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犬も、人間と同じようにしゃっくりをします。愛犬が「ヒクッ」と体を揺らす姿を見て、「苦しくないのかな？」「何かできることはないかな？」と心配になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。ほとんどの場合は一時的で心配いりませんが、中には病気のサインが隠れていることも。
この記事では、犬のしゃっくりが起こる主な原因と、家でできる優しい止め方を解説します。また、病院へ行くべき「危険なしゃっくり」の見分け方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
犬のしゃっくりが起きるメカニズム
犬は人間ほどしゃっくりを起こしませんが、そのメカニズムは人間と同様です。しゃっくりは、体内で胸部と腹部を分けている横隔膜の痙攣が原因です。
横隔膜がけいれんを起こす理由は医学的に明らかにはなっておりませんが、横隔神経や迷走神経、呼吸中枢が刺激されることが引き金になると考えられています。
犬がしゃっくりを起こすと、声は出なくても、お腹や胸のあたりから上半身が”ヒクっ”と一瞬動くのが確認できるでしょう。
犬がしゃっくりをする4つの原因
ここでは、犬がしゃっくりをする原因を4つ紹介します。
1. 食事のときの早食いや一気飲み
最もよくある原因が、食事の際の早食いです。勢いよくフードをかき込むと、食べ物と一緒に大量の空気を飲み込んでしまい、胃が急激に膨らみます。この胃の膨張が、すぐ近くにある横隔膜を刺激し、しゃっくりを引き起こすのです。お散歩から帰ってきて、お腹を空かせた愛犬が、夢中でフードや水を飲む時などによく見られます。
2. 興奮やストレス
大好きな飼い主さんが帰宅した時や、遊びの時間に大はしゃぎした時など、犬は感情が高ぶるとしゃっくりをすることがあります。これは、興奮によって呼吸が「ハッ、ハッ」と速く、不規則になることで、横隔膜が意図せず痙攣してしまうためです。
時には、雷や来客への驚き、不安といったストレスが引き金になることもあります。
3.子犬の体の未熟さ
子犬は、成犬に比べてしゃっくりを頻繁に繰り返す傾向があります。これは、横隔膜や呼吸をコントロールする神経系がまだ発達途中であるため、少しの刺激にも敏感に反応して、しゃっくりが出やすいのです。
多くの場合、病的な意味はなく、成長とともに自然と落ち着いてくため、過度な心配はいらないでしょう。
4.体の冷えや温度変化
人間と同じように、犬も体が冷えることで筋肉が収縮し、しゃっくりが誘発されることがあります。
特に、体温調節機能が未熟な子犬や、筋肉量の少ない小型犬、体力が落ちたシニア犬などは、冬場の寒い日や、夏の冷房が効いた部屋でしゃっくりをすることがあります。
すぐに病院へ行くべきしゃっくりの特徴
しゃっくりが何らかの病気のサインとして現れている場合もあります。以下のような「いつもと違う」様子が見られたら、様子見をせず、できるだけ早く動物病院を受診してください。
- しゃっくりが半日以上など、長時間ずっと止まらない
- 咳、嘔吐、よだれ、呼吸困難など、他の症状を伴っている
- 呼吸が荒い、苦しそうにしている（ゼーゼー、ヒューヒューなど）
- 元気や食欲がなく、ぐったりしている
- 毎日のように、頻繁にしゃっくりを繰り返すようになった
これらのサインは、単なる横隔膜の痙攣ではなく、呼吸器や消化器、心臓などの病気が原因となっている可能性があります。特に複数の症状が重なっている場合は、注意が必要です。
犬のしゃっくりから考えられる病気
犬のしゃっくりの原因には、病気に起因するものとそうでないものとがあります。
病気が原因となる場合、以下のようなものが考えられます。
症状がしゃっくりのみで、短時間ですぐに止まる場合は問題ありませんが、長時間継続した場合や、咳や嘔吐、よだれなど他の症状も併発している場合には注意が必要です。
