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基本的に「総合栄養食」の基準を満たしているドッグフードを与えている場合、犬にとって必要な栄養素が不足することはありません。ただし、ドッグフードだけでは食べない、犬が好むものを与えたい、などでフード以外のものを与える飼い主さんも多いと思います。
ただし、人間とともに暮らしているからといって、犬も人間とまったく同じものを食べてよいわけではありません。中には犬の身体に悪影響のある食べ物もあります。ここではそういった「食べてはいけない」「食べる時に注意が必要」な食べ物をご紹介します。
犬が食べてはいけない・与えてはいけない肉

肉のみ、魚のみ(単独)で与えない
基本的にスーパーで売られている生肉全般は使用できます。お肉自体は、タンパク質が多く、栄養補給には良いのですが、お肉やお魚=タンパク質の塊であり、単独で与えるとデメリットになる場合があることを認識することが大切です。
<タンパク質のメリット>
筋肉や細胞を生成、再生する
<タンパク質のデメリット>
お肉やお魚、その他タンパク質は、分解する際に、腎臓や肝臓に負担がかかり(特に老犬)、良かれと思って与えたタンパク質がきっかけで腎臓、肝臓数値が上昇することがある
肉や魚の与え方
肉や魚は全般に高タンパク質な食材となります。そのため、消化・吸収・排泄の際に腎臓や肝臓の負担となることがあります。若く健康な愛犬の場合には問題ありませんが、シニア犬や腎臓や肝臓等、内臓疾患がある場合には単独使用を避け、茹でた野菜と1:1で混ぜて与えることをお勧めします。茹でた野菜の食物繊維がタンパク質比率を低くさせ、内臓への負担を軽減することができます。
ジビエ肉について
山で捕獲される猪や鹿などのジビエ肉。近年は犬猫の食用に加工され販売されることも多くなっています。野生で育っているジビエ肉は、抗生剤や添加物の心配がなく、低アレルゲンフードとしても有名です。ただし、野生であるがゆえに細菌やウイルスを保有している場合もあり、リスクを回避するためにも、ジビエは必ず火を通して与えましょう。
茹で野菜の効用と与え方
人間もお肉だけを食べていると、便通が悪くなるように、人間ほどではなくても、ある程度の食物繊維は必要です。では、野菜をどのように選び、どのくらいの量をあげたら良いでしょうか?
茹でたミックス野菜と生肉との割合は1:1
ゆでた野菜で食物繊維を作るレシピは以下の通りです。
◆サキニコブ(血糖値を上げにくい野菜が理想的)
さつまいも・きのこ・人参・小松菜・ブロッコリー
いずれも必ず細かくみじん切りし、3分以上茹でて、ゆで汁は捨てましょう。
◆野菜は焼く、蒸す、レンジはNG(不十分)
野菜にはシュウ酸という成分が含んでいますが、これは結石(シュウ酸カルシウム結石)の原因なる可能性があります。その他、過剰なミネラル成分も含まれているため、与えるよりも、与えない方が無難です。
3分以上茹でることで、茹で汁にシュウ酸が溶け出ているため、茹で汁は捨てる事が大切です。特にシニア期や腎臓や肝臓、結石等、内臓疾患のある犬猫ちゃんには、この様な工夫をしてあげると無難でしょう。
鳥の骨
【生の場合】
大きい骨をよく噛まずに丸飲みしてしまうと、特に小型犬では食道閉塞を起こしてしまうことがあります。また、生の鳥の骨を食べることで、サルモネラ菌感染症(食中毒)を引き起こすこともあります。
【加熱した場合】
加熱処理した骨は砕けやすいため、特に小型犬では骨の欠片が腸閉塞を起こすことがあります。また、骨が縦に裂けると先端が尖り、胃や腸などが傷ついたり穴が開いたりすることもあります。
固いものをかじることで歯磨き効果が期待できる、ストレス発散になるといったメリットもありますが、犬によっては歯が欠けたり折れたりすることもあります。骨類を与える場合には、必ず飼い主さんの見守りのもとに与え、事故にならないように気を付けましょう。基本的には、栄養バランスの整った適切なフードを与えていれば、余分に骨を与える必要はありません。
レバー
牛や豚、鶏などのレバーは、一般的なスーパーでも簡単に手に入ります。健康な犬には、それらのどれを与えても特に問題はありません。レバーは、皮膚や粘膜を健やかに保つビタミンAを多く含み、ドッグフードの原材料にレバーが含まれているものもあります。
