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犬に味噌を与えても平気?味噌汁の薄め方や適量、注意点を解説

愛犬に味噌を与えてみたいと思った飼い主さんもいるのではないでしょうか。

味噌はごく少量なら犬に与えても問題ありません。味噌は、犬に必要な8種類の必須アミノ酸が含まれているだけでなく、腸内環境を整える乳酸菌や麹菌が摂れる、腸活食材でもあります。

ただし、味噌には塩分が多く含まれるため、与える量や頻度には注意が必要です。この記事では、味噌の栄養素や与え方、調理方法について解説します。

犬に味噌を与えても問題ない

ごく少量の味噌であれば、犬に与えても問題ありません。味噌の原料は、大豆・米・麦などの穀物、麹、塩、水であり、犬の健康によくない材料や成分は特には含まれていないからです。

塩分が気になるところですが、味噌に含まれる塩分(=ナトリウム)は犬にとって必要不可欠な栄養素です。

ナトリウムの摂取量については、体重1kgあたり50mgが成犬の1日分の推奨値と言われています。例えば体重5kgの犬の場合、1日の摂取推奨値は250mgです。

【犬の体重(kg)×ナトリウム推奨値(50mg)
=1日に必要なナトリウム量(mg)】

さらに上記の場合のナトリウム量(250mg)を塩分に換算すると、約0.64gになります。

塩分量とナトリウム量の換算式
【ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)】

これは塩分摂取量の最低ラインになるので、実際にはもう少し多くても大丈夫ということになります。また、腎臓病や心臓病の犬、そのリスクが高いシニア犬にとっては過剰な塩分は負担になりますが、健康な犬であれば多少の過剰塩分は尿から排出することができると言われています。

味噌に含まれる栄養素

味噌は大豆を主原料とする発酵食品のため、さまざまな栄養素を含んでいます。以下で主な栄養素を見ていきましょう。

たんぱく質

味噌に含まれるたんぱく質は、発酵過程で麹菌の酵素によって分解され、アミノ酸の状態になっています。これにより消化吸収がしやすくなり、犬の筋肉や皮膚、被毛の健康維持に役立ちます。

大豆由来のたんぱく質は、犬に必要な9種類の必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのが特徴です。

食物繊維

味噌には水溶性と不溶性の両方の食物繊維が含まれています。水溶性食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える効果が期待できるでしょう。

また、不溶性食物繊維は腸の蠕動運動を促進し、便通を改善する助けとなります。適量の食物繊維は犬の消化器官の健康維持に貢献し、便秘予防にも効果的です。

ビタミンB群

味噌の発酵過程では、麹菌の働きによってビタミンB群が豊富に生成されます。B1、B2、B6、ナイアシンなどが含まれており、これらは犬の代謝機能をサポートし、エネルギー産生や神経機能の維持を助ける働きがあるのです。

また、皮膚や粘膜の健康維持にも関わるため、被毛の艶やかさを保つのにも役立つと考えられます。

ビタミンE

味噌には抗酸化作用を持つビタミンEが含まれています。ビタミンEは体内の脂質を酸化から守り、細胞膜の安定性を保つ働きがあるのです。犬の老化防止や免疫機能の維持に寄与し、活性酸素から体を守ることで様々な病気の予防にも関わります。

大豆サポニン

サポニンは、大豆に含まれる苦みや渋みの成分で、石鹸のように泡立つ性質を持っています。ラテン語で「石鹸」を意味する「sapo(サポ)」が由来です。

味噌に含まれる大豆サポニンは、脂肪の分解を助ける効果があるのが特徴です。また、抗酸化作用や抗炎症作用も持ち合わせており、犬の体内での過剰な炎症反応を抑制してくれます。

イソフラボン

大豆由来のイソフラボンは、植物性エストロゲンとも呼ばれ、エストロゲンと似た構造を持っているのが特徴です。

犬のホルモンバランスの調整に穏やかに作用し、特に高齢犬や避妊・去勢後の犬の健康維持に役立ちます。また、抗酸化作用も持ち合わせており、細胞の酸化を防ぐことで健康維持に貢献します。

レシチン

味噌に含まれるレシチンは、細胞膜の主要成分であるリン脂質の一種です。脳の神経細胞膜の構成にも関わるため、犬の認知機能の発達や維持に重要な役割を果たします。

また、脂質の代謝や消化を助け、コレステロール値の正常化にも貢献します。

犬に味噌を与えることで得られるメリット

ここでは、犬に味噌を与えることで得られるメリットを紹介していきます。

腸内環境の改善

味噌は発酵食品であるため、善玉菌のエサとなる成分が豊富です。これらの成分が犬の腸内フローラのバランスを整え、健康的な消化器環境の維持をサポートします。特に発酵過程で生成される乳酸菌やオリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やし、有害菌の繁殖を抑制する働きがあります。