呼吸器系の病気
呼吸器の異常が原因になっているものとして、気管支炎、肺炎、喘息、肺腫瘍、胸膜炎といった炎症を伴う胸腔内の病気が考えられます。
この場合、しゃっくり以外にも呼吸の荒さや咳といった症状が見られます。
消化器官の病気
犬が嘔吐したり胃が膨張したりといった変化が起こると、横隔膜が刺激されることがあります。
病気としては、胃炎や胃腫瘍、胃拡張、胃捻転症候群などが挙げられます。
胃拡張や胃捻転の場合には、しゃっくりの他によだれも症状のひとつとしてみられます。これらの病気は命に関わりますので、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
また、誤飲してしまったものが、食道や消化器に詰まってしまい、しゃっくりを引き起こすこともあります。
心臓の病気
心膜炎（心臓を包む膜の炎症）、胸膜炎、心臓肥大などを患っていると、横隔膜を刺激して、しゃっくりが出ることがあります。
どちらの病気も症状がはっきりせず、ふだんは気付きにくい病気ではありますが、しゃっくり以外に呼吸のしづらさや咳、運動を嫌がるなどの症状が見られることもあります。
脳の病気
神経や筋肉は、脳からの指令を受けて動きます。
しゃっくりが長時間続いたり、頻繁に繰り返したりする場合には、脳神経の問題を抱えている可能性も考えられます。
また、しゃっくりと間違えやすい症状として、てんかん発作が挙げられます。この場合、しゃっくりだけでなく、けいれんや、よだれなども見られることがあります。
しゃっくりと勘違いしやすい「逆くしゃみ」とは？
逆くしゃみは、しゃっくりの「ヒクッ」という動きとは異なり、鼻から空気を「フガッ、フガッ！」「ズーズーッ！」と、連続的に、激しく吸い込む発作のような状態です。初めて見ると、息ができずに苦しんでいるように見え、驚いてしまうかもしれません。
しゃっくりが横隔膜の痙攣であるのに対し、逆くしゃみは鼻の奥や喉がホコリやアレルギーなどで刺激されることで起こる、一種の反射運動です。見た目は派手ですが、ほとんどの場合は数秒〜数分で自然に収まり、病的な心配はありません。
発作が起きたら、慌てずに喉を優しくさすってあげたり、鼻先に息をフッと吹きかけてあげたりすると、早く収まることがあります。しゃっくりとの違いを知っておくだけでも、いざという時に冷静に対応できます。
犬のしゃっくりへの対処法
愛犬のしゃっくりがなかなか止まらず、少しつらそうに見える時には、飼い主さんが優しく手伝ってあげることで、早く楽になることがあります。
しゃっくりを止める基本は、呼吸のリズムを整えてあげることです。いくつか方法を紹介します。
お腹や喉を撫でてあげる
しゃっくりで「ヒクッ」となる動きに合わせて、背中や胸のあたりを、上から下へゆっくりと優しく撫でてあげましょう。
飼い主さんの優しいタッチと、一定のリズムのマッサージは、犬をリラックスさせ、乱れた呼吸を落ち着かせる助けになります。焦らず、穏やかな気持ちで行うのがポイントです。
少量の水や、喉ごしの良いおやつを与える
水を少しだけ飲ませてあげるのも、しゃっくりを止めるのに有効な方法です。飲み込むという動作が、横隔膜の痙攣のリズムをリセットするきっかけになります。
ただし、がぶ飲みさせると誤嚥の危険もあるため、スプーンで少量与えるか、飼い主さんの指につけて舐めさせてあげると安全です。ペースト状のおやつなどを少量与えるのも良いでしょう。
意識をそらして、気分転換させてあげる
しゃっくり自体に意識が向いてしまうと、犬も緊張してなかなか止まらないことがあります。そんな時は、おもちゃで軽く誘ったり、「おすわり」などの簡単な指示を出したりして、意識をしゃっくりから逸らしてあげましょう。
他にも「外の空気を吸う？」とベランダや庭に出してみるなど、少し気分転換させてあげるだけで、いつの間にか止まっていることも多いです。
病院で診てもらう
ほとんどの場合、犬のしゃっくりは人と同じく心配なものではありません。
