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「水をあまり飲んでいないけど、大丈夫かな?」愛犬のそんな様子に、不安を感じていませんか。もしかしたら「脱水症状」が隠れているかもしれません。
脱水症状とは、体内の水分が不足し、体の機能が正常に保てなくなった状態のこと。犬は人間に比べて喉の渇きを感じにくく、我慢してしまうことが多いため、気づかぬうちに水分不足に陥りやすいのです。
この記事では、犬の脱水症状に見られる症状や原因、見分け方、水を摂取させるための工夫などを紹介します。
犬の脱水症状とは体内の体液が不足している状態
犬の脱水症状とは、体から水分が失われ、健康を維持するために必要な体液が不足している状態を指します。体液は、単なる水だけでなく、ナトリウムやカリウムといった電解質(ミネラル)も含まれており、体の機能を正常に保つ上で不可欠です。
この体液が、水を飲まないことや、嘔吐・下痢などによって失われると、体内のバランスが崩れ、元気消失や食欲不振といった症状が現れます。犬は人間に比べて喉の渇きに鈍感で、我慢してしまうことが多いため、飼い主さんが気づかないうちに脱水が進行していることがあります。
犬の脱水症状に見られる具体的な症状とは?
犬の脱水症は、元気がないといった些細な変化から、皮膚の乾燥といった分かりやすいものまで、様々なサインとして現れます。ここでは、脱水時に見られる代表的な症状を具体的に解説します。
1. 元気がない
犬がぐったりして元気がない場合、脱水症状の可能性があります。特に、暑い日や運動後に反応の鈍さが見られるときは、注意が必要です。
ただし、単に疲れて休んでいるだけの場合もあるため、普段の様子をよく観察し、異変に早く気づくことが大切です。また、寝る時間が増えたり、散歩を嫌がる場合は、活動量の低下や体調不良の可能性も考えられるため、日常の細かな変化に注意しましょう。
2. 食欲がない
犬の食欲が急に低下した場合、脱水による全身状態の悪化が考えられます。特に、運動後や暑い環境での散歩後に食欲が低下した場合、脱水が原因である可能性が高く、注意が必要です。ストレスや他の要因でも全身状態の悪化が考えられるため、早めに獣医師に相談することが重要です。
3. 皮膚が乾燥している(弾力がない)
犬の皮膚は水分によって弾力が保たれており、脱水になるとその弾力が失われます。そのため、犬の背中の皮膚をつまんで離し、皮膚がすぐに戻らない場合は、脱水が進行している可能性があります。その他にも口の粘膜が乾燥していると脱水が疑われるので、早めに対処することが重要です。
4. 目がくぼんでいる
脱水が進行すると、皮膚の弾力が失われるだけでなく、目が落ちくぼむといった症状も現れることがあります。これらの変化は、体内の水分不足による影響を示す重要なサインです。愛犬にこのような症状が見られた場合は、早急に水分補給を行い、必要に応じて獣医師に相談しましょう。
5. 息が荒い
脱水による体内の水分不足は、臓器への血流を減少させ、内臓の機能低下を引き起こします。この影響で動悸や呼吸が早まり、息が荒くなることがあります。こうした症状が見られた場合、脱水が進行している可能性が高いため、早めに水分を補給し、必要に応じて獣医師に相談することが重要です。
6. 尿が少なく濃い
犬が脱水を起こすと、おしっこの量が減り、色が濃くなります。これは腎臓が水分を再吸収し、体内の水分を保とうとするためです。その結果、脱水状態の犬は、おしっこの量が少なくなり、濃い黄色になります。おしっこの量や色の変化は、脱水をはじめとする健康状態の重要なサインとなるので、普段から注意深く観察することが大切です。
犬の脱水症状の見分け方
犬の脱水は、気づかないうちに進行することがあります。重症化する前に、そのサインを飼い主さんが見つけてあげることが何よりも大切です。ここでは、脱水症状の見分け方を解説します。
1. 皮膚の状態を確認する
犬の皮膚は脱水状態になると弾力を失い、いつもよりも硬い感じになります。
