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「最近、愛犬があまり水を飲んでくれない…」「元気そうに見えるけど、何か病気だったらどうしよう」「どうしたら犬は水を飲んでくれるの?」
家族である愛犬の飲水量が減ると、脱水症状などを心配になりますよね。犬の体の約6〜8割は水分でできており、水を飲むことは生きる上で必要不可欠です。しかし、犬が水を飲まない理由は、単純な好みから、深刻な病気のサインまで様々です。この記事では、犬が水を飲まない原因と対処法について解説します。
犬が水を飲まないときってどんなとき?
「昨日まで普通に飲んでいたのに、今日は全然飲んでくれない…」
「器に水を用意しても、プイッとそっぽを向いてしまう…」
愛犬が水を飲まない姿を見ると、「どこか具合でも悪いのだろうか」と、飼い主様は途方に暮れてしまうことでしょう。犬が水を飲まない状況とは、一体どのような状況を指すのでしょうか。飼い主様が遭遇しがちな4つのシーンにまとめました。
1. 元気で食欲もあるのに、水だけ飲まない
一番よくあるのが、このケースかもしれません。いつも通り元気に走り回り、ごはんもペロリと完食するのに、なぜか水だけ飲んでくれない。「ただの気分?」「わがままなのかな?」と、首を傾げてしまうものです。
この場合、ウェットフードなどの食事から水分が足りていたり、涼しくなって喉が渇きにくかったりと、生理的に今は必要ないだけかもしれません。しかし、器が汚れていたり、置き場所が気に入らなかったりという、犬なりのこだわりが原因のこともあります。
2. 水もご飯も拒否して、ぐったりしている
水だけでなく、大好きなごはんにも口をつけず、ぐったりと伏せている。これは、愛犬からの明らかなSOSサインです。「気持ち悪いのかな?」「どこか痛いのかな?」と、飼い主様の心配は募るばかりです。
このような場合は、消化器系の病気や感染症など、何らかの体調不良を抱えている可能性が考えられます。様子を見るのではなく、早めに獣医師に相談することを検討すべき状況です。
3. 水飲み場には行くのに、なぜか飲んでくれない
愛犬が水飲み場までトコトコと歩いて行き、器を覗き込むものの、少し舐めてやめてしまったり、飲むのをためらったりする。そんな「飲みたそうなのに飲めない」素振りを見せることもあります。
この場合、「飲みたいけれど、痛くて飲めない」という状態かもしれません。重度の歯周病で口が痛い、あるいは首のヘルニアなどで下を向く姿勢が辛い、といった可能性も考えられます。
4. シニア犬(老犬)になってから、めっきり水を飲まなくなった
若い頃は散歩の後にゴクゴクと水を飲んでいたのに、シニア期に入ってから、めっきり水を飲む量が減ってしまった。これも、多くの飼い主様が経験する変化です。
活動量が減って喉が渇きにくくなったり、喉の渇きそのものを感じにくくなったりと、加齢による自然な変化の場合も多いです。しかし、筋力低下で水飲み場まで行くのが億劫になっている、あるいは病気のサインである可能性も否定できません。シニア犬だからこそ、より注意深い観察が必要です。
犬が水を飲まない7つの原因
愛犬の状況を確認したうえで、次にその背景にある具体的な原因を探っていきましょう。
原因1. 食事から十分な水分が摂れている
愛犬が水をあまり飲まなくても、食事から十分な水分を摂取できている場合があります。例えば、ドライフードの水分含有量が約10%なのに対し、ウェットフードや手作り食は約80%が水分です。
そのため、ドライフードからウェットフードに切り替えた際など、食事内容の変更によって水を飲む量が減るのは、ごく自然なことです。食事から必要な水分をしっかり摂れているのであれば、健康上の問題はありませんので、過度に心配する必要はないでしょう。
原因2. 運動不足や涼しい季節(冬)だから
犬の飲水量は、気温の変化に大きく影響されます。暑い夏は、体温を下げるために舌を出して呼吸する「パンティング」が増え、多くの水分が失われるため、水を飲む量が増えるのは当然の反応と言えるでしょう。
逆に、寒くなり活動量が減る冬場は、喉の渇きを感じにくくなり、飲水量が減る傾向にあります。しかし、暖房の効いた乾燥した室内では、犬は気づかぬうちに皮膚や呼吸から水分を失われているため、注意が必要です。
原因3. 水や環境へのこだわり・不満
犬は非常に繊細な動物で、水やその環境に対して強いこだわりを持つことがあります。
- 水の鮮度:水道水のカルキ臭が苦手、器にフードのカスが浮いているのが嫌。
- 器の素材や形状:ステンレスの器に自分の顔が映るのが怖い、器が軽くて飲むときに動くのが嫌、ヒゲが器のフチにあたるのが不快。