ただし、しゃっくりが数時間止まらない、何日も頻繁に続くなどが繰り返される場合には、単純なしゃっくりではなく、何らかの病気の可能性があります。
短時間ですぐ止まる場合は問題ありませんが、長時間継続したときや、咳やくしゃみ、嘔吐を併発しているなど、複数の気になる症状がある場合や、いつもと違う感じがした場合は早めに動物病院へ行きましょう。
犬のしゃっくりを未然に防ぐ方法
ここでは、犬のしゃっくりを未然に防ぐ方法を紹介します。
食事のあげ方を変える
食事中にしゃっくりをする犬は、早食いが原因かもしれません。
その場合、底に複数の突起がある早食い防止用の食器に替えるなどして、ゆっくり食べられるように工夫しましょう。それでも、しゃっくりが起きる場合、喉にフードが詰まりにくいように、フードをふやかしたり、フードを小粒にするなどして試してみましょう。
食後にしゃっくりが起こりやすい時は、一度の食事量を減らして、食事の回数を増やしてみましょう。
食べ物の温度の調整をするのもお勧めです。熱過ぎ、冷た過ぎは避け、温める場合は人肌程度にとどめましょう。
ストレスの少ない、リラックスできる環境をつくる
不安や興奮がしゃっくりの原因になる子もいます。お留守番が長い、運動が足りていないなど、愛犬がストレスを感じているサインはありませんか？
お散歩に連れていったり、遊びの時間を十分に確保したりして、心と体を満たしてあげることが、何よりのストレス解消法です。時には、頭を使う知育トイなどで、退屈な時間を減らしてあげるのも良いでしょう。
加えて、「ここは絶対に邪魔されない」と感じられる、お気に入りのベッドやクレートといった場所を用意してあげることも、愛犬の心の安定に繋がり、ストレス性のしゃっくりを予防します。
犬のストレスサインや解消法について以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもあわせてご覧ください。
犬のしゃっくりに関するよくある質問
ここでは、犬のしゃっくりに関する質問をまとめました。
人間のように、びっくりさせるとしゃっくりは止まりますか？
絶対におすすめできません。人間の場合、しゃっくりを止めるためだと理解した上で驚かされるので効果があることもありますが、犬はなぜ急に大きな音を立てられたのかを理解できません。
飼い主さんからの予期せぬ行動は、犬を怖がらせ、強いストレスを与えてしまうだけです。かえって呼吸が乱れてしまったり、飼い主さんへの不信感に繋がったりする恐れもあるため、絶対にやめましょう。
しゃっくりと、てんかん発作の違いは？
大きな違いは、「意識がはっきりしているかどうか」です。しゃっくりの最中、犬は意識がはっきりしており、名前を呼べば反応します。動きも「ヒクッ」というリズミカルなものに限られます。
一方、てんかん発作の場合は、呼びかけに反応がなく、目が虚ろになったり、手足を硬直させて倒れたり、失禁してしまったりと、明らかに異常な様子が見られます。
少しでも「これはしゃっくりではないかも」と感じたら、すぐに動画を撮影し、動物病院を受診してください。
しゃっくりは、どのくらい続いたら病院に行くべきですか？
数分から数十分程度で自然に収まるようであれば、基本的には心配いりません。
ただし、しゃっくりが半日〜1日以上ずっと止まらない場合や、毎日のように頻繁に繰り返す場合は、背景に何らかの病気が隠れている可能性があります。
また、時間や頻度に関わらず、咳や嘔吐、元気消失といった他の症状を伴う場合は、様子を見ずに、できるだけ早く動物病院で相談することをおすすめします。
まとめ
愛犬のしゃっくりは、そのほとんどが子犬の時期の生理現象や、早食い、興奮といった、一時的で心配のないものです。慌てず、背中をさすってあげるなど、落ち着いて対応してあげましょう。
ただし、ごく稀にですが、長時間止まらなかったり、咳や嘔吐といった他の症状を伴ったりする場合は、何らかの病気が隠れている可能性もゼロではありません。少しでも不安があれば、ためらわずに動物病院に相談しましょう。