こうした兆候が見られた場合、皮膚つまみ試験といって、皮膚の弾力性を確認する試験があります。背中の皮膚を少し摘んで確認して下さい。摘んだ皮膚が元の状態に戻るまで2秒以上かかる場合、脱水症状を起こしている可能性が高いです。
2. 水を飲む量が増えていないか確認する
脱水症状になると、水分不足を補おうとして飲水量が増えることがあります。
普段よりも水を欲しがる様子が見られた場合は注意が必要ですが、飲水量の増加だけで脱水と判断するのは難しいため、皮膚の弾力の低下、おしっこの量や色、鼻・舌・目の乾燥など、他の症状も併せて確認することが重要です。異変が見られた場合は、早めに獣医師に相談しましょう。
3. 体重の変化を見る
脱水症状により体内の水分が失われると、犬の体重に変化が現れます。特に、1日で急激に体重が減少した場合は、脱水の可能性が高いため注意が必要です。体重の変化に気づくためにも、普段から愛犬の体重を定期的に測定し、把握しておくことが大切です。
犬の脱水症状の原因
愛犬を脱水から守り、適切に対処するには、まず、なぜ脱水が起こるのか原因を知ることが大切です。ここでは、犬が脱水症状になる主な原因を解説します。
1. 水分摂取の不足
犬が脱水症状になる最もシンプルな原因が、体に入る水分が足りていない「水分摂取の不足」です。
犬は、人間のように「喉が渇いたから、意識して水を飲もう」という行動を、あまりしません。そのため、水飲み場が汚れていたり、場所が気に入らなかったりするだけで、簡単に水分不足になってしまうことがあります。
また、体調不良や口の中の痛みで、水を飲みたくても飲めない、というケースも。飼い主さんが意識的に水分補給を促してあげなければ、気づかぬうちに脱水が進行してしまうのです。
<犬が1日に必要な飲水量>
標準的な目安は、体重1kgあたり50~70ccが目安となります。
(例)
・3㎏の場合:150~210㏄
・5㎏の場合:250~350㏄
ただし、体重1㎏あたり100㏄以上の飲水が長期間続く場合は多飲と考えられます。この場合、一度動物病院の受診をおすすめします。
2. 体からの水分喪失
犬の脱水は、水を飲まないことだけでなく、体から水分が急激に失われることでも起こります。
代表的なのが、嘔吐や下痢です。これらは、体内の水分と、体の機能を調整する電解質を同時に大量に失ってしまうため、短時間で脱水症状を引き起こす危険なサインです。
また、犬が「ハァハァ」と呼吸するパンティングも、体温を下げるために、常に体内の水分を蒸発させています。この水分喪失が、水分摂取を上回った時に、脱水は進行します。
3. 病気による影響
特定の病気も脱水の直接的な原因となります。
例えば、腎臓病や糖尿病といった病気は、おしっこの量を異常に増やしてしまう(多尿)ことがあります。体が必要とする以上に水分が排出されてしまうため、水を飲んでいても、追いつかずに脱水状態に陥ってしまうのです。
この場合は、脱水の背景にある病気そのものの治療が不可欠となります。
犬の脱水症状が起こりやすいタイミング・ケース
犬の脱水症状は、夏場だけでなく、年間を通じて様々な状況で起こる可能性があります。以下で、具体的な状況をいくつか見ていきましょう。
夏の暑い日の散歩や、冬の乾燥した室内
最も注意が必要なのは夏の暑い日です。犬は汗をかけず、呼吸でしか体温を下げられないため、高温多湿の環境では、気づかぬうちに大量の水分を失います。
意外に見落としがちなのが冬場の乾燥した室内。暖房によって空気が乾燥し、犬が喉の渇きを感じにくくなることで、水分不足に陥ることがあります。
嘔吐や下痢といった、胃腸の不調があるとき
胃腸炎などで嘔吐や下痢が続くと、水分と電解質が急激に失われ、短時間で脱水症状に陥ります。
また、発熱している時も、呼吸が速くなることで、体から多くの水分が失われます。食欲がない時は、食事から摂れる水分も減るため、特に注意が必要です。
子犬や、高齢犬(シニア犬)
子犬は、体を構成する水分量が多く、体温調節機能も未熟なため、少しの体調不良でもすぐに脱水が重症化しやすい傾向にあります。
