愛犬にイボができたらどうする?原因や悪性腫瘍との見分け方、治療法、対処法を解説

愛犬の体を撫でていて、指先に「ポツッ」としたできものを見つけた経験はありませんか?その多くは加齢などに伴う心配のない良性のイボですが、中には悪性腫瘍(皮膚がん)が隠れている可能性もゼロではありません。

この記事では、犬のイボの様々な原因、危険な悪性腫瘍との見分け方、ご家庭での対処法や動物病院での治療法を解説します。

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犬のイボとは

イボとは、皮膚にできる小さなできものの総称で、医学用語ではありません。その正体は一つではなく、原因も見た目も様々です。

犬の体で最も多く見られるのは、加齢に伴う良性の「皮脂腺腫」ですが、特徴的なカリフラワー状の見た目から、ウイルス性の「乳頭腫(パピローマ)」も広く知られています。これらは良性ですが、中には悪性の腫瘍が隠れている可能性も。

自己判断せず、獣医師に相談することが大切ですが、種類と見分け方を飼い主様が知っておくことも、早期発見や適切なケアのために重要です。

犬にイボができる原因

愛犬にイボができる主な原因は以下の3つです。

  • ウイルス感染
  • 免疫の低下
  • 遺伝

それぞれの原因について、掘り下げて解説します。

パピローマウイルスの感染

犬のイボの原因として代表的なのが、パピローマウイルスへの感染によってできる「乳頭腫(にゅうとうしゅ)」です。これは良性のイボで、皮膚の小さな傷からウイルスが侵入して発症します。特に、免疫力が未熟な若齢犬の口周りや、免疫力が低下したシニア犬の体にできやすいのが特徴です。

犬同士の直接的な接触や、ウイルスが付着したおもちゃの共有などで感染しますが、健康な犬であれば、免疫の働きで数ヶ月以内に自然と消えることがほとんどなので、過度な心配は不要です。ただし、数が増えたり、生活に支障が出たりする場合は、動物病院に相談しましょう。

免疫の低下

免疫システムは、体内の異常を監視し、ウイルス感染や細胞の異常増殖を防ぐ役割を担っています。この力が弱まると、特に皮膚のバリア機能が低下している場合、ウイルスが侵入しやすくなったり、できものができやすくなるのです。

特に免疫が未熟な子犬や、病中病後の犬、そして加齢により免疫が衰え始めるシニア犬は注意が必要です。シニア犬は1年で人の約5年分も年を取るため、免疫力の低下が急速に進むことを覚えておきましょう。

遺伝

イボやできものの中には、特定の犬種で発生しやすい、遺伝的な要因が関与するものもあります。例えば、ゴールデンレトリーバーやパグでは、悪性度の高い皮膚がんの一種である「肥満細胞腫」の発生率が高いことが知られています。

また、良性ですが、パグやミニチュア・シュナウザーに多く見られる黒いイボ「色素性乳頭腫症」も、遺伝的素因が指摘されています。特定の犬種を家族に迎える際は、こうした遺伝的なリスクについても知っておくと安心です。

犬の良性のできものの主な種類と特徴

愛犬の体に見つけた「イボ」、まずは、どのタイプに近いかを確認してみましょう。犬のできものには大きく分けて良性と悪性の2種類があり、そのほとんどは命に別状のない良性のものです。

とはいえ、「きっと良性だろう」という素人判断は危険なので、慌てずに冷静に観察しつつも、自己判断はせずに、必ず信頼できる動物病院で獣医師の診断を受けるようにしましょう。

皮脂腺腫|老犬に多いピンクや白色のできもの

高齢犬の体や足、まぶたなどによく見られる、ピンク色や白っぽく、表面が少しデコボコしたドーム状のできものです。皮脂腺が過剰に増殖したもので、良性の腫瘍です。「老犬イボ」と呼ばれるものの多くは、この皮脂腺腫にあたります。

