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体を温める効果などで知られる生姜。「愛犬の健康にも良いかも?」と興味を持つ一方、「刺激が強くないかな?」「そもそも食べさせて大丈夫?」と不安に思う飼い主様も多いでしょう。
結論から言うと、生姜は犬が食べても大丈夫な食材ですが、安全に与えるためには正しい知識を知っておくことが大切です。
本記事では、犬に生姜を与えるメリットや注意点、簡単に作れるおすすめレシピを紹介します。愛犬の健康を考えた食事に生姜を取り入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
犬に生姜を与えても大丈夫!ただし量に注意が必要
生姜は犬に与えても大丈夫な食材です。
生姜はショウガ科の植物。よく混同されがちなネギ科(玉ねぎ、ニンニクなど)の植物には、犬の赤血球を破壊する有毒成分「硫化アリル」が含まれていますが、ショウガ科である生姜にはこの成分は含まれていません。
そのため、犬に中毒症状を引き起こす心配はありません。適量であれば、生姜は犬の健康に良い影響を与える栄養成分を豊富に含んでいます。
ただし、安全に与えるためには、量や与え方、愛犬の健康状態に配慮することが大切です。また、生姜特有の風味が犬には合わない場合もあるので、嫌がる場合には無理に与えないようにしましょう。
犬に与えてもいい生姜の量の目安
生姜を過剰摂取すると、胃腸の負担などにつながる可能性があります。与える際は、生の生姜をすりおろした状態で、以下の量を目安にしてください。
| 犬の体重 | 1日あたりの最大目安量 |
| ~5kg(超小型犬・小型犬) | 小さじ1/4杯 まで |
| ~10kg(小型犬) | 小さじ1/2杯 まで |
| ~15kg(中型犬) | 小さじ1杯 まで |
| 25kg~(大型犬) | 小さじ1.5杯 まで |
これはあくまで健康な犬の目安です。初めて与える際は、この量のさらに半分以下から始め、便の状態や体調に変化がないか注意深く観察してください。
生姜に含まれる主な栄養素
■生姜の根茎可食部100g当たりの栄養素■
・タンパク質 0.9g
・脂質 0.3g
・カリウム 270mg
・カルシウム 12mg
・マグネシウム 27mg
・リン 25mg
・鉄 0.5mg
・亜鉛 0.1mg
・銅 0.06mg
・水分91.4g
・β‐カロテン 5㎍
・ビタミンB1 0.03mg
・ビタミンB2 0.02mg
・ビタミンC 2mg
・総食物繊維 2.1g(水溶性0.2g、不溶性1.9g)
(文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)増補』)
生姜の辛味成分は「ジンゲロール」と「ショウガオール」です。生の生姜に多く含まれる「ジンゲロール」は殺菌作用を持っており、消臭や食中毒予防として活用されています。
生姜を加熱・乾燥させると増える「ショウガオール」は、内部からポカポカと温めることができる成分で、巡りを改善や活性力の向上が期待できます。
また、生姜の香り成分には「シネオール」、「シトロネラール」、「ジンギベロール」、「ジンギベレン」などの精油成分と、抗菌性があると言われている「ジンゲロン」が含まれています。
これら生姜の辛味と香り成分は、防腐、強壮、利尿の作用があり、熱を冷まし、食欲を促し、消化を高め、風邪、咳、リウマチの痛みにも効くと考えられており、漢方では健胃、嘔吐、咳、むかつきなどの症状に用いられます。
このように生姜は健康的な身体を作るのに役立つ食材と言えるでしょう。
愛犬に生姜を与えるメリット・効果
愛犬に生姜を与えるメリット・効果は、以下の通りです。
- 体を温め、巡りをサポート
- 消化を助け、食欲をサポート
- 免疫ケアと老化予防になる
それぞれのメリット・効果を詳しく解説します。
体を温め、巡りをサポート