一方、高齢犬(シニア犬)は、喉の渇きを感じにくくなり、自ら水を飲む量が減ることがあります。また、腎機能が低下していることも多く、注意が必要です。
ドッグランなどでの激しい運動の後
ドッグランで走り回ったり、たくさん遊んだりした後は、季節を問わず多くの水分が失われます。犬は夢中になると、喉の渇きを忘れて遊び続けてしまうことも。
運動の合間や終わった後には、飼い主さんが意識的に水分補給をさせてあげることが大切です。
腎臓病や糖尿病などの持病がある場合
腎臓病や糖尿病、クッシング症候群といった病気は、おしっこの量が増える(多尿)という症状を伴うことが多く、体が必要とする以上に水分が排出されてしまうため、慢性的な脱水状態になりやすいです。持病のある子は、より一層こまめな水分管理が求められます。
脱水症状の応急処置
ここでは、脱水症状の応急処置を紹介します。
水やスポーツドリンクを与える
犬が脱水症状を起こした場合、自宅での応急処置として電解質を含む動物用経口補水液を与えることが効果的です。犬が自力で飲めない場合は、スポイトを使い、少しずつ口に入れて与えます。
もし補水液がない場合は、ポカリスエットなどのスポーツドリンクを3〜4倍に薄めて代用することも可能です。ただし糖分が多いため、薄めて使用する、常用は避け、必要に応じて獣医師に相談しましょう。
動物病院を受診する
脱水症状の原因によっては、速やかに動物病院での治療が必要な場合があります。特に、激しい下痢や嘔吐を伴う場合、水分を無理に与えると症状が悪化する恐れがあります。
また、呼吸が荒かったり、意識が低下してぐったりしている場合に無理に水分を与えると、窒息の危険があるため注意が必要です。脱水の兆候がみられた際は、早急に動物病院を受診してください。
【脱水症状を防ぐために】犬に水を飲んでもらうための工夫
犬は喉の渇きを感じにくく、自ら進んで水を飲まないこともあります。脱水を防ぐためには、飼い主さんが日頃から水分補給を促す工夫をすることが大切です。ここでは、愛犬に水を飲んでもらうための、具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 食事から水分を補給する
いつものドライフードに、ぬるま湯を加えてふやかしてあげるのは、最も手軽で効果的な方法です。フードが柔らかくなり食べやすくなるだけでなく、食事と同時に自然な形で水分を摂取できます。
また、ウェットフードは、そのものの約75%が水分です。ドライフードに少量トッピングするだけでも、水分補給量を大きく増やすことができます。
2. 水に風味を加えてみる
いつもの水に、ほんの少しだけ風味を加えてあげるのも、飲水を促す良い方法です。例えば、味付けをしていない鶏のささみの茹で汁や、犬用のヤギミルクを少量混ぜてみましょう。
犬の嗅覚を刺激し、美味しい飲み物として興味を持ってくれることがあります。ただし、カロリーの摂りすぎには注意してください。
3. 水飲み場を工夫する
犬によっては、水飲み場の場所や器にこだわりがあることも。人の行き来が激しい場所を避け、落ち着いて飲める静かな場所に設置してあげましょう。
また、特にシニア犬には、首への負担が少ないよう、台を使って器の高さを調整してあげるのも有効です。器の素材を変えたり、流れる水に興味を示す子には電動給水器を試したりするのも良いでしょう。
4. 水分豊富なおやつを与える
おやつタイムに、水分が豊富な食材を取り入れるのもおすすめです。例えば、きゅうりやスイカ(種と皮は除く)は、その90%以上が水分です。美味しく食べながら、自然に水分補給ができます。
ただし、あくまでおやつとして、与えすぎには注意し、1日の食事全体の10%未満に留めるようにしましょう。
まとめ
犬が陥りやすい脱水症状。愛犬を脱水から守るには、飼い主さんがサインに早く気づき、水分摂取を管理することが大切です。皮膚の弾力や歯茎の色をチェックし、いつでも新鮮な水が飲める環境を整えましょう。
あまり水を飲まない子には、食事から水分を補給できるウェットフードや、水分豊富な野菜を活用するのもおすすめです。日頃のケアで脱水を防ぎ、愛犬との健やかな毎日を送ってくださいね。