数週間から数か月で自然に小さくなることもあります。大きさが変わらない場合は経過観察でよいですが、出血や化膿した場合は切除などの処置が必要です。

皮膚乳頭腫(パピローマ)|カリフラワー状のイボ

若い犬の口周りや、高齢犬の体・まぶたなどに見られる、白っぽく表面がカリフラワーのようにゴツゴツしているのが特徴です。パピローマウイルスへの感染が原因で、多くは自然に消えますが、多発する場合や生活に支障が出る場合は切除することもあります。

表皮嚢胞|皮膚の下の硬いしこり

毛穴が詰まり、皮膚の下に袋状の構造ができて、その中に古い角質(垢)や皮脂がチーズのように溜まったものです。触ると皮膚の下でクリクリとした硬いしこりとして感じられます。

基本的には良性ですが、何らかの刺激で袋が破れて中身が漏れ出すと、激しい炎症を起こして痛みを伴うことがあります。飼い主様が無理に潰そうとするのは絶対にやめましょう。

脂肪腫|皮膚の下にある柔らかい塊

皮下脂肪が塊となってできる柔らかいイボです。体のさまざまな部位に発生し、数ミリの小さなものから30センチを超える大きなものまであります。成長がゆっくりで柔らかく、転移する心配もない良性の腫瘍です。

多くの場合は経過観察で問題ありませんが、大きくなりすぎて歩行などの日常動作に支障をきたす場合は切除を検討します。

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犬の良性と悪性イボの見分け方

ほとんどのイボは良性ですが、中には悪性腫瘍が隠れている可能性もゼロではありません。良性に見えても、以下のような悪性が疑われる危険なサインが一つでも見られる場合は、様子を見ずに、すぐに動物病院を受診してください。

■急速に大きくなる
数週間〜1ヶ月で倍になるなど、成長スピードが異常に速い

■形がいびつで、境界が不明瞭
綺麗な円形やドーム状ではなく、輪郭がギザギザしている

■色が黒かったり、複数の色が混ざっている
単一のピンクや白ではなく、黒や紫、まだら模様など

■表面から出血したり、ジクジクしている(潰瘍化)
犬が気にしていないのに、表面が崩れて出血や体液の滲出がある

■犬が触られるのを嫌がる(痛みを伴う)
ただのできものとは違い、触ると痛がる、気にするそぶりを見せる

上記のような危険なサインが見られた場合、以下のような悪性腫瘍の可能性も考えられます。

肥満細胞腫

皮膚にできる悪性腫瘍の一つです。見た目は良性のイボに似ていますが、急激に大きくなったり、赤みを帯びたり、出血したりする特徴があります。触ると硬く、刺激すると大きくなることも。

早期発見・早期治療が重要で、放置すると他の臓器に転移するリスクがあります。治療は主に外科的切除ですが、場合によって化学療法や放射線療法を併用することもあります。

扁平上皮癌

皮膚の表面を覆う細胞が癌化したものです。特に、毛が薄く、紫外線の影響を受けやすいお腹や鼻先、爪の根元などに発生しやすいとされています。初期はカリフラワー状や、治りにくい皮膚炎のように見えることがあります。早期発見が重要で、主に外科的切除による治療を行います。

これらはあくまで一例です。見た目だけで判断することは獣医師でも不可能であり、細胞の検査(細胞診)や組織の検査(病理組織検査)をしなければ、確定診断はできません。

犬のイボの取り方・治療方法

犬のイボの治療方法は、イボの種類や大きさ、場所によって異なります。ここでは、犬のイボの取り方・治療方法を見ていきましょう。

外科手術による切除

麻酔下でイボをメスで物理的に切除し縫合する外科手術です。ある程度の大きさがあるイボや、悪性の可能性がある腫瘍に適しています。手術では周囲の健康な組織も含めてイボを完全に切除し、必要に応じて病理検査を行います。

局所麻酔による切除

小さな良性イボの場合に選択される治療法です。局所麻酔を施して短時間で切除するため、日帰り処置が可能です。全身麻酔のリスクを避けられるため、高齢犬や持病のある犬にも比較的安全に実施しやすいメリットがあります。

