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元気で食欲のある犬が下痢をするのは?原因や病院に行くべき症状

「愛犬が下痢をしているのに、本人はいたって元気で、食欲もある」
「病院に連れていくべきか、家で様子を見てもいいのか」

このような状況は、飼い主さんにとっても判断に迷うケースかもしれません。元気そうに見えるだけに、かえって対応に迷ってしまいますよね。今回は、元気で食欲のある犬が下痢をする原因や、病院へ行くべき下痢の症状、対処法について解説します。

関連記事:愛犬が下痢をしてしまったら?原因や対処法、事前の予防方法まで徹底解説

犬の下痢、元気で食欲があれば大丈夫?
病気に行くべきチェックリスト

犬が下痢をしていても、元気と食欲が普段通りある場合、その多くは一過性のもので、ホームケアで改善が期待できます。ただし、元気そうに見えるだけで、すべてのケースが安全とは限りません。以下のチェックリストで、どちらのケースに当てはまるかを確認しましょう。

【様子見OKなケースの目安】
・下痢以外の症状が全くない(嘔吐、震え、ぐったりするなどがない)
・下痢は1〜2回程度で、その後は落ち着いている
・便に血や、ゼリー状の粘膜が混じっていない
・思い当たる原因(フードの変更、おやつの与えすぎなど)がある

【元気でも、病院へ行くべきケース】

・下痢が3日以上続いている
・便に血が混じっている(鮮やかな赤、黒っぽいタール状など)
・下痢と同時に、時々嘔吐もする
・体重が少しずつ減ってきている
・子犬や老犬、持病のある犬である

この基準を理解した上で、考えられる原因と具体的な対処法を見ていきましょう。

元気で食欲のある犬が下痢をする原因

元気で食欲のある犬が下痢をする原因として、以下の9つが考えられます。

  • フードが合っていない
  • 食べ過ぎている
  • 危険な食べ物を食べてしまった
  • アレルギーが出ている
  • ストレスを感じている
  • 異物を飲み込んでしまった
  • 寄生虫が感染している
  • 気温の変化に体が対応しきれていない
  • 何らかの病気の初期症状が現れている

それぞれの原因について詳しく解説します。

1. フードが合っていない

元気な犬の下痢で多いのは、フードが合っていないことが多いです。これには2つのケースが考えられます。

一つは、フードを急に切り替えたことで、胃腸が変化に驚いてしまうケースです。腸内細菌のバランスが新しいフードに対応するには時間が必要です。フードを切り替える際は、最低でも1週間〜10日ほどかけ、徐々に割合を増やしていきましょう。

もう一つは、フードに含まれる特定の成分が、愛犬の体質に合わないケースです。ゆっくり切り替えても下痢が続くなら、原材料へのアレルギーや、脂質が多すぎて消化しきれていない可能性も。一度元のフードに戻して便が改善するか試し、続く場合は獣医師に相談しましょう。

2. 食べ過ぎている

犬は食欲旺盛なため、満腹感を感じずに食べ過ぎることがあります。

そして、食べ過ぎは胃に負担をかけ、消化不良を引き起こします。すると腸が刺激を受けて下痢につながってしまうのです。

食べ過ぎによる下痢を防ぐためには、愛犬の食事量を適切に管理し、過剰な量の食事を避けることが重要です。また、普段の食事だけでなく、おやつを与える際も1日の給餌量の10%程度に抑えましょう。

3. 危険な食べ物を食べてしまった

散歩中の拾い食いや、食卓からの盗み食いは、元気な犬が突然、激しい下痢を起こす典型的な原因です。人の食べ物の中には、犬にとって有害なものが意外とたくさんあります。特に以下のような食べ物は注意が必要です。少量でも重篤な症状を引き起こす可能性があるため、絶対に与えてはいけません。

  • ネギ類(玉ねぎ、長ネギ、ニンニクなど)
  • チョコレート、ココア
  • ぶどう、レーズン
  • キシリトール(ガムなどに含まれる甘味料)

食べ物の種類や量によって症状は様々ですが、下痢はよく見られる反応の一つ。人には問題のない食べ物でも、犬の消化器系に強い刺激を与えることがあるのです。食欲があって元気に見えても、体の中では深刻な反応が起きている可能性があります。

4. アレルギーが出ている

特定の食べ物に対するアレルギー反応が、下痢の原因となっていることもあります。体の免疫システムが、フードに含まれる牛肉や鶏肉、小麦といった特定の原材料を異物と判断し、攻撃することで、腸に炎症が起きてしまうのです。