辛み成分の生姜に含まれる辛味成分「ショウガオール」には、血管を広げ血行を促進し、体を内側から温める働きがあります。
血行が良くなると、発汗が促されて体内の老廃物排出を助ける(デトックス)だけでなく、筋肉への酸素や栄養の供給もスムーズになります。これにより、冷えの改善や代謝アップ、さらには運動後の疲労回復を早める効果まで期待できるのです。
消化を助け、食欲をサポート
生姜には消化酵素の分泌を促進する作用があり、愛犬の胃腸の働きを活性化させる効果が期待できます。
辛味成分が唾液や胃液の分泌を促すため、食べ物の消化吸収がスムーズになります。食欲が落ちている時や食べムラがある愛犬にとって、少量の生姜は食欲を増進させる刺激剤になるでしょう。また、胃の運動を促進し、胃もたれや吐き気の緩和にも役立ちます。
免疫ケアと老化予防になる
生姜は、体の防御システムにも働きかけます。辛み成分「ジンゲロール」は、免疫細胞を活性化させてウイルスなどに負けない体づくりを助けるだけでなく、過剰な免疫反応によるアレルギーや炎症を整える効果も期待されます。
さらに、老化の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用もあり、細胞レベルでの健康維持、つまり老化予防(アンチエイジング)をサポートします。
愛犬に生姜を与える際の注意点
愛犬に生姜を与える際の注意点は以下の通りです。
- 少量から試して、アレルギーがないか確認する
- 生のままで与えず、加熱して細かく刻む
- チューブやパウダーは原材料を確認して選ぶ
- 紅生姜やガリなど人間用の加工品は与えない
- 子犬や老犬、持病のある犬は特に注意する
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
少量から試して、アレルギーがないか確認する
生姜にもわずかですがタンパク質が含まれており、アレルギーで体調不良を引き起こす場合もあります。生姜によるアレルギーは食後数時間〜数日後に現れる上に、症状が分かりづらく気づかないことが多いです。愛犬に初めて生姜を与えるときは、少ない量からあげるようにしましょう。
もしも愛犬に生姜を与えた後に、皮膚のかゆみ、発赤、嘔吐、下痢などの異常が見られたら、生姜アレルギーの可能性を考え、すぐに与えるのを中止しましょう。症状が続く場合や重い場合は、すぐに獣医師に相談してください。
生のままで与えず、加熱して細かく刻む
生の生姜に含まれる辛味成分は、犬の胃腸にとって刺激が強すぎることがあります。そのため、加熱調理して辛味を和らげてあげましょう。加熱することで体を温める成分「ショウガオール」が増えるというメリットもあります。
また、消化しやすいように、すりおろすか、みじん切りにして細かく刻んでください。塊のまま与えると、消化不良や喉に詰まらせる原因になるため危険です。
チューブやパウダーは原材料を確認して選ぶ
手軽なチューブタイプの生姜は、食塩や酸味料、保存料といった犬に不要な添加物が含まれていることが多いため、使用は避けましょう。
生姜パウダーは栄養が凝縮されているため、与える場合はごく少量(耳かき1杯程度)に留めてください。パウダーを選ぶ際は、必ず原材料表示を確認し、余計なものが入っていない「生姜100%」のものを選ぶ必要があります。
紅生姜やガリなど人間用の加工品は与えない
牛丼などに添えられる紅生姜や、お寿司といっしょに出てくるガリ(甘酢生姜)は犬に与えないでください。
これらの加工品には、犬の腎臓や心臓に大きな負担をかける大量の塩分や糖分、そしてアレルギーの原因となりうる人工着色料や保存料が使われています。犬にとっては有害な成分の塊なので、誤って口にしないよう厳重に管理しましょう。
子犬や老犬、持病のある犬は特に注意する
消化器官が未熟な子犬(生後6ヶ月未満)や、消化機能が衰え始めるシニア犬に与える際は、特に少量から慎重に始めてください。また、心臓病、腎臓病、消化器系の疾患など、持病のある犬の場合は、生姜の成分が病状に影響を及ぼす可能性があります。