ただし、生レバーには様々な病原体や寄生虫により、健康を害するリスクがあります。とくに子犬や免疫力の低下している犬が生のレバーを食べることで、これらに感染することもあります。従ってレバーは必ず、確実に加熱をしてください。
また、レバーは高タンパク、高リンや高ナトリウムであることから、腎臓・肝臓・心臓の負担になりますので、シニア犬や内臓疾患がある場合は、レバー単独での使用は注意が必要です。以上のことから、レバーは与える際の対策としては、レバーを茹でたものを、茹で野菜と一緒に与えることがおすすめです。レバーのタンパク質比率を低くする(薄める)という意味では、茹でた野菜の食物繊維のトッピングが有効に働きます。
犬が食べてはいけない魚介

カニ
生のカニに含まれているチアミナーゼ(アノイリナーゼ)という成分は、ビタミンB1を分解してしまいます。過剰摂取によってビタミンB1が不足してしまうと、むくみや嘔吐、体重低下や、酷くなると後ろ足のふらつきなど神経症状を起こすこともあります。
また、カニの甲羅や足、はさみなどは非常に硬く、犬の胃では消化できません。無理に食べることで消化不良を起こして嘔吐したり、食道や胃に詰まる、傷つけるリスクがあります。
人間と同じように犬によっては甲殻類にアレルギーを持つ場合もあります。この場合、皮膚炎や食欲不振、目の充血や下痢嘔吐などの症状が出ることがあります。以上のことから、カニを犬に与えることは基本的にお勧めできません。
加熱処理をしたカニでも、殻やはさみなどは取り除き、過剰に与えることは避けましょう。
栄養バランスの整った適切なフードを与えていれば、犬に必要な栄養素の視点から見てもカニを与える必要はありません。
エビ
生のエビにはカニと同じように、チアミナーゼ(アノイリナーゼ)という成分が含まれており、ビタミンB1を分解してしまいます。過剰摂取によってビタミンB1欠乏症になることがありますし、酷い場合は神経症状を引き起こすことがあります。
また、カニと同様、甲殻アレルギーのある犬が食べてしまうと、アレルギー症状を引き起こす場合があります。チアミナーゼ(アノイリナーゼ)は熱に弱く、加熱すると活性が失われますが、アレルギーリスクの可能性は残ります。
そもそも甲殻類は犬にとって消化の悪い食べものです。消化不良は嘔吐や下痢の原因となりますので、エビを与える際には殻としっぽは必ず取り除き、過剰に与えることは避けましょう。栄養バランスの整った適切なフードを与えていれば、犬に必要な栄養素の視点から見てもエビを与える必要はありません。
イカ
生のイカにもチアミナーゼ(アノイリナーゼ)が含まれており、ビタミンB1を分解する働きがあるため、ビタミンB1欠乏症を引き起こす恐れがあります。
また、生のイカにはアニサキスという寄生虫が存在する場合があります。誤ってアニサキスを生きたまま摂取すると中毒症状を引き起こし、胃に食い込んで激しい腹痛を引き起こす事があるので注意が必要です。
イカは充分に加熱すれば、犬に与えることができますが、イカ自体が硬い食べ物なので消化が悪く胃腸に負担をかけるほか、大きなまま犬に与えると、消化される前に胃腸に詰まって腸閉塞を引き起こすおそれもあります。
犬にとってリスクのある食材となりますので、あえてイカを与える必要はありません。
与える際には、充分に火を通して細かく刻んでものをごく少量に留めましょう。
【スルメやあたりめ】
スルメやあたりめは、イカを乾燥、加工した分、タンパク質や塩分の多い食べ物です。高タンパク、高塩分になることで、消化・吸収・排泄の際に肝臓や腎臓などの負担となるので、犬に与えるのは控えたほうが良い食品です。
また、スルメやあたりめは生のイカ以上に硬く、とても消化が悪いものです。もしも、これらを愛犬に与える場合は、軟らかくする、塩分を抜くという事を目的にしっかり煮て、胃腸で詰まらないように小さく刻み、タンパク質や塩分濃度を薄めるため、茹でた野菜と一緒に与える工夫をしましょう。
ただしイカやスルメ、あたりめは、あえて犬に与える必要はありません。
犬が食べてはいけない野菜

玉ねぎ
玉ねぎには「有機チオ硫酸化合物」という成分が含まれています。