また、下痢だけでなく、体をかゆがったり、皮膚が赤くなったりといった、皮膚症状を伴うことが多いのが特徴です。

また、いつも食べているフードでも要注意です。長年問題なく食べていた愛犬が、ある日突然アレルギー反応を示すこともあります。

新しいフードを変えた後や、いつものフードでも体調に変化が見られたら、食物アレルギーを疑ってみましょう。

5. ストレスを感じている

愛犬の下痢の原因として、意外と見落としがちなのがストレスです。犬も人間と同様にストレスによる胃腸障害を起こし、下痢になる場合があります。敏感な子の場合、日常生活の小さな変化でも体調を崩してしまうことがあります。

下痢の症状が出たときは、以下のようなストレス要因がないか、振り返ってみましょう。

・引っ越しや長時間の留守番
・家族構成の変化
・近所の工事等による騒音
・台風や雷などの自然現象  など

最近、愛犬の周りで何か変わったことがなかったか、思い返してみてください。もし思い当たる節があれば、できる限り取り除いてあげましょう。

6.異物を飲み込んでいる

好奇心旺盛な犬は、食べ物ではないものや食べてはいけないものを口にしてしまうことがあります。散歩中の拾い食いや、家の中での盗み食いは、元気だった犬が突然、激しい下痢や嘔吐を起こす原因の一つです。

おもちゃの破片や靴下などを飲み込んで腸閉塞を起こした場合や、人間用の薬、チョコレート、玉ねぎといった中毒性物質を摂取した場合は、命に関わる緊急事態に発展しかねません。

異物を飲み込んだことによって引き起こされる下痢は嘔吐を伴うことも多く、場合によっては緊急治療が必要となることもあります。

もし愛犬が何か危険なものを飲み込んでしまったと気づいたら、ただちに動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。可能であれば、飲み込んだものの包装や残りがあれば持参すると、より適切な治療を受けることができます。

7. 寄生虫が感染している

回虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナスなどの寄生虫も、下痢の原因の一つです。これらは寄生虫の卵で汚染された土を触ったり、感染した他の動物との接触によって移ることがあります。

また、子犬の場合は、お母さん犬からの感染にも注意が必要です。妊娠中の胎盤を通じて、または生まれた後の母乳を介して感染することもあるのです。

下痢の他にも、毛ヅヤが悪い、お腹が張っている、体重が減るなどの症状が特徴です。

寄生虫は、動物病院での定期的な検便と、獣医師が処方する駆虫薬の投与によって駆除・予防ができます。市販の薬では対応できない種類も多いため、必ず動物病院で相談しましょう。

8. 気温の変化に体が対応しきれていない

季節の変わり目や朝晩の寒暖差が大きい時期は、実は愛犬の胃腸にも負担がかかっています。人間でも気温の変化で体調を崩すことがありますが、犬も同様に敏感に反応するのです。

気温の著しい変化に身体が追いつかず、胃腸の動きが過敏になって下痢をすることがあります。室内環境を一定に保ったり、急な温度変化を避けたりする工夫をしましょう。

9. 何らかの病気の初期症状が現れている

下痢は単なる消化不良だけでなく、様々な病気の初期症状として現れることがあります。

例えば、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの内分泌疾患、炎症性腸疾患(IBD)や消化管型リンパ腫などの消化器疾患では、初期段階では元気や食欲に影響を与えず、軟便や下痢が続くことも珍しくありません。

他に思い当たる原因がないのに下痢が続く、あるいは良くなったり悪くなったりを繰り返す場合は、こうした病気の可能性も考えられます。様子を見ている間に、病気は静かに進行します。手遅れになる前に、一度、動物病院で相談することが重要です。

下痢の症状がある場合の対処法

下痢の場合の適切な対処法として、以下の4つがあげられます。

  • 激しい運動は控え、静かに休ませる
  • 適度な水分補給をする
  • 消化に良い食事を適量与える(給餌量を減らす)
  • 動物病院を受診する

ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

1. 激しい運動は控え、静かに休ませる

下痢をしているときの愛犬には、何よりも休息が大切です。

体調が悪いときは、人間と同じように、ゆっくりと体を休ませることで回復が早まります。普段は元気いっぱいの愛犬でも、この時期は静かに過ごさせてあげましょう。激しい運動やドッグランへのお出かけは控え、散歩も短めにしてください。