レーザー治療

医療用レーザーを照射し、イボの組織をピンポイントで蒸散させる方法です。

出血がほとんどなく、周囲の正常な組織へのダメージを最小限に抑えられるため、特に口の中や目の周りといったデリケートな部位のイボに適しています。傷の治りが早く、跡が残りにくいのも特徴ですが、専門的な設備が必要です。

凍結療法

液体窒素などの超低温物質でイボの細胞を凍結・壊死させて取り除く、体への負担が非常に少ない治療法です。無麻酔か軽い鎮静で実施できることが多く、出血もほとんどないため、小さな良性のイボ(乳頭腫や皮脂腺腫など)を持つ高齢犬にも安心して適応できます。

ただし、一度で取りきれずに複数回の処置が必要になることもあります。治療後、イボは自然に脱落していきます。

経過観察(治療しない)

良性のイボと診断された場合、すぐに治療を行わず、様子を見ていくことも選択肢の一つです。ただし、これは獣医師による定期的な観察と判断が必要です。イボの大きさ、色、形状の変化を記録し、急激な変化や炎症がないかチェックします。愛犬の様子に変化があれば、治療に移行することもあるため、自己判断は避けましょう。

犬にイボができた時の対処法

犬にイボができた時の対処法は以下の3つです。

  • イボに触らない
  • 放置せずに病院に行く
  • 他の犬と接触させない

それぞれの対処法について詳しく解説します。

1. 冷静に観察・記録する

犬のイボのほとんどは良性です。正確な診断のために、以下の項目を写真やメモで記録しましょう。獣医師に見せる際に、重要な参考情報となります。

  • いつからあるか: 発見した日付
  • 大きさ: 定規を当ててミリ単位で測定、または比較対象物(例:1円玉)と一緒に撮影
  • 形、色、硬さ: カリフラワー状か、ドーム状か。色はピンクか黒か。硬いか、柔らかく動くか。
  • 犬の様子: 気にして舐めたり、触ると痛がったりしないか。

早めに動物病院を受診する

良性のイボであれば、しばらく経過を見守れますが、イボにはさまざまな種類があり、中には治療が必要な悪性のものも含まれています。

イボの見た目だけで良性か悪性かを判断するのは、獣医師でも不可能です。自己判断で様子見をするのはなお危険です。 上記で記録した情報を持参し、できるだけ早く動物病院を受診して、専門家による正確な診断(細胞診など)を受けましょう。

イボを過剰に触らない・自己判断で対処しない

愛犬の体にイボを見つけると、心配のあまりつい触って確認したくなりますが、過剰に触ることは避けましょう。飼い主様が触り続けることでイボが刺激され、大きくなったり、炎症を起こしたりする可能性があります。愛犬自身が気にしていないようであれば、飼い主様も日々の観察に留め、気にしすぎないことが大切です。

特に、以下のような自己判断による危険な対処は、愛犬の症状を悪化させるリスクが非常に高いため、絶対にやめてください。

■自分で潰したり、取ろうとする
細菌感染を起こしたり、万が一悪性だった場合に、がん細胞を周囲に散らばらせる危険があります。

■人間用の薬(イボコロリなど)を使う
犬の皮膚には刺激が強く、深刻な化学やけどや皮膚炎を引き起こすため危険です。

■糸で縛る
血行が阻害され、皮膚が壊死したり、重篤な感染症を起こしたりする原因になります。

他の犬と接触させない

愛犬のイボが、獣医師の診断によってウイルス性の乳頭腫(パピローマ)だと分かった場合は、他の犬へ感染させないための配慮が必要です。パピローマウイルスによる乳頭腫は、直接的な接触だけでなく、共有する食器やおもちゃを介して広がることもあります。

イボが完治するまでドッグランの利用は控えめにしましょう。特に免疫力の低下している犬や治療中の犬との接触は避ける必要があります。散歩コースも、他の犬との接触が少ないルートを選ぶなど、工夫をしてあげてください。

