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犬の貧血の原因・症状・食事・治療法を解説!

貧血=元気がない、ふらつく…といったイメージがあるかもしれませんが、犬の場合は見た目には分かりにくく、症状も様々です。「散歩に行きたがらない」「呼吸が荒い」などの症状が見られる場合、愛犬が貧血に陥っている可能性があるため、早めに原因を突き止め、適切な対処を行うようにしましょう。

この記事では、犬の貧血の基礎知識や原因、食事によるケア、治療法についてわかりやすく解説します。

犬の貧血とは?どんな病気?

貧血とは、血液中の赤血球や、そこに含まれるヘモグロビンの濃度が薄まった状態のことです。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っているため、貧血になると体中の細胞が酸素不足になり、臓器が正常に働かなくなってしまいます。

犬も人間同様に貧血になりますが、初期は無症状なことが多く、症状が現れた時にはすでに重症化しているケースも少なくありません。また、その背景には腫瘍や免疫疾患などの重篤な病気が隠れていることが多いため、早期発見が何よりも重要です。

犬が貧血になる原因

犬の貧血の原因は大きく分けて「出血」「溶血」「非再生」の3種類に分類されます。

1. 出血による貧血

血管から血液が失われることで起こる貧血です。交通事故やケガ、手術による大量出血など、体の外への出血は分かりやすいですが、注意が必要なのは見えない出血です。

胃潰瘍や腫瘍による消化管からの出血、寄生虫(鉤虫など)による吸血、さらには血管肉腫などの腫瘍が体内で破裂して起こる腹腔内出血なども原因となります。便が黒い場合は、消化管出血の可能性があります。

2. 溶血性貧血

溶血とは、赤血球が寿命を迎える前に破壊されてしまうことです。

代表的な原因として、タマネギやネギ類による中毒や、自分の免疫システムが誤って赤血球を攻撃してしまう「免疫介在性溶血性貧血(IMHA)」が挙げられます。

また、マダニが媒介するバベシア原虫の感染によっても赤血球が破壊されます。赤血球の中身が溶け出すため、尿の色が濃い赤や茶色になる「血色素尿」が見られるのが特徴です。

3. 再生不良性貧血

骨髄の機能が低下し、新しい赤血球が正常に作られなくなることで起こる貧血です。白血病やリンパ腫などの腫瘍が骨髄に転移する場合や、腎臓病が悪化して、エリスロポエチンという造血ホルモンが分泌されなくなる「腎性貧血」などがこれに当たります。

また、極端な偏食による鉄分やビタミンB12不足も原因になり得ますが、総合栄養食を食べている現代の犬では稀なケースです。

犬の貧血の症状

貧血が進行すると、体への酸素供給が不足し、様々なサインとなって現れます。日々の生活の中で、以下のチェック項目に当てはまるものがないか、注意深く観察しましょう。

  • 歯茎や舌の色が白っぽい:健康なピンク色が失われ、白く血の気がない色になります。
  • 呼吸が荒い、息切れしている:酸素不足を補うため、安静時でもハッハッと浅く速い呼吸をします。
  • 元気がない・疲れやすい:散歩に行きたがらない、すぐに座り込む、寝てばかりいる。
  • ふらつき・立ち上がれない:重度になると脳への酸素が不足し、ふらついたり倒れたりします。

赤や茶色のおしっこ(血色素尿):溶血性貧血やタマネギ中毒の場合、壊れた赤血球の色素が尿に出て、濃い赤色や茶色の尿が出ることがあります。

動物病院での貧血の検査

貧血の疑いがある場合、血液検査で赤血球数などの数値を測定し、貧血の程度を客観的に把握することから始まります。

しかし、数値だけでは「なぜ貧血になったのか」という根本原因までは特定できないことが多いため、顕微鏡による血液塗抹検査や、腫瘍・内臓出血を確認するレントゲン・エコー検査など、多角的な検査が必要になります。

動物病院での貧血の治療

貧血の治療は、原因となる病気を特定し、以下のような治療法を行います。人間のように、鉄分を摂れば治るという単純なものではありません。

  • 投薬治療:寄生虫なら駆虫薬、感染症なら抗生物質、免疫介在性貧血ならステロイド剤などの免疫抑制剤を使用します。
  • 外科手術:腫瘍からの出血や、消化管の潰瘍などが原因の場合は、手術による摘出や止血が必要です。
  • 輸血:重度の貧血で酸素不足が深刻な場合、命をつなぐために緊急的に輸血を行うこともあります。

犬の貧血に与えたい食事と栄養素

貧血原因が栄養不足や出血後の回復期である場合、食事による栄養補給が回復をサポートします。鉄分やビタミンB12、タンパク質など、造血に必要な栄養素を効率よく摂取できる食材を選びましょう。