他にも、トリミングやシャンプーなどのお手入れも下痢が落ち着くまで控えるのが懸命です。まずは体を休ませ、エネルギーを回復に集中させてあげることが大切です。

2. 適度な水分補給をする

下痢をしている愛犬にとって、適切な水分補給はとても重要です。犬が下痢をすると体内の必要な水分が一緒に失われるため、脱水症状を引き起こしやすくなります。これは体力のない子犬やシニア犬にとって非常に危険です。

脱水を防ぐためには、いつでも新鮮な水を用意しておくことが大切です。ただし、一度に大量の水を飲むと胃腸への負担になることも。小さめの器に少量ずつ入れて、こまめに飲ませてあげるのがコツです。

水を飲みたがらない場合は、氷をなめさせたり、水分の多いウェットフードを少量与えたりするのも一つの方法です。いずれにしても、愛犬が十分な水分を取れているか、しっかり観察してあげましょう。

3. 消化に良い食事を適量与える(給餌量を減らす)

下痢をしているときは、愛犬の胃腸を休ませることが大切です。普段通りの食事を与えてしまうと、消化器系に負担がかかってしまうため、食事の内容と量を工夫する必要があります。

まずは、通常の食事量を半分程度に減らしてみましょう。そして、一度に大量に与えるのではなく、少量ずつ数回に分けて与えるのがポイントです。いつものドライフードであれば、ぬるま湯で十分にふやかして柔らかくしてあげましょう。

また、手作りご飯を与える場合は、脂身を取り除いた鶏のささみを茹でたものや、おかゆといった、ごくシンプルな食材だけにしてください。新しい食材を試したり、味付けをしたりするのは、胃腸の負担となるため厳禁です。

4. 動物病院を受診する

元気で食欲がある成犬の場合は、多少の下痢であれば自宅で様子を見ても大丈夫なケースもあります。しかし、2〜3日経っても便の状態が改善しない、血便や嘔吐、元気喪失といった、下痢以外の症状が見られる場合は、何らかの病気が隠れているサインかもしれません。自己判断で様子を見続けるのは危険です。

また、体力のない子犬やシニア犬の場合は、たとえ元気そうに見えても、下痢が続くこと自体が大きな負担となります。少しでも不安を感じたらかかりつけの動物病院を受診しましょう。

犬の下痢に関する質問(Q&A)

最後に、犬の下痢に関する質問に回答していきます。

Q1:犬が下痢をしているけど元気で食欲もある場合、
様子を見ても大丈夫ですか?

元気と食欲があり、軽度の下痢が1〜2日程度であれば、様子を見ても問題ないことが多いです。ただし、3日以上続く場合や、血便、嘔吐、震えなどの他の症状がある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。実際のうんちを持参したり、写真を撮っておいたりすると、獣医師の診断の助けになります。

また、何か特別なものを食べた、環境が変わったなどの情報も重要なので、思い当たることがあれば伝えましょう。

Q2:犬の下痢の時、食事はどうすればいいですか?

軽度の下痢の場合は、通常の食事量を1/2〜1/3程度に減らし、消化の良いものを少量ずつ与えるとよいでしょう。茹でた白身魚や鶏肉(皮なし)、少量の白米などが適しています。ただし、症状が重い場合は獣医師の指示に従ってください。

Q3:下痢のときの散歩はどうすればいいですか?

軽度の下痢で元気と食欲がある場合は、短時間の散歩なら問題ありません。しかし、激しい運動は胃腸に刺激を与えるため、避けましょう。下痢が落ち着くまで、なるべく安静にし、重度の下痢や血便、嘔吐などの症状がある場合は散歩を完全に控え、獣医師の指示を仰ぐことをおすすめします。

まとめ

下痢は犬によくある症状ですが、その背景には様々な原因が隠れています。

元気で食欲がある場合の下痢は、多くは一時的である可能性が高く、2〜3日で元の便に戻ることがほとんどです。

ただし3日以上下痢が続いたり、血便嘔吐などの他の気になる症状が見られたりする場合は早めに動物病院を受診しましょう。特に、子犬やシニア犬は体調が急変しやすいため、注意が必要です。

便の状態も健康のバロメーターのひとつ。いつもと違う変化に気づいてあげられるのは、愛犬と毎日を過ごしている飼い主さんだけなのです。愛犬の健康を守るためにも、日頃から愛犬の健康チェックと、定期的な健康診断を心がけましょう。