健康に良いからといって自己判断で与えることはせず、必ず先にかかりつけの獣医師に相談し、許可を得てからにしましょう。
愛犬に生姜を与える際のおすすめレシピ
続いて、愛犬に生姜を与える際のおすすめレシピとして、以下の3つをご紹介します。
- 生姜スープ
- 生姜焼き
- すりおろしてフードに混ぜる
それぞれのレシピをご紹介していきます。
生姜スープ
食前に低糖質の野菜を入れた生姜スープを摂ると、血糖値が上がりにくくなり、脂肪をため込みにくくなるメリットがあります。スープにすることで、生姜を取り入れやすくなる上、寒い季節には体の芯から温まるのでおすすめです。
<材料>
・茹で野菜(サツマイモ、キノコ類、人参、小松菜、ブロッコリー)・・・約10g
・鶏ささみ ・・・約10g
・生姜のすりおろし ・・・適量
・水
※分量は、愛犬の体重により適宜調整してください。
<作り方>
1)野菜はみじん切りにして、予め3分以上茹で、茹で汁は捨てる
2)1)と食べやすい大きさに切った鶏ささみ、水を鍋にかける
3)すりおろした生姜を加える
4)鶏ささみに火が通ったら、完成
※野菜のゆで汁には、結石の原因の可能性のあるシュウ酸などのミネラルが溶け出しているため、できれば茹で汁は捨てたほうがよいでしょう。
豚の生姜焼き
生姜を使った料理といえば、「豚肉の生姜焼き」を思い浮かべる人も多いはず。
豚肉に含まれるビタミンB1と、生姜に含まれるジンゲロンとショウガオールは、体の疲れを回復し、元気な体へと導きます。
なお、人間が作る生姜焼きには玉ねぎやニンニクなど犬に有害な食材が使われていることが多いので、愛犬に与える場合は必ずこれらの食材を除いた専用のレシピで調理する必要があります。
また、調味料も塩分が高いものが多いため、市販の生姜焼きのたれは使わず、犬用に塩分控えめで作るようにしましょう。
<材料>
・豚肉 ・・・適量
・生姜のすりおろし ・・・適量
<作り方>
1)豚肉は愛犬の食べやすい大きさに小さく切ります
2)すりおろした生姜に豚肉を加え、生姜の味が染み込むようにもみ込みます
3)2)をフライパンで炒めます(焦がさないように注意)
※テフロン加工のフライパンを使うと余分な油を引く必要がないため、脂質を抑えられます。油を使う場合には、菜種油、紅花油などの不飽和脂肪酸のものを使うとよいでしょう。
※腎臓や肝臓などに疾患があり、タンパク質制限が必要な場合には、「生姜スープ」で使用した「茹でた野菜」を豚肉と同量、混ぜて与えるとタンパク質比率を制限することができます。愛犬の健康状態に合わせてアレンジしてみてください。
すりおろしてフードに混ぜる
すりおろした生姜をフードに混ぜるのもおすすめです。すりおろした生姜をフードに混ぜる場合は、辛みを感じない程度の少量を与えるようにしましょう。すりおろすことで生姜の栄養成分が効率よく吸収され、消化にも負担がかかりません。
生姜は安全だけど、ネギ科の食べ物は危険
生姜は犬に安全な食材ですが、ネギ科の植物は犬にとって有毒であることをしっかり理解しておく必要があります。生姜はショウガ科に属する植物で、見た目や香りの特徴からネギと混同されることがありますが、全く異なる植物です。
ネギ科の植物には「有機チオ硫酸化合物」という犬に有害な成分が含まれています。この成分が犬の赤血球を破壊し、溶血性貧血や血尿を引き起こす可能性があります。重症の場合、急性腎不全に至ることもあるため、以下のネギ科植物は絶対に与えないようにしましょう。
【犬に与えてはいけないネギ科の食べ物】
・玉ねぎ
・長ネギ
・ニンニク
・ニラ
・らっきょう
・リーキ(西洋ネギ)
・エシャロット
これらの食材を含む調理済み食品も犬には与えないように注意が必要です。ハンバーグやカレー、シチューなど、人間の食事には多くの場合ネギ科の野菜が使われていることを覚えておきましょう。
犬と生姜に関するよくある質問
ここでは、犬と豆腐に関するよくある質問に回答していきます。
Q1:犬が生姜焼きを食べてしまったのですが、大丈夫でしょうか?
