しやすい犬種:超小型犬(チワワ、ポメラニアン、トイプードルなど) 短頭種(フレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズーなど)■犬が白い泡を吐いた際の対処法
1.少量の水分やフードを与える
2.経過観察して与える量を増やす
3.症状が継続する場合は動物病院を受診する■病院に連れて行くべき症状
1.嘔吐を繰り返して治らない
2.普段に比べて元気がない
3.下痢や血便の症状がある
4.食欲がない








