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犬はオオカミを先祖に持つ肉食動物なので、生肉を食べても問題ありません。生肉には、消化吸収しやすいなどのメリットが多くありますが、場合によっては注意も必要です。
ここでは犬に生肉を与えることのメリットや、安全面、衛生面など、気を付けるべきことについて解説していきます。
犬は生肉を食べても問題ない
犬が生肉を食べることは問題ありません。そもそも犬の先祖であるオオカミは狩りをして獲物を捕らえ、生の状態で食べていました。そのため、犬も同様に生肉を消化する能力があります。生肉は「最も自然な食べ物」とも言えますので、犬に生肉を与えることは悪い選択ではないでしょう。
ただし、食中毒のリスクを考えると、特に豚肉や鶏肉など一部の肉類は十分に加熱してから与えましょう。消化に不安がある場合や食中毒が心配な場合は、軽く火を通してから与えるのが無難です。
犬に生肉を与えるメリット
犬に生肉を与えるメリットは以下の通りです。
- 生肉ならではの栄養を取れる
- 骨や筋肉が丈夫になる
- 不足しがちな水分を摂取できる
- 歯磨きの代わりになる
- 食事の食いつきが良くなる
- ダイエット効果がある
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
1. 生肉ならではの栄養を取れる
生肉は、良質なタンパク質だけでなく、ビタミンB群やミネラル、酵素なども豊富に含まれる食品です。しかし、これらの栄養素や酵素の中には熱に弱いものが多く、加熱調理すると減少したり、活性が失われたりしてしまうものがあります。特に酵素は熱に非常に敏感で、調理によってほとんど失活してしまいます。これらをある程度完全な形で摂取するには、生肉を食べるのが最適です。
2. 骨や筋肉が丈夫になる
生肉には、骨や筋肉の新陳代謝をサポートするビタミンB群や食物酵素が多く含まれています。たとえば、ビタミンB12は赤血球の生成を助け、筋肉の発達に寄与します。また、食物酵素は骨の健康を維持するためにも必要な栄養素です。
生肉を与えることで、犬の骨や筋肉を強く健康に保つことができます。
3. 不足しがちな水分を摂取できる
多くの飼い犬が主食にしているドライフードは水分が少なく、水分不足に陥りがちです。
生肉は加熱した肉よりも水分を多く含むため、犬が生肉を食べることで自然に水分を摂取できます。これにより、犬が十分な水分を補給できるのです。特に水をあまり飲まない犬や、暑い季節には、生肉からの水分摂取が脱水予防につながります。
4. 歯磨きの代わりになる
生肉を噛むという行為は、犬にとって自然な歯のクリーニング方法になります。筋繊維が多く噛み応えのある部位は、噛むたびに歯の表面をこすり、歯垢を物理的に除去する効果があります。これは歯石の形成を抑制し、結果的に歯周病や口臭の予防にもつながるのです。
また、しっかり噛むことで唾液の分泌が促進され、口腔内の自浄作用も高まるため、愛犬の口腔衛生の維持に役立ちます。
5. 食事の食いつきが良くなる
生肉の食感や味、匂いは犬の大好物のため、食欲を刺激します。食欲不振に悩む犬でも生肉には興味を示すことも。生肉は部位によって食感が異なるため、食事にバリエーションを加えることができます。例えば、赤身の肉は噛みごたえがあり、脂身の多い部位は風味豊かです。
愛犬の食事の満足度も高まり、喜んで食べてくれるでしょう。
6. ダイエット効果がある
生肉は高タンパク・低カロリーで、特に赤身部分はダイエットに適した食材です。肥満に繋がりやすい糖質が少なく、水分量も多いため、カロリーが低い傾向にあります。また、生肉は食物繊維と同様、しっかり噛む必要があるため、ゆっくりかつ、よく噛むことで満腹感を得やすくなります。