- 置き場所:人通りが多くて落ち着かない、トイレの近くで不衛生に感じる。
原因4. 環境の変化によるストレス
引っ越し、ペットホテルへのお泊り、新しい家族(人間やペット)が増えた、長時間の留守番など、環境の変化は犬にとって大きなストレスです。犬は予測可能な環境で安心感を覚える動物であるため、こうした大きな変化は犬を強い不安や警戒状態にさせます。
不安や緊張状態が続くと、水を飲むことよりも周囲の安全を確認し、脅威がないかを警戒することを優先します。その結果、普段は安全な場所であるはずの水飲み場へ行く行動自体をためらったり、物陰に隠れて動かなくなったりすることがあります。
原因5. 老犬(加齢)のため
犬も私たちと同じく、年齢とともに体の活動性や機能が低下します。その結果、日常の活動量が減少し、それが水の摂取量や頻度の低下につながることがあります。さらに、歳をとるにつれてのどの渇きを感じにくくなったり、代謝の低下により水分の必要性が減るため、結果として犬が水をあまり飲まなくなります。
原因6.口の中や体の痛み
「飲みたくても痛くて飲めない」というケースです。重度の歯周病や口内炎、口の中にできた腫瘍などは、水を飲む際に強い痛みを伴います。また、首の椎間板ヘルニアや関節炎などがあると、首を下に曲げる姿勢が取れず、水を飲むのをためらうようになります。
原因7. 病気
犬が水を飲まない場合、以下のような深刻な病気のサインである可能性もあります。
腎臓病
病気が進行し、尿毒症の状態になると、吐き気などから水を飲めなくなります。(※初期段階では逆に多飲になることが多いです)
消化器系の病気
胃腸炎や膵炎などによる強い吐き気で、水を受け付けなくなります。
感染症や腫瘍
病気が全身に及び、体力が著しく低下すると、水を飲む気力すら失われてしまいます。
すぐに試せる!犬に水分を摂らせるための9つの対処法
ここでは、水分摂取を促すための具体的な工夫をご紹介します。
対処法1. 水の与え方を変える
器の種類や高さを変えてみる
フードスタンドや台を使って器に高さを出し、首や足腰への負担を減らしてあげましょう。また、ステンレス製が苦手な子もいるため、匂いや反射のない陶器製やガラス製の器に変えてみてください。また、常に新鮮な水が流れる自動給水器も、水の鮮度や動きに興味を持つ子にはおすすめです。
水の温度を変える
水の温度を変えてあげることで、水を飲んでくれるようになるケースもあります。犬にとって最適な飲み水の温度はそれぞれのため、氷を混ぜて冷やしてあげたり、常温やぬるま湯を用意してあげることで犬の好みの温度がわかるかもしれません。
手やシリンジであげる
人の手を舐めるのが好きな犬は、人が手で掬った水を好んで飲むことがあります。水をシリンジで与える方法も考えられますが、必要としていない時に強制的に与えると、間違って気道に入るリスクもあるため、慎重に行いましょう。
飲ませる場所を変える
水を飲ませる場所を変えることで、水を飲んでくれるようになるケースもあります。例えば外出先で水をあげてみたり、廊下や玄関に水を置くと水を飲んでくれることがあります。犬が水を飲んでくれない場合は、なるべく多くの箇所に水飲み場を設けてあげると良いかもしれません。
蛇口から水を流してみる
犬や猫は流れる水が大好きです。キッチンやお風呂場で水を流してみると、楽しく飲んでくれるかもしれません。
水の種類を変えてみる
普段水道水の水をあげている場合、浄水器を通した水に変えてみてはいかがでしょうか?水の種類が変わることで、犬にとっても飲みやすくなり飲んでくれることがあります。
ヤギミルクや乳酸菌を入れてみる
水に味や風味をつける目的で、ヤギミルクや乳製品やジュレを混ぜて飲んでくれる場合もあります。ヤギミルクの種類として「脱脂粉乳タイプ」と「全脂粉乳タイプ」がありますが、基本的にはミネラルの制限が効いた「全脂粉乳」のものが犬や猫には向いています。
対処法2. 食事から水分を補給する
ウエットフードや、ふやかしたフード、スープをかける
犬がなかなか水分を取らない場合、食事を通じて水分をあげるのが効果的です。普段ドライフードを主食としている場合、温水で湿らせたり、鶏肉や野菜の出汁を足したりすることで、犬が喜んで食事を取ってくれる可能性があります。
ドライフードにウエットフードのような缶詰を混ぜる方法や、全体をウエットフードに変更する方法もあります。ウエットフードを与える場合、ドライフードと比較して量が多くなりますが、水分と栄養を同時に摂ることができるためおすすめの方法です。
野菜から水分補給する
