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愛犬が足先をしきりに舐める行動は、犬らしい愛くるしいしぐさに見えるかもしれませんが、もしかすると「指間炎」の可能性があるかもしれません。指間炎は、犬の指の間や足裏の皮膚に炎症が起こる病気です。
本記事では、指間炎の症状の見極め方から、考えられる原因、動物病院での治療法、自宅でのケアと予防法まで、網羅的に解説します。
【指間炎かも?】愛犬の足裏チェックリスト
愛犬が足を気にしている仕草を見せたら、ご自宅で一度、以下のサインがないかチェックしてみてください。1つでも当てはまる場合は、指間炎の可能性があります。
- 特定の足をしきりに舐めたり、噛んだりしている
- 指の間の毛が、よだれで赤茶色に変色している(よだれ焼け)
- 指の間や肉球の周りが赤く腫れている
- 触ると熱を持っている感じがする
- フケが出たり、皮膚がカサカサしたりしている
- 湿ったような独特の臭いがする
- 小さな水ぶくれや膿がたまっている
- 散歩中に足を気にしたり、歩き方がぎこちなかったりする
犬の指間炎とは
指間炎は、犬の指と指の間の、肉球の周りの皮膚に炎症が起こる病気の総称です。犬は地面に直接触れる足先に負担がかかりやすく、また構造的に蒸れやすいため、非常にトラブルが起こりやすい部位です。
初期段階では、少し赤くなっている程度の軽微な症状のため、「ただの舐めすぎかな?」と見過ごされがちです。しかし、指間炎の背景にはアレルギーや感染症など様々な原因が隠れていることが多く、放置すると炎症が皮膚の奥深くまで進行し、膿が溜まったり(膿皮症)、硬いしこりができたりして、強い痛みを伴うようになります。
指間炎はどれぐらいで治る?
治療期間は、原因や症状の重症度によって大きく異なります。
- 軽症(赤み、軽い痒みのみ):適切な外用薬やシャンプー療法で、1〜2週間程度で改善が見られることが多いです。
- 中等症〜重症(腫れ、膿、痛み):抗生剤などの内服薬が必要となり、数週間〜数ヶ月の治療期間を要することもあります。
アレルギーなどが根本的な原因である場合は、完治というよりは、症状をコントロールしながら生涯にわたって付き合っていく必要もあります。
犬の指間炎の症状
犬の指間炎には、以下のような症状が見られることがあります。
1. 足を舐めたり噛んだりする
犬が、指の間や肉球を頻繁に舐めたり噛んだりする行動は、指間炎の症状の一つです。この行動によって、患部が湿った状態になり、細菌が繁殖しやすくなって症状が悪化することがあります。愛らしい仕草に見えても、放置すれば愛犬の苦痛は増すばかりです。「たかが足舐め」と軽視せず、悪化する前に原因を見つけて、適切なケアをしてあげましょう。
2. 炎症を起こしている
犬の指の間や肉球の間が赤くなって腫れている場合は、炎症が起きているサインです。この炎症により、かゆみや痛みを伴うことが多く、症状が進行すると出血や膿の排出、さらには脱毛が見られることもあります。早めに適切な治療を行うことが大切です。
3. 患部が化膿している
指間炎が進行すると、出血や化膿が起こり、膿が溜まった水泡が形成されることがあります。この状態は細菌感染が深刻化している可能性を示し、早急な治療が必要です。放置するとさらに悪化するため、早めに獣医師に相談しましょう。
犬の指間炎の原因
犬の指間炎は、主に以下3つの原因が挙げられます。
- 物理的な刺激(舐めすぎ・異物・爪)
- 感染症(細菌・真菌)
- アレルギー
- 環境要因(高温多湿、不衛生)
- 基礎疾患(内分泌疾患など)
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
1. 物理的な刺激(舐めすぎ・異物・爪)
指間炎の直接的なきっかけは、足先への物理的な刺激です。痒みや違和感から舐め続けると、唾液で皮膚のバリア機能が低下し、さらに炎症が悪化するという悪循環に陥ります。
