皮膚病・アレルギー

犬の皮膚にかさぶたができる原因とは?病気の可能性や対処法

愛犬の体を撫でているとき、ふと指先にザラッとした感触があり、かさぶたがある…。

「どこかケガをしたのかな?」「でも、ケガした心当たりがない、他に原因があるのでは?」と不安になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

愛犬の皮膚にできるかさぶたは、単なる擦り傷が治る過程であることもあれば、治療が必要な皮膚病や腫瘍が隠れていることがあります。

この記事では、かさぶたができる原因や考えられる病気、その対処法について紹介します。

犬のかさぶたの原因

犬の体にみられるかさぶたは、皮膚が何らかのダメージを受け、そこを修復する過程で作られるものです。考えられる原因は、単純なケガから治療が必要な病気など様々です。ここでは、犬のかさぶたの原因を3つ紹介します。

外傷による怪我

散歩中に草木で皮膚をすってしまったり、他の犬との遊びやケンカで咬み傷ができたりと、物理的な外傷は、かさぶたの最も分かりやすい原因です。

傷口から出た血が固まり、かさぶたとなって、その下の皮膚が再生するのを守ります。浅いすり傷であれば、犬が舐めたりしない限り、数日〜1週間ほどで自然に治り、かさぶたも剥がれ落ちることがほとんどです。

ただし、以下のようなケガの場合は、家庭での処置だけでは危険です。細菌感染などを防ぎ、きれいに治すためにも、動物病院を受診しましょう。

  • 他の犬や動物による咬み傷
  • 傷が深く、皮膚が裂けている
  • 出血がなかなか止まらない
  • 傷の周りが、赤く腫れて熱を持っている、あるいは膿が出ている

皮膚病

かさぶたが、一つだけでなく、広範囲に、あるいは繰り返しできる場合、その多くは強いかゆみを伴う皮膚病が根本的な原因です。

たとえば、アレルギー性皮膚炎やノミ・ダニなどの寄生虫、あるいは細菌・真菌による皮膚感染症など、強いかゆみを引き起こす病気は数多くあります。

犬は、その耐えがたいかゆみから逃れるために、自分の爪や歯で皮膚を激しく掻きむしり、傷つけてしまいます。この掻き壊しによってできた傷が出血し、かさぶたとなるのです。

この場合、かさぶたはあくまで結果にすぎません。かゆみの根本原因となっている皮膚病そのものを治療しない限り、犬は体を掻き続け、かさぶたは次々とできてしまうため、動物病院で診断と治療を受けることが大切です。

犬のかさぶたの色と状態でわかる原因・病気

かさぶたの色や、できている場所、その状態をよく観察することで、原因をある程度推測する手がかりになります。ただし、あくまで推測であるため、最終的な診断は、必ず動物病院で獣医師にしてもらってください。

1. 黒いゴツゴツしたかさぶた

高齢の犬の背中や頭によく見られる、黒っぽく、イボのようにゴツゴツ・ザラザラしたかさぶたは、良性の「皮脂腺腫」であることが多いです。

しかし、ごく稀に、悪性度の高い「悪性黒色腫(メラノーマ)」が、黒い塊や、治りにくいかさぶたとして現れることもあり、注意が必要です。

2. 黄色いベタベタしたかさぶた

黄色っぽいフケが、皮膚にこびりついたようなベタベタしたかさぶたは、「脂漏症」や、それが原因で細菌・マラセチアが増殖した「二次的な皮膚感染症」の可能性があります。独特の脂っぽい臭いを伴うこともあります。

3. 赤みや出血を伴うかさぶた

かさぶたの周りの皮膚が赤い、あるいは簡単に出血する、といった場合は、アレルギーや寄生虫(疥癬など)による、強いかゆみが原因で、犬自身が掻き壊してしまっている可能性が高いです。

傷口から細菌が入り、「膿皮症」に発展していることも少なくありません。

4. 全身に広がるフケのようなかさぶた

細かい白い粉のようなフケのようなかさぶたが全身に広がっている場合、単なる乾燥だけでなく、アトピー性皮膚炎や甲状腺機能低下症といったホルモンの病気、あるいは皮膚糸状菌症(カビ)など、体質や全身性の病気が隠れている可能性があります。