ただし、病気(腎臓病など)によっては逆効果になることもあるため、必ず獣医師に相談の上で与えてください。

1. レバー・赤身肉

レバーには吸収率の良い動物性の「ヘム鉄」鉄分や、造血作用のあるビタミンB12の他に、ビタミンAも豊富です。

ただし、腎臓病が原因の貧血の場合、タンパク質やリンが豊富なレバーは、かえって腎臓に負担をかけてしまいます。ビタミンAは脂溶性で、水溶性ビタミンのように尿で排泄されることがなく、体内で蓄積されるため、摂りすぎには注意が必要です。

また、生のレバーには細菌や寄生虫がいる可能性があるので、加熱してから与えましょう。

牛肉などの赤身肉も鉄を豊富に含んでいます。レバーより脂質が少ないので脂肪分が気になる場合には赤身肉を選ぶと良いでしょう。

2. 鉄分の多い野菜

小松菜やブロッコリーなどの野菜には、植物性の「非ヘム鉄」が含まれています。非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率が低いですが、ビタミンCやタンパク質と一緒に摂取することで吸収率を高めることができます。

野菜は消化しにくい場合があるため、細かく刻んだり、柔らかく茹でたりして与えましょう。バランスの良い食事の一環として取り入れるのがおすすめです。

3. 海藻類

海苔やわかめなどの海藻類には、鉄分だけでなく、ミネラルやビタミンも豊富に含まれています。特に海苔には、赤血球の形成に必要な葉酸が含まれています。

ただし、犬は海藻類の消化が苦手なため、与えすぎると消化不良や下痢の原因になることがあります。細かく刻んでスープに混ぜるなど、消化しやすい工夫をして少量を与えるようにしましょう。乾燥海藻は水で戻すと膨らむため、量にも注意が必要です。

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4. 貝類

犬に与えても問題ない貝は、しじみ、あさり、はまぐり、ホタテの貝柱、牡蠣等です。中でも、しじみ、あさり、はまぐりは、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」どちらの鉄分も含みます。

ただし、生の貝の内臓には毒素が含まれているので、内臓は取り除き、加熱する必要があります。また、基本的に犬は体内に魚介類を消化できる消化酵素を持ち合わせていないので、与える時は消化しやすいよう細かく刻んで与えましょう。

5. 赤身の魚

赤身魚の赤い色素は鉄を含んだタンパク質「ミオグロビン」で、筋肉に酸素を貯蔵する働きをします。マグロやカツオが速いスピードで長距離を泳げるのは、このミオグロビンによって筋肉に多くの酸素を貯蔵できるからです。

また、鉄分は血合い部分に特に多く含まれています。そのため、全体の2割程度が血合い肉であるマイワシやサンマは鉄分補給に特におすすめです。

6. ドッグフード

手作り食で栄養バランスを整えるのが難しい場合は、栄養バランスの整ったドッグフードを活用しましょう。貧血の回復には、鉄分だけでなく、タンパク質やビタミンなど多くの栄養素が必要です。

総合栄養食や、術後・回復期用の療法食など、愛犬の状態に合った高栄養なフードを選ぶことで、効率的に栄養を補給できます。獣医師と相談し、最適なフードを選びましょう。

★おすすめのドッグフード

・栄養回復用療法食 GAN+
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・7歳までの総合栄養食 長寿用
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・8歳からの総合栄養食 シニア用
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7. サプリメント

鉄欠乏性貧血の時には、不足した鉄分や、食事だけでは足りない栄養素の補給にサプリメントも有効です。

タンパク質は、体内でアミノ酸に分解されてから吸収されるので、タンパク質の制限が必要な疾患がある場合、高タンパクなフードは内臓に負担がかかります。

そのような時は、タンパク質を内臓へ負担のかからない「アミノ酸」という形で取り入れましょう。

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・和漢ペットサプリSenior【over8】
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貧血の犬の生活環境の整え方

貧血の犬は、酸素不足により少し動くだけでも息切れしやすく、非常に疲れやすい状態にあります。そのため、生活環境を見直し、愛犬が穏やかに過ごせるよう配慮することが大切です。

まず、激しい運動や長時間の散歩は控え、ケージやベッドでゆっくり休める静かなスペースを確保しましょう。

また、貧血時は体温調節が難しくなることがあるため、室温を適温に保ち、冬場は特に保温に気を配ってください。トイレや水飲み場を寝床の近くに設置し、移動の負担を減らす工夫も有効です。日々の呼吸状態や粘膜の色を観察し、少しでも変化があれば獣医師に相談できるように準備を整えておきましょう。

まとめ

愛犬が貧血と診断されたら不安になりますが、正しい知識とケアで支えてあげることが回復への近道です。 原因に応じた治療はもちろん、鉄分を含む食材を取り入れた食事や、安静に過ごせる環境づくりなど、飼い主さんができることはたくさんあります。

食事やサプリメントは獣医師と相談しながら取り入れ、愛犬が一日も早く元気を取り戻せるよう、焦らずサポートしていきましょう。