また、散歩中に植物のノギやガラス片、アスファルトの破片などが指の間に刺さることも原因となります。これらは小さな傷を作り、そこから細菌が侵入する入り口となってしまいます。さらに、伸びすぎた爪は正常な歩行を妨げ、指の間に不自然な圧力をかけ炎症を引き起こします。足裏の毛が伸びすぎて、汚れや湿気を溜め込んでしまうことも同様のリスクです。
2.感染症(細菌・真菌)
皮膚のバリア機能が低下すると、普段は問題にならない皮膚の常在菌が異常に増殖し、炎症を引き起こします。これを二次感染と呼びます。
代表的な原因菌が、ブドウ球菌などの「細菌」と、「マラセチア」という真菌(カビ)です。細菌感染では、膿の入った赤いブツブツ(膿疱)が見られることがあります。マラセチアが増殖した場合は、皮膚が脂っぽくベタベタし、独特の甘酸っぱいような臭いを放つのが特徴です。
3. アレルギー
アレルギー反応による全身性のかゆみは、指間炎に多い原因です。犬はかゆみを感じると、舐めやすい場所である足先を執拗に舐めたり噛んだりするため、症状が現れやすくなります。
- アトピー性皮膚炎:花粉やハウスダスト、ダニなど、環境中のアレルゲンに対するアレルギーで、足先はその好発部位の一つです。
- 食物アレルギー:食事に含まれる特定のタンパク質(鶏肉、牛肉、乳製品、小麦など)に反応し、皮膚に痒みを引き起こします。
- 接触性皮膚炎:散歩コースの特定の植物や除草剤、室内の床用ワックスなどに触れることで、足裏にアレルギー反応が起こることもあります。
4.環境要因(高温多湿、不衛生)
指の間は、犬の体の中でも蒸れやすい場所です。特に、日本の梅雨から夏にかけての高温多湿な環境は、細菌やマラセチアが繁殖しやすくなります。これが、夏場に指間炎が悪化する大きな原因です。雨の日の散歩後などに濡れたまま放置すると、指間炎を発症するリスクが格段に高まります。
5. 基礎疾患(内分泌疾患など)
皮膚の状態は、体全体の健康状態に大きく左右されます。そのため、一見すると足先だけの問題に見える指間炎も、体の内側にある基礎疾患の結果として発症していることがあります。
例えば、甲状腺機能低下症やクッシング症候群といったホルモンの病気は、皮膚の新陳代謝や免疫機能を低下させ、指間炎の直接的な引き金となります。この場合は、根本的な病気の治療が、皮膚症状の改善に不可欠です。
犬の指間炎の動物病院での治療法
犬の指間炎の治療は、原因を特定し、それに応じたアプローチを行うことが重要です。
1. 外用薬(塗り薬・薬用シャンプー)
軽症の場合は、抗炎症作用や抗菌・抗真菌作用のある塗り薬や、薬用シャンプーによる洗浄(薬浴)が中心となります。シャンプー療法は、余分な皮脂や細菌を洗い流し、皮膚を清潔に保つ上で効果的です。
シャンプーの種類によっては、漬け置き時間や洗浄頻度が異なります。獣医師の指示に従い、正しいシャンプー剤と頻度で行うことが大切です。
2. 内服薬(飲み薬)
炎症や感染が中等度〜重度の場合は、飲み薬による治療が必要です。
- 抗生物質:細菌感染を抑えるために使用します。
- 抗真菌薬:マラセチアなどの真菌感染を抑えるために使用します。
- 抗炎症薬(ステロイドなど):強い痒みや炎症を迅速に抑えるために使用します。
- 免疫抑制剤・分子標的薬:アトピー性皮膚炎など、アレルギーが原因の場合に使用されることがあります。
犬の指間炎の再発を防ぐ自宅でのケアと予防法
指間炎は再発しやすい病気です。治療と並行して、日々のケアで再発を防ぐことが何よりも重要です。
ケア1:散歩後の正しい足のケア
散歩から帰ったら、必ず足先をチェックしましょう。濡れたタオルで優しく汚れを拭き取るか、ぬるま湯で洗い流します。石鹸やシャンプーの使いすぎは、かえって皮膚を乾燥させバリア機能を低下させるので、獣医師の指示がない限りは水洗いで十分です。重要なのは完全に乾かすことです。タオルドライの後、ドライヤーの冷風などで指の間までしっかり乾かしましょう。
ケア2:定期的な爪切りと足裏の毛のカット
爪が伸びすぎると歩行のバランスが崩れ、指の間に負担がかかります。また足裏の毛が伸びていると、滑りやすくなるだけでなく、汚れや溜まりやすくムレの温床になります。
定期的に爪を切り、バリカンなどで足裏の毛を短くカットして、清潔で風通しの良い状態を保ちましょう。
ケア3. 舐めさせない工夫