生肉を咀嚼することで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防いでくれます。さらに、生肉に含まれる消化酵素が代謝を上げ、脂肪燃焼効果を促進する効果も期待できます。このように、生肉は犬のダイエットに効果的であり、健康的な体重管理に役立ちます。
犬が食べてもいい生肉
犬が食べてもいいとされる生肉は以下のとおりです。
- 牛肉(生食用)
- 馬肉(馬刺し用)
それぞれの肉について詳しく見ていきましょう。
牛肉(生食用)
牛肉は生食用として適切に処理されたものであれば、犬に与えても問題ありません。生食用の牛肉は、厚生労働省が定めた衛生基準に従って処理されており、病原菌のリスクが低減されています。特に赤身の部分は良質なタンパク質、ビタミンB群、鉄分などを豊富に含み、犬の筋肉発達や血液生成をサポートします。
馬肉(馬刺し用)
馬肉は、適切に処理された生食用(馬刺し用)であれば、犬にとって優れた食材です。馬肉の最大の特徴は、赤身肉の中でも特に脂肪分が少なく、消化性に優れている点です。さらに、牛肉よりも鉄分が多く含まれ、貧血気味の犬や産後の母犬にも良い影響を与えます。
ただし、馬肉にも「ザルコシスティス・フェアリー」という寄生虫が存在する場合があるため、必ず生食用として適切に冷凍処理されたものを選びましょう。新鮮で鮮やかな赤色をしている馬刺しが望ましく、変色しているものは避けるべきです。
犬が生で食べてはいけない肉
犬が生で食べてはいけない肉は、以下のとおりです。
- 豚肉
- 鶏肉
- レバー
- ジビエ
それぞれの肉について詳しく見ていきましょう。
豚肉
豚肉は、犬に生で与えてはいけない肉です。豚肉には「トリヒナ」という寄生虫が潜んでいる可能性があり、これに感染すると「旋毛虫症」を引き起こす危険があります。症状としては発熱、筋肉痛、顔面浮腫などが現れ、重症化すると命に関わることもあります。
また、サルモネラ菌やE型肝炎ウイルスなども含まれていることがあり、これらは加熱によってのみ殺菌できます。
日本では食品衛生法により豚肉の生食は禁止されており、人間でも生で食べることはできません。愛犬に豚肉を与える場合は、必ず中心部まで十分に加熱してから与えるようにしましょう。加熱すれば栄養価の高い良質なタンパク源となります。
鶏肉
鶏肉もまた、犬に生で与えるべきではない肉の一つです。鶏肉には「カンピロバクター」という細菌が高確率で付着しており、これが食中毒の主な原因となります。犬がカンピロバクターに感染すると、激しい下痢や嘔吐、発熱などの症状を示し、特に子犬やシニア犬、免疫力の弱った犬では重症化することがあります。
また、鶏肉にはサルモネラ菌も含まれている可能性が高く、これも深刻な食中毒を引き起こします。鶏肉は中心部まで火を通さないと、これらの細菌を完全に殺菌することができません。
十分に火を通さず野菜と一緒に鶏肉を与えると、野菜にも細菌が移り、結果的に食中毒のリスクが高まります。
犬に鶏肉を与える場合は、中心温度が75℃以上に達するよう十分加熱し、調理器具や手指の衛生管理にも気を配りましょう。
レバー
牛や豚、鶏などのレバー(肝臓)をはじめとする内臓肉も、生で犬に与えるのは避けるべきです。内臓肉は筋肉(赤身)よりも病原体や寄生虫が潜んでいる可能性が高く、特に牛レバーからはE型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌O157などの検出例が多数報告されています。
一方で内臓肉、特にレバーはビタミンAやB群、鉄分などの栄養素を豊富に含む優れた食材です。これらの栄養素を安全に摂取するためには、必ず十分に加熱調理してから与えることが必要です。
ジビエ
近年、ジビエ肉として鹿肉や猪肉などの野生動物の肉が注目されていますが、これらを犬に生で与えるのは非常に危険です。野生動物の肉には様々なウイルスや細菌、寄生虫が含まれている可能性が高く、適切な処理をしていない場合はリスクが高まります。