消化不良や軟便に悩む犬に少量の味噌を与えることで、腸内環境が改善し、より健康的な便質になることが期待できるでしょう。

栄養素の吸収率向上

味噌の発酵過程で、大豆タンパク質がおって麹菌の酵素によって分解され、より消化吸収しやすいアミノ酸になっています。

消化機能が衰えた高齢犬や胃腸が敏感な犬でも、体への負担をかけることなく、効率的にタンパク質を摂取することが可能です。

食欲増進効果

味噌特有の香りと風味は、食欲不振に悩む犬の食事を改善する助けになるかもしれません。犬は人間よりも嗅覚が敏感であり、香りで食べ物の好みを判断する傾向があります。

味噌の芳醇な香りは多くの犬にとって魅力的で、食欲を刺激する効果が期待できます。病気の回復期や高齢で食が細くなった犬、またはドッグフードに飽きてしまった犬に、少量の味噌をフードに混ぜることで、食いつきが改善される可能性があります。

抗酸化作用による健康維持

味噌には様々な抗酸化物質が含まれており、犬の体内で発生する活性酸素から細胞を守る働きがあります。特にイソフラボンやビタミンEは強力な抗酸化作用を持ち、老化の原因となる酸化ストレスから犬の体を守る手助けをします。これらの抗酸化物質は、細胞の損傷を防ぎ、がんなどの病気のリスク低減にも寄与する可能性があります。

また、抗酸化作用には炎症を抑える効果もあるため、関節炎や皮膚トラブルに悩む犬の症状緩和にも役立つことが期待できるでしょう。

犬に味噌を与える際の注意点

犬に味噌を与える際の注意点は、以下のとおりです。

  • 塩分量に注意する
  • 大豆アレルギーに注意する
  • 誤飲誤食に注意する
  • 味噌と一緒に使う食べ物に注意する

それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。

塩分量に注意する

犬に味噌を与える際は塩分量に注意しましょう。塩分は犬の体にも必要なものではありますが、摂り過ぎは健康に悪影響を与えかねません。

味噌の塩分量は一般的に大さじ1杯あたり約2gです。なお、塩分量=ナトリウム量ではありません。塩分をナトリウムに換算する場合は、以下の式を使います。

塩分量とナトリウム量の換算式
【食塩相当量(g)×1000÷2.54=ナトリウム(mg)】

上記の換算式に当てはめると、2g×1000÷2.54≒787となり、味噌2gあたりのナトリウムは約787mgとなります。

例えば、5kgの犬の場合、1日のナトリウム摂取量の推奨値は250mg程度です。大さじ1杯の味噌だと与え過ぎということになります。健康な犬であれば、多少の過剰な塩分は尿として排出できますが、その機能には限界があります。

普段食べているドッグフードにも塩分は含まれているため、味噌を与える場合は、風味付けとして舐める程度のごく少量に留めなくてはなりません。

特に腎臓や心臓に疾患がある犬、シニア犬には大きな負担となるため、与えるべきではありません。なお、「猫まんま」のような味噌汁をそのままご飯にかけるような与え方は、塩分過多になりやすいため、控えるべきでしょう。

大豆アレルギーに注意する

愛犬の健康を考えるなら、大豆アレルギーの可能性も知っておきましょう。味噌の主原料である大豆は、稀にアレルギー反応を示す子もいます。

アレルギーリスクを避けるためにも、初めて味噌を犬に与える際は極少量から始めます。皮膚の赤みやかゆみ、消化器症状(嘔吐や下痢)などのアレルギー症状が現れないか、慎重に観察することが大切です。

もし何らかの異常な反応が見られた場合は、すぐに与えるのを止め、必要に応じて獣医師に相談しましょう。

誤飲誤食に注意する

犬は発酵食品の香りに強く惹かれることがあります。味噌のような発酵食品の独特の香りは犬にとって魅力的なため、飼い主が気づかないうちに大量に食べてしまう危険があります。

そのため、味噌の容器は必ず犬の手の届かない場所に保管し、調理中や食事中に犬が勝手に味噌を摂取することがないよう十分注意しましょう。

味噌と一緒に使う食べ物に注意する

味噌と他の食材を組み合わせる際は、犬にとって危険な食材が含まれていないか注意が必要です。味噌汁やその他の味噌料理には、犬に有害な食材が含まれていることがあります。

例えば、味噌汁に入れる玉ねぎやネギなどのネギ類は犬の赤血球を破壊し、中毒症状を起こしてしまう食材です。犬に味噌を与える場合は、必ず犬が安全に食べられる食材と組み合わせ、人間用の料理をそのまま与えるのではなく、犬用にアレンジしてあげてください。

⚫️犬が食べてはいけない味噌料理の食材
・ネギ類(長ネギ、玉ねぎ、ニラ、ニンニク、らっきょうなど)
・魚介類(イカ、タコ、カニ、エビ、貝類など)
・みりんや酒などのアルコール成分を含む調味料
・味噌の風味付けに使われることのある柚子や柑橘類の皮