有機チオ硫酸化合物は犬の赤血球に存在するヘモグロビンを酸化させる作用があり、赤血球が酸化すると、赤血球内に「ハインツ小体」と呼ばれる変性物質を作ります。ハインツ小体を持つ変性した赤血球は非常にもろい状態となっており、脾臓(ひぞう)や血管内で容易に壊されてしまいます。
有機チオ硫酸化合物は、加熱や乾燥などの加工を加えたとしても毒性がなくなりません。そのため、加工した玉ねぎであっても犬に中毒を引き起こす危険性があります。味噌汁やシチューなど、玉ねぎのエキスが溶けだしているものも与えてはいけません。
ネギ
ネギは、玉ねぎと同様、「有機チオ硫酸化合物」という成分が含まれており、溶血性貧血などの中毒症状が引き起こされ危険です。ネギの品種などによっても変わってくるため、毒性の濃度が強いものになってくると少量でも中毒を引き起こす可能性もあります。
調理パンなどに玉ネギ類が含まれているケースもありますので、愛犬が口にする物にネギ属の野菜が含まれていないかよく気を付けましょう。
ニンニク
にんにくはヒガンバナ科ネギ属に分類される植物です。
玉ねぎを始めとしたネギ類と同じように、にんにくにも「有機チオ硫酸化合物」が含まれていますので、溶血性貧血を引き起こす可能性があり、犬にとって食べさせてはいけない食材です。ニラなどのネギ属の野菜も、全般的に与えないように注意しましょう。
犬が食べてはいけない果物・飲み物

グレープフルーツ
グレープフルーツは基本的に犬にとって、即時に悪害を及ぼすものではありませんが、犬の体質や与えた量、外皮など部位によって、アレルギーや中毒を起こす可能性があります。外皮に含まれる「ソラレン」は柑橘系の果物に含まれているもので、犬が過剰摂取すると「ソラレン中毒」を引き起こすと言われています。症状としては下痢と嘔吐です。また「フラノクマリン」という成分はグレープフルーツの実に含まれ、特定の薬の作用に影響を及ぼす可能性があります。薬の分解を遅らせる作用があるため、特定の薬の効き目を強めてしまうと考えられています。特に濃縮されたジュースは「フラノクマリン」が多く、糖分も加えてある場合が多いので、与えない方が良いでしょう。
アレルギーや中毒の症状はさまざまですが、体の痒みや元気消失、消化器症状などが一般的です。ですが、犬がグレープフルーツの実により中毒症状を起こすのは、体重1kg あたり1個以上を摂取した場合であり、過度に危険視する必要はないかもしれませんが、栄養素から見てもグレープフルーツを積極的に摂る必要はありません。
牛乳
人乳に乳糖が約60%含まれているのに対し、犬乳にはその半分くらいしか含まれておらず、犬はもともと乳糖を分解する酵素であるラクターゼを多く持ち合わせていません。そのため、犬が乳糖の多い牛乳を飲むと、消化しきれない乳糖が消化管の中に残ってしまい、その乳糖が体から水分を引き寄せて、下痢を引き起こします。(乳糖不耐性)
また、小腸から大腸に移動した乳糖を、腸内細菌が利用してガスを産生するため、ゴロゴロ、キュルキュルとお腹が鳴ることがあります。
中には牛乳を与えても問題が出ない犬もいますが、上記のことを考えると、牛乳よりも分子が小さいヤギミルクのほうが向いているといえます。
コーヒー
犬がコーヒーを摂取してしまうと、コーヒーに含まれる「カフェイン」が中枢神経に作用して興奮状態を引き起こしたり、心筋に作用して心臓に影響を与えたりすることがあります。
また、カフェインには、その代謝物としてテオブロミンという成分も含まれ、これには中枢神経興奮作用があり、痙攣(けいれん)やてんかん様発作を誘発する場合があります。
犬は人間より体が小さいですし、体内でカフェインなどの物質を代謝する能力が低いため、わずかな量でもカフェイン中毒になる恐れがあります。液体状のコーヒーはもちろんのこと、コーヒー牛乳やコーヒーパウダー、カフェインを含むドリンクやお菓子類も犬に与えてはいけません。
お茶
お茶には種類によってカフェイン入りのものがあり、このカフェインに対して犬は感受性が高いので、中毒を引き起こしやすいのです。そのため、安易にお茶を愛犬に与えてない方がよろしいでしょう。犬がカフェインを過剰に摂取すると速やかに吸収され、中枢神経に作用して、興奮、心拍数の増加、下痢、吐気などを引き起こすことがあります。 緑茶やその仲間である紅茶、ほうじ茶、ウーロン茶、玄米茶にもカフェインが入っています。また、抹茶の粉末には多くのカフェインが含まれているので、抹茶を使用したアイスやお菓子も与えない方が良いでしょう。