犬のイボの予防方法

犬がイボにならないための予防方法は以下の3つです。

  • スキンシップを取って体を触る
  • 環境を清潔に保つ
  • 免疫力を高める

それぞれの予防方法について詳しく解説します。

スキンシップを取って体を触る

毎日愛犬を撫でていると、自然と指先が自然と指先がいつもの体つきを覚えてくれます。そうすることで、「あれ、こんなところに小さなポッチあったかな?」と、気づくことができます。

毛に覆われた犬の皮膚の異常は、飼い主様が触ってあげることで初めて見つかることも少なくありません。早く気づいてあげるほど、愛犬への負担が少ない治療で済む可能性も高まります。日々の愛情のこもったスキンシップが、最高の健康チェックになるのです。

環境を清潔に保つ

イボ予防には、皮膚のバリア機能を守るため、愛犬の体と生活環境の両方を清潔に保つことが重要です。散歩した後はブラッシングで汚れを落とし、月1〜2回のシャンプーで体を清潔に保ちましょう。

これと同時に、愛犬が多くの時間を過ごすベッドや毛布、おもちゃなどもこまめに洗濯・消毒することが大切です。こうした日々のケアが、イボができにくい健康な皮膚環境を育みます。

免疫力を高める

免疫力を高めることは、イボの予防に重要な役割を果たします。まずは、良質なタンパク質やビタミン、ミネラルをバランスよく含んだドッグフードを選びましょう。獣医師に相談して、愛犬の年齢や体格に合った適切な量を与えることが大切です。

また、過度なストレスは免疫力を低下させる原因になります。適度な運動や十分な休息、快適な睡眠環境の確保など、愛犬がリラックスできる生活環境を整えましょう。急激な環境変化や長時間の留守番は避け、規則正しい生活リズムを心がけてください。

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犬のイボに関するよくある質問

最後に、犬のイボについて飼い主さんからよく寄せられる疑問に回答していきます。

犬のイボ取りにかかる費用はどれくらい?

かかる費用は、イボの種類や施術方法によって異なります。大まかな目安は以下のとおりです。

  • レーザー治療:1万円〜
  • 局所麻酔  :2,000円〜6,000円
  • 凍結療法  :3,000円〜
  • 内服薬   :1,000円〜

ただし、複数個所の治療や、術後の投薬、経過観察の費用なども考慮が必要です。また、動物病院によって料金は異なるので、事前に動物病院に確認しましょう。

イボは他の犬や人に感染する?

パピローマウイルスが原因の乳頭腫は、犬同士の接触で感染することがあります。幼犬やシニア犬、免疫力が低下している犬は感染しやすいため、注意が必要です。とはいえ、犬のイボは人間には感染しないので、飼い主さんが過度に心配する必要はありません。

乳頭腫が見つかったら、治療が終わるまではお散歩コースの変更やドッグランの利用を控えるなど、他の犬との接触を避けるようにしましょう。

再発の可能性はある?

イボの種類や治療法によって再発のリスクは変わってきます。ウイルス性の乳頭腫は免疫力が回復すれば再発は少ないものの、免疫力が低下したままだと新たなイボができやすい傾向があります。

また、手術で完全に切除できた場合でも、体の別の場所に新しいイボができることはあるでしょう。そのため、定期的な健康診断を受けながら、日々の観察で早期発見を心がけることが大切です。

予防法は?

イボの予防で最も重要なのは、免疫力の維持です。良質なフードの給餌と適度な運動を心がけ、体調管理をしっかりと行いましょう。定期的なシャンプーとブラッシングで皮膚を清潔に保つことで、傷口からの感染リスクも軽減できるでしょう。

特にシニア犬は免疫力が低下しやすいため、毎日のスキンシップで体の変化を見逃さないよう注意が必要です。

まとめ

本記事では、犬にできるイボの種類や原因、対処法、予防策について詳しく解説しました。イボには良性と悪性のものがあり、外見だけでは判断が難しいため、見つけた際には放置せず、早めに獣医師に相談することが重要です。

普段からマッサージや清潔な環境を保ち、免疫力を高めることで、イボの予防にもつながります。愛犬の健康を守るために、日常的なケアを心がけましょう。