どれだけ良い治療をしても、犬が患部を舐め続けていては治りません。治療中は、エリザベスカラーや犬用の靴下、ブーツなどを活用し、物理的に舐められないようにすることが重要です。
犬の指間炎ケアにおける食事のポイント
指間炎は皮膚のトラブルのひとつですが、体の内側から整えることで、症状の緩和が期待されます。ここでは、毎日のごはんを見直す際に役立つ6つの食事ポイントをご紹介します。
①高たんぱく質を避ける
炎症の原因が高たんぱく質フードの場合も見られます。タンパク質が30%以上のもので、炎症がある場合には、30%以下のタンパク質を抑えたものにする、または茹でた野菜などをトッピングしてタンパク質比率を調整することも有効です。
②アレルゲン除去食の導入(除去食試験)
指間炎の原因のひとつに食物アレルギーが関係している場合があります。まずは、アレルゲンとなり得る食材を避ける「除去食試験」から始めてみましょう。
取り入れやすいフードのタイプ:
・加水分解タンパク質を使用したフード
・単一タンパク源と単一炭水化物源の組み合わせ(例:鹿肉+さつまいも)
📌 約6〜8週間継続して観察することで、改善傾向を確認できるとされています。
③オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)で炎症対策サポート
オメガ3系脂肪酸には、皮膚の健康維持やバリア機能をサポートする働きが期待されています。特に、炎症やかゆみを感じやすい子には意識して取り入れたい成分です。
おすすめ食材:フィッシュオイル、サーモンオイル、亜麻仁油、えごま油
④ビタミン・ミネラルで皮膚の健康維持をサポート
皮膚の代謝や再生には、各種ビタミンとミネラルのバランスが重要です。
注目の栄養素と役割:
ビタミンA:皮膚と粘膜の維持に
ビタミンE:酸化ダメージのケアに
ビタミンB群:代謝とターンオーバーの促進に
亜鉛・セレン:皮膚の修復と抗酸化サポートに
⑤プレバイオティクスで腸内からサポート
腸内環境が整うと、全身の免疫バランスも安定しやすくなり、皮膚にも良い影響が期待できます。
取り入れやすい成分:
・乳酸菌・ビフィズス菌
・フラクトオリゴ糖(FOS)
・発酵食品由来の成分
⑥糖質の見直しとグレインフリーの検討
一部の犬では、小麦・とうもろこし・大豆などの穀物が消化トラブルやアレルゲンになっていることもあります。
代替としておすすめの炭水化物:
・さつまいも
・かぼちゃ
・玄米、大麦(ただし過敏に反応する場合には避ける)
犬の指間炎に関するよくある質問
最後に犬の指間炎に関するよくある質問に答えていきます。
指間炎は自然に治りますか?
軽度の赤み程度であれば、足を清潔に保ち、舐めさせないようにすることで自然に改善することもあります。しかし、多くの場合、背景に感染症やアレルギーがあるため、放置すると悪化する可能性が高いです。悪化してからでは治療が長引くため、早めの受診をおすすめします。
人間用の市販薬(ワセリン、オロナインなど)は使えますか?
人間用の薬は、犬にとって刺激が強すぎたり、舐めてしまうと中毒を起こしたりする成分が含まれていることがあります。また、ワセリンのような油分が多い軟膏は、かえって患部を密閉し、細菌の繁殖を助長する危険があります。必ず動物病院で処方された薬を使用してください。
散歩に行ってもいいですか?
獣医師の指示に従ってください。痛みで歩くのを嫌がる場合や、患部がジュクジュクしている場合は、散歩を控えた方が良いでしょう。
症状が軽い場合でも、散歩時間を短くしたり、アスファルトを避けて柔らかい草の上を歩かせたり、散歩後に犬用のブーツを履かせたりするなどの配慮が必要です。帰宅後の洗浄・乾燥ケアは徹底しましょう。
まとめ
犬の指間炎は、初期症状が目立たないため、発見が遅れることが多い病気です。犬が、足先を頻繁に舐める行動や、毛色の変化が見られた場合は、指間炎を疑い、舐めるのを防ぎながら、速やかに動物病院を受診しましょう。
この病気は再発しやすいため、定期的なケアと早期治療が重要です。予防として、毎日の食事やサプリメントによる免疫維持や体質改善も効果的です。日頃から愛犬の健康状態をよく観察し、早めの対応を心がけましょう。