野菜を茹でてトッピングとして使用することは、水分の摂取を助ける選択肢の1つです。この方法により、愛犬は野菜の水分を自然に取ることができます。
生の野菜にはシュウ酸カルシウムのような結石の原因となる成分が含まれているため、茹でることでこれを取り除けます。そして、この方法は水分だけでなく、食物繊維の摂取も促進します。
~茹で野菜の調理方法~
推奨される野菜(血糖値を上げにくい野菜)
サツマイモ・キノコ類・ニンジン・コマツナ・ブロッコリー
1.みじん切りにして5~10分間茹でる
2.シュウ酸カルシウムを除くために茹で汁を捨てる
※焼く、レンジはNG
対処法3. ストレスフリーな環境を作る
飲みやすい環境
シニア犬の場合、部屋の中を頻繁に移動することが難しくなります。こうした場合には、1日の大半を過ごす箇所それぞれに水飲み場を設けてあげましょう。
新鮮さを保つ
水の鮮度を保つことも重要です。食事の間に水を飲むと、水飲みに食べカスが混ざってしまい汚れてしまいます。汚れた水を飲むことを嫌がることもあるため、頻繁な水換えを心がけましょう。
犬が水を飲まない時に注意すべきこと
※脱水症状のサイン
・皮膚に弾力がなくいつもより硬い
・鼻や舌が乾いている
・目が乾いて目やにが出る
・オシッコの量が少ない
これらの症状は、脱水症状のサインであることが考えられます。こうした兆候が見られた場合、背中の皮膚を少し摘んでみて下さい。摘んだ皮膚が元の状態に戻るまで2秒以上かかる場合、脱水症状を起こしている可能性があります。
犬が水を飲まない時に動物病院を受診する目安
受診の必要がないケース
水を飲まないけれど体調に異常がない場合、いったん2、3日様子を見てみましょう。仮に水を飲む量が減っても、普段通りの食事量を確保できていればほとんど問題ありません。
夏のよほど暑い時期でなければ、2、3日様子を見てみましょう。
受診したほうがいいケース
脱水症状が見られる場合
脱水の兆候が現れた際は、速やかに病院での診察を受けてください。特に子犬や高齢犬は、症状が見られたら速やかに受診することが大切です。
犬も人と同様、水分不足により脱水を起こすことがあります。軽度ならば、水や食事を摂取することで回復の見込みがありますが、重度の脱水になると動くことが困難になったり、弱ってしまいます。
脱水症状は放置してはいけない
脱水の状態を放置すると、心臓に過度な負担がかかり、深刻な症状や臓器の障害が起きるリスクが高まります。特に、肝臓や腎臓などの重要な臓器に影響が出ることもあり、その結果、多臓器不全のリスクも考えられます。そのため、状態を軽視せず、適切な対応を怠らないよう心掛けてください。
脱水症状が起きた場合にはどう対応すべき?
もし脱水症状が見られたとき、応急的な処置としては、経口補水液(ペット用や人間用のスポーツ飲料を薄めたもの、OS-1など)をシリンジ等を用いてゆっくりと与えてあげましょう。経口補水液が手元にない場合、沸騰させた水1Lに砂糖40gと塩3gを混ぜて手作りの補水液で代替することも可能です。
ただし、誤って気道に液体が入るリスクもあるため、慎重に行い、できるだけ早く専門家の診察を受けることをおすすめします。
犬が水を飲まない時の
水分補給におすすめのフードやおやつ
水分補給におすすめのフードやおやつは以下の通りです。ドライフードを水でふやかす以外の選択肢として参考にしてみて下さい。
犬が水を飲まない時に関するよくある質問
最後に、犬が水を飲まない時に関するよくある質問に答えていきます。
犬が水を飲まないとどうなりますか?
体内の水分が10%失われると重篤な状態に、15%以上失われると命に関わると言われています。脱水症状が進行すると、血液がドロドロになり、全身の臓器に十分な酸素や栄養を運べなくなります。その結果、腎不全や熱中症、多臓器不全など、命に関わる深刻な状態に陥るリスクがあります。
水の代わりに牛乳を与えてもいいですか?
多くの犬は、牛乳に含まれる乳糖をうまく分解できず(乳糖不耐症)、かえって下痢を引き起こし、脱水を助長する可能性があります。水分補給の目的であれば、犬用のミルクや、乳糖を含まないヤギミルクを使用しましょう。
まとめ
愛犬が水を飲まない原因と対処法を紹介しました。愛犬が水を飲んでくれないと、大きな病気ではないかと不安になりますよね。
しかし、元気で食欲があるならば、多くの場合、食事内容や環境の変化が原因です。飼い主様はまず落ち着いて、愛犬の「いつもと違う」サインがないかを観察してあげてください。この記事が、そのサインを見極める助けとなれば幸いです。もし少しでも危険な兆候を感じたら、迷わず動物病院に相談しましょう。