味噌を使ったおすすめレシピ

ここでは、味噌を使ったおすすめレシピを紹介します。

薄めた味噌汁

①鍋に水を入れ、鰹節などで出汁を取り、野菜を煮る。
(タマネギやネギ類は避けましょう。)

②野菜が煮えたら、味噌を入れる。
※味噌の目安量は、水400ccあたりティースプーンすりきり1杯程度です。

人間が食べている味噌汁には、一人前あたり大さじ1杯程度の味噌が使われています。そのため、人間用を与える際は5倍~10倍くらいに薄めて塩分の摂取量を減らした方が安心です。

味噌煮込みうどん

上記のように犬用に希釈した濃度で調理した味噌汁に、うどんを入れて煮込む。
(うどんは与える時に喉につかえないように刻んであげましょう。)

なお、うどんは血糖値をあげやすい食材ですので、血糖値が気になる場合は玄米でお粥などにしても良いでしょう。

味噌の筑前煮

<材料>

鶏肉 にんじん れんこん しいたけ
味噌 水(300㏄) かつお節少々
——————————————————————————-
①鶏肉と野菜は細かく切る。

②鍋に水を入れて沸騰するまで加熱する。

③切った鶏肉と野菜を柔らかくなるまで煮込む。

④火が通ったら、味噌を溶かし入れる。
(味噌は香りづけ程度、ごく少量にしましょう。)

⑤食べられる温度に冷ましてから、食器に盛り、鰹節をトッピングする。

シュウ酸とカリウムの制限が必要な疾患がある場合は、野菜はみじん切りにして別茹でにしてから加えましょう。

味噌以外の大豆食品は大丈夫?

味噌と同様に、日本人の食生活に欠かせない大豆加工食品は様々あります。これらの食品も犬に与えても良いのか、それぞれの特性や注意点を見ていきましょう。

豆乳

豆乳は大豆を水に浸して磨り潰し、煮た後に絞って作られる飲料です。味噌と比較して塩分がほとんど含まれておらず、良質な植物性タンパク質やイソフラボンを含むため、少量であれば犬に与えても問題ありません。特に無調整豆乳であれば、余計な添加物や砂糖が含まれていないので安心です。

おから

おからは豆乳を作る過程で出る大豆の搾りかすで、食物繊維が豊富な食材です。低カロリーながらも満腹感を得られるため、肥満気味の犬におすすめです。また、食物繊維は腸内環境を整える働きがあり、便通の改善にも役立ちます。塩分もほとんど含まれていないため、味噌よりも気軽に与えることができるでしょう。

醤油

醤油も味噌と同様に大豆を発酵させて作られる調味料ですが、犬に与えないでください。醤油には味噌以上に塩分が多く含まれており、少量でも塩分過多になりやすいのが特徴です。

中型犬や大型犬が少量舐めてしまった場合は、すぐに命に関わる事態になる可能性は低いですが、小型犬の場合は体重が少ない分、同じ量の醤油でも体への影響が大きくなります。愛犬の健康を考えると、醤油は基本的に与えない方が無難といえるでしょう。

犬と味噌に関するよくある質問

最後に、犬と味噌に関するよくある質問に答えていきます。

犬が味噌を食べても大丈夫ですか?

少量であれば犬に味噌を与えても問題ありません。味噌は発酵食品として様々な栄養素を含んでおり、適切な量であれば犬の健康にも良い影響をもたらす可能性があります。大豆タンパク質をはじめ、ビタミンB群、ミネラル、発酵による善玉菌など、体に有益な成分が豊富です。

ただし、塩分を多く含むため与えすぎには注意が必要です。また、稀に大豆アレルギーを持つ犬もいますので、初めて与える際は少量から始め、犬の様子を観察することをお勧めします。特に持病のある犬や高齢犬には、事前に獣医師に相談するとより安心でしょう。

犬に味噌を与える際の注意点は?

犬に味噌を与える際の最大の注意点は塩分摂取量の管理です。味噌は塩分が多いため、腎臓や心臓に負担をかける可能性があります。特に高齢犬や心臓病・腎臓病などの持病がある犬には慎重に与える必要があるでしょう。

また、味噌単体で与えるのではなく、ドッグフードや茹でた野菜に少量混ぜるなど、塩分を分散させる工夫も大切です。さらに、味噌を使った人間用の料理をそのまま与えるのは避けてください。玉ねぎやネギ類、ニンニクなど犬に有害な食材が含まれていることがあります。

まとめ

味噌は、犬に必要な必須アミノ酸や、腸内環境を整える食物繊維など、多くの栄養を含む健康食材です。その香りが食欲を刺激する効果も期待できるでしょう。

しかし、その一方で、犬の小さな体には塩分濃度が高いというリスクも伴います。もし手作りご飯などに加える場合は、風味付けとして舐める程度のごく少量に留め、主食の栄養バランスを崩さない範囲で、賢く取り入れることが大切です。