ジビエ肉からはE型肝炎ウイルスが検出される例が多く、また野生動物特有の寄生虫も問題の一つです。一部のペットフードメーカーでは適切に処理されたジビエ肉を使用した製品も販売されていますが、自分で調達したジビエ肉を生で与えるのは避けるべきです。
どうしても与えたい場合は、十分に加熱調理するか、専門的な処理がされた「生食用」と明記された製品を選びましょう。
犬に生肉を与える際の注意点
愛犬に生肉を与える際は、以下の点に注意しましょう。
- 生食用の肉を選ぶ
- 細菌や寄生虫に注意する
- 生肉を買ったら新鮮なうちに与える
- 生肉の単独使用は避ける
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
生食用の肉を選ぶ
犬に生肉を与える際には、必ず「生食用」と明記された肉を選びましょう。通常スーパーなどで売っている肉は「加熱用」であり、調理して食べることが前提です。加熱用の肉には細菌やウイルスが残っている可能性があるため、そのまま犬に与えると食中毒を引き起こす危険があります。
安全に生肉を与えるためには、生食専門店や犬用生肉を扱うペットショップ、オンラインショップなどで、専門業者が適切な衛生管理のもとで処理した、「生食用」のものを与えましょう。
細菌や寄生虫に注意する
生肉には「サルモネラ菌」や「カンピロバクター菌」、「腸管出血性大腸菌」といった細菌が潜んでいる恐れがあります。犬がこれらの細菌に感染すると、食中毒による下痢や嘔吐、発熱、脱水、場合によっては重篤な症状が出ることも考えられます。
また、生肉に含まれる「トキソプラズマ」や「有鉤条虫」といった寄生虫に感染することで、犬が発熱や元気の喪失、食欲不振などの症状を起こすことがあります。さらに注意したいのが、無症状の犬が排泄物を通じて人に感染するリスクです。免疫力の低い高齢者や子供、妊婦がいる家庭では、この点に十分に注意する必要があります。
生肉を買ったら新鮮なうちに与える
犬に生肉を与える際には、鮮度が非常に重要です。人が食べても問題のない新鮮で安全なものや、生食用として加工・販売されているものを選びます。購入したらすぐに冷蔵庫で保管し、できるだけ24時間以内に使用するのが理想です。長期保存が必要な場合は、小分けにして冷凍保存し、必要な分だけ解凍する習慣をつけましょう。解凍した生肉は室温に長時間放置せず、冷蔵庫内でゆっくり解凍します。
また、生肉の色や臭い、触感に変化があれば、たとえ消費期限内であっても与えるのは避けてください。細菌の増殖は目に見えませんが、肉の状態に違和感があれば、それは腐敗が始まっている可能性があります。
犬の健康を守るためにも、鮮度と品質には妥協せず、「少しでも怪しい」と感じる生肉は思い切って処分することが大切です。
生肉の単独使用は避ける
生肉だけでは栄養バランスが偏りがちです。特にシニア犬や、腎臓、肝臓など内臓疾患を抱える犬にとって、高タンパク質の生肉のみの食事は内臓に負担をかけてしまうことがあります。野菜も取り入れて、バランスの良い食事を心がけましょう。
茹でた野菜を生肉と混ぜることで、過剰なタンパク質摂取を抑えつつ、食物繊維やビタミン、ミネラルを補うことができます。
《茹で野菜の作り方》
◆サキニコブ(血糖値を上げにくい野菜)
…サツマイモ・キノコ・ニンジン・コマツナ・ブロッコリー
いずれも必ず細かくみじん切りし、3分以上茹でてください。ゆで汁には水溶性の栄養素だけでなく、犬にとって消化しにくい成分も含まれているため、捨てます。
※焼く、蒸す、レンジはNG
生肉:茹で野菜=1:1
特にシニア期や内臓疾患のある愛犬ちゃんにはこの様な工夫をしてあげると無難でしょう。

犬に生肉を与える際の適量は?