犬が食べてはいけないその他の食べ物
チョコレート
チョコレートはその原材料であるカカオに含まれる、「カフェイン」や「テオブロミン」という成分を犬が摂取することで、中毒症状を起こします。
テオブロミンは、血管拡張や体温の上昇、リラックスや利尿の作用があると言われており、人間は体内で素早く処理できるため、問題ありませんが、犬の体はテオブロミンを分解、排出する能力が低いため、体内に長くとどまり中毒症状を引き起こす可能性が高いのです。
テオブロミンの中毒症状としては、嘔吐や下痢、失禁から、重篤なものになると、ふらつきや震え、不整脈、痙攣などの神経や心臓への症状が出るほか、最悪の場合は死に至ることもあります。
テオブロミンはカカオ豆に含まれているので、カカオニブ、カカオマスにも含まれています。原材料にこれらの表示がある食べ物は与えないようにしましょう。
チーズ
人間用に作られたチーズは、犬にとっては過剰な塩分が含まれています。また、脂質が25~30%もあり、食べすぎると脂質過多になり、肥満や下痢、膵炎や高脂血症を引き起こす可能性が高くなりますし、カロリー過多になりがちです。カロリー過多を続けていると体重が増加し、肥満になるおそれがあります。肥満になると糖尿病を発症するリスクや関節や心臓に負担がかかり、関節疾患や循環器疾患を患う可能性が高まります。そのためあえてチーズを与える必要はありませんが、例えば大好物であり、食いつきUPの目的であれば、犬用に作られたものを選ぶと良いでしょう。犬用チーズであれば、塩分が控えめでありながらもチーズの栄養素をしっかりと摂取することが可能です。
ナッツ
犬にナッツ類を与えるのはとても危険な事です。ナッツ類にはマカダミアナッツやアーモンド、くるみ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツなどさまざまな種類があります。
ナッツは全般的に不溶性食物繊維と脂質がとても多いことから、犬が多量に摂取すると消化不良や肥満になる恐れがあります。また、水分で膨張しやすいナッツは多量摂取すると犬の腸内に溜まりやすく、腸閉塞を起こす危険もあります。
特にマカダミアナッツは犬に中毒症状を引き起こすことが知られており、嘔吐や腹痛、下痢といった消化器症状から、麻痺などの神経症状や発熱が報告されています。
死亡に至った例はまだ無いですが、犬の個体差によっては命の危険が伴う症状が出る場合もあるので、すすんで与えるべき食材ではありません。
ピーナッツは「ナッツ」とありますが、厳密には豆科の植物であり、ナッツ類ではありません。ただし、ピーナッツも消化しにくく、脂肪分が多いため、多量に摂取すると肥満や病気の原因になりかねません。ピーナッツバターなどの加工品には、砂糖が加えられていることも多いので、さらに注意が必要です。
豆類
豆類の過剰摂取は、鼓腸症の原因になる可能性があります。鼓腸症とは、胃、小腸、大腸に余分なガスがたまった状態です。落ち着きがなくなる、腹部の異様な膨らみ、ゲップ、嘔吐、ゴロゴロとお腹が鳴る、オナラ、下痢などです。
症状が軽ければ、そのまま自然とよくなることもありますが、症状が重くなると針でお腹を刺して中の空気を出さなくてはいけません。さらに、鼓腸症から胃が回転してしまう病気(胃捻転)になってしまうことがあります。納豆など植物性タンパク質はとても良いイメージがありますが、豆類単独では与えずに、茹でた野菜等を一緒にあげると良いでしょう。
まとめ
基本的に「総合栄養食」の基準を満たしているドッグフードを与えている場合、犬にとって必要な栄養素が不足することはありません。
ただし、ドッグフード以外にトッピングをする場合や、おやつとしてあげる場合は、人間にとって無害なものでも、犬にとっては有害なものもあるので注意が必要です。
またそもそも、犬に与えても良い食べ物、悪い食べ物かは、「食べもの単独」「他のものとあげると良いもの」など、条件によって、答えが全く異なります。1つの情報を鵜呑みにせずに、様々な情報を合わせて判断することが大切です。