生姜そのものは犬にとって有毒ではないため、少量であれば過度な心配は不要です。しかし、人間用の生姜焼きで本当に注意すべきは、味付けに使われる玉ねぎやニンニク、そして大量の塩分(醤油)や脂質です。玉ねぎやニンニクは犬に深刻な中毒を、濃い味付けや多量の脂質は嘔吐や下痢、急性膵炎を引き起こす危険があります。
まずは落ち着いて、玉ねぎなどが入っていなかったか、どれくらいの量を食べたかを確認し、わんちゃんの様子を注意深く観察してください。
特に玉ねぎが含まれていた場合や、食べた量が多い、または嘔吐やぐったりするなどの症状が見られる場合は、すぐに動物病院へ連絡し、指示を仰ぐようにしてください。
Q2:犬が紅生姜・ガリを食べても大丈夫?
紅生姜やガリは犬には与えない方が良いでしょう。これらの加工品には、生姜そのものは犬にとって有害ではありませんが、調味料や添加物が含まれています。紅生姜には食塩や着色料、保存料などが使用されており、ガリには砂糖や酢、食塩などが含まれています。
塩分を過剰に摂取すると、犬の腎臓に負担をかけ、高血圧や脱水症状を引き起こす可能性があります。また、人工的な着色料や保存料は、犬の消化器系に悪影響を及ぼすことがあります。
Q3:犬に生姜を与えるメリットは?
生姜を犬に与えることで、以下のような健康上のメリットが期待できます。
- 免疫力向上
- 血行促進・体温調整
- 消化促進・食欲増進
- 抗炎症・鎮痛作用
- デトックス効果
- 抗酸化作用
ただし、メリットがあるからといって与えすぎると、胃腸への負担や消化不良を引き起こす可能性があります。犬の体格や健康状態に合わせた適量を守りましょう。
Q4:生姜は生のまま与えるべきですか、加熱したほうがいいですか?
生姜は生でも加熱しても犬に与えることができますが、それぞれメリットが異なります。生の生姜にはジンゲロールという辛味成分が豊富で、強い抗菌作用や免疫力向上効果が期待できます。
ただし辛味が強いため、犬によっては刺激が強すぎる可能性があります。一方、加熱した生姜はショウガオールという成分に変化し、血行促進効果や体を温める作用が高まります。
また、辛味が和らぐため食べやすくなるメリットもあります。初めて生姜を与える場合や胃腸が敏感な犬、老犬には加熱した生姜から始めるのが無難でしょう。どちらの場合も、必ずすりおろすか細かく刻んで与えてください。
Q5:生姜アレルギーの症状はどのようなものですか?
生姜アレルギーは比較的まれですが、犬によってはアレルギー反応を示す場合があります。生姜を与えた後に以下のような症状が現れたら、アレルギーの可能性を疑いましょう。
- 湿疹
- 腫れ
- 嘔吐
- 下痢
- 元気がない
生姜を初めて与えた後にこれらの症状が現れた場合は、すぐに与えるのを中止してください。症状が重い場合や長引く場合は、速やかに獣医師に相談することが大切です。アレルギーの有無を確認するためにも、最初は極少量から始めて様子を見るようにしましょう。
まとめ
本記事では、犬に生姜を与える際の注意点やメリット、適切な与え方を解説しました。生姜には免疫力を高める「ジンゲロール」、血行促進に役立つ「ショウガオール」などの成分が含まれ、犬の健康維持に役立つ食材です。
ただし、生姜は刺激が強いことから少量に留め、必ず加熱して与える必要があります。
また、アレルギーや体調の変化がないか観察しながら与えることが重要です。本記事を参考に、生姜を健康的に活用して愛犬の健康管理に役立ててください。