犬に生肉を与える際の適量については、本来の栄養素は総合栄養食であるドッグフードで摂ることが推奨されます。生肉は栄養価が高いものの、それだけでは必要な栄養をすべて満たすことはできません。そのため、生肉は食事のトッピングやおやつとして、一日の総カロリーの10~20%を目安に与えるようにしましょう。
犬と生肉についてよくある質問
ここでは、犬と生肉についてよくある質問に答えていきます。
Q1:犬に生肉を与えてもいい?
結論から言うと、適切に処理された生食用の肉であれば犬に与えることができます。ただし、すべての生肉が安全というわけではありません。人間用の生食用として販売されている牛肉や馬肉が望ましいでしょう。
与える際は、新鮮で衛生的なものを選び、少量から始めて犬の反応を観察することが大切です。また、免疫力の弱い子犬やシニア犬、持病のある犬には、獣医師に相談してから与えるようにしましょう。
Q2:犬に与えてはいけない生肉の種類は?
犬に与えてはいけない生肉には、豚肉、鶏肉、レバーなどの内臓肉、適切に処理されていないジビエ肉があります。
豚肉には「トリヒナ」という寄生虫が、鶏肉には「カンピロバクター」や「サルモネラ菌」が含まれている可能性が高く、重篤な食中毒を引き起こす恐れがあります。また、レバーなどの内臓肉は病原体が潜みやすく、ジビエ肉にもE型肝炎ウイルスなどのリスクがあります。
これらの肉を犬に与える場合は、必ず十分に加熱調理してから与えるようにしましょう。食中毒は犬だけでなく、人間にも感染する可能性があるため注意が必要です。
Q3:犬に生肉を与えるメリットは?
生肉を犬に与えることには、以下のようなメリットがあります。
- 栄養素の効率的な摂取: 加熱で失われやすいビタミンB群や酵素を本来の形で摂取できる
- 骨や筋肉の健康維持: 生肉に含まれる栄養素が骨格や筋肉の発達と維持をサポート
- 水分摂取の促進: 生肉は加熱した肉より水分量が多く、自然な水分補給になる
- 歯のクリーニング効果: 生肉を噛むことで歯垢が除去され、歯周病予防につながる
- 食欲増進効果: 多くの犬は生肉の風味を好み、食欲不振の改善が期待できる
- ダイエットのサポート: 生肉を咀嚼する時間が長く、満腹感を得やすくなる
ただし、これらのメリットを安全に得るためには、適切な種類かつ鮮度のある生肉を選ぶことが重要です。
まとめ
犬はもともと肉食動物なので、生肉を食べても問題ありませんが、与える際には肉の安全面や衛生面に注意が必要です。また、生肉は加熱調理で壊れてしまう栄養素や酵素を摂ることができ、肉本来の食感や味、匂いで食欲アップも期待できます。
ただし、生肉は栄養豊富ではありますが、これだけでは十分ではないので、ドッグフードをメインにトッピング程度に抑えて与えると良いでしょう。
■犬は生肉を食べても問題ない
■犬に生肉を与えるメリット
1.生肉ならではの栄養を取れる
2.骨や筋肉が丈夫になる
3.不足しがちな水分を摂取できる
4.歯磨きの代わりになる
5.食事の食いつきが良くなる
6.ダイエット効果がある■犬が食べてもいい生肉
・牛肉(生食用)
・馬肉(馬刺し用)■犬が生で食べてはいけない肉
・豚肉
・鶏肉
・レバー
・ジビエ■犬に生肉を与える際の注意点
・生食用の肉を選ぶ
・細菌や寄生虫に注意する
・生肉を買ったら新鮮なうちに与える
・生肉の単独使用は避ける■犬に生肉を与える際の適量は?
ドッグフードのトッピングやおやつとして
一日の必要カロリーの10~20%が目安■犬と生肉についてよくある質問
・Q1:犬に生肉を与えてもいい?
・Q2:犬に与えてはいけない生肉の種類は?
・Q3:犬に生肉を与えるメリットは?