犬にかさぶたができた時に考えられる6つの病気

ここでは、かさぶたの原因として考えられる6つの病気について紹介します。

1. 脂漏症(マラセチア皮膚炎)

脂漏症は、皮膚が脂っぽくベタついたり、フケが多く出たりする病気です。

もともと皮脂が過剰なタイプと、皮脂が不足して乾燥することで皮脂が過剰に分泌されるタイプがあります。どちらのタイプでも、フケやかさぶたの剥がれ、毛の根元のかさぶた化などの症状が現れることがあります。

脂漏症のある犬は、皮膚の常在菌であるマラセチアが異常繁殖する「マラセチア皮膚炎」を引き起こすことも多く、慢性化すると、皮膚が黒くなったり、皮膚が肥厚することもあります。

2. 表在性膿皮症

表在性膿皮症は、主に毛穴 (毛包)を中心に皮膚の中で細菌が増殖し、炎症を起こす皮膚病です。

原因となる細菌は本来病原性の強いものではなく、皮膚のバリア機能が健康であれば、これらの細菌が問題を起こすことはありませんが、皮膚のバリア機能が低下すると発症しやすくなります。

症状は、初期には毛穴と一致した赤い小さな皮膚の隆起や黄色い膿が入った小さな隆起、広がると円形に脱毛し周囲が赤くなる症状やかさぶたのようなできものが見られます。

3. 皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症は、皮膚の角質を特に好む、糸状菌という真菌による皮膚炎です。
最初に感染したところから円形に脱毛し、赤くなる症状が典型的で、フケやかさぶたもよく見られます。

範囲が広がると他の皮膚炎と肉眼的に区別するのが難しくなることがあり、同時に他の細菌感染を起こすこともあります。 人間では水虫に代表される「白癬菌」もこの菌の仲間ですが、犬に多くみられる種類と全く同じものではありません。
一般的には内用薬、外用薬、抗真菌薬の入った薬用シャンプーにより治療をします。

4. ニキビダニ症(毛包虫症)

ニキビダニ症(毛包虫症)は、ニキビダニと呼ばれる寄生虫による皮膚病です。

感染は生後間もなく、母犬から子犬から感染することが多いといわれ、成長後の犬同士で感染することはありません。

免疫力の低下など、何らかの原因により共生関係が崩れると、ニキビダニが異常に増殖し皮膚症状を起こします。ニキビダニそのものは痒みを起こしませんが、細菌感染などを起こすと痒みが生じ、脱毛 発赤、皮膚の腫れなどが現れ、かさぶたが出来ることがあります。

5. 疥癬(かいせん)

ヒゼンダニという、目に見えないほど小さなダニが皮膚に寄生して起こる病気です。

犬が眠れないほどの、非常に激しいかゆみを伴うのが特徴で、耳のふちや肘、かかとなどに、分厚く、フケを伴うかさぶたができます。人や他の動物にもうつるため、注意が必要です。

6. アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、主に遺伝的な要因が強いと言われています。

激しいかゆみが特徴的で、人間のみならず犬にも発症します。強いかゆみによって皮膚を傷つけるほど掻きむしってしまうと、患部が赤く腫れ、炎症やかさぶたを引き起こします。

呼吸によってほこり、カビ、花粉などのアレルゲンを体内に取り込んだり、皮膚の保護機能が低下することで、アレルギー症状が現れることも少なくありません。

7. アレルギー性皮膚炎

アレルギー性皮膚炎は、体内にあるアレルゲンに感染して生じる皮膚炎で、いくつかの種類があります。症状は、痒み、かさぶた等の皮膚症状だけではなく、下痢などの消化器症状が現れることもあります。

【アレルギー性皮膚炎の種類】
●食餌性   ・・・ 食餌がアレルゲンになり、発症するもの
●接触性   ・・・ アレルゲンと接触することで発症するもの
●アトピー性 ・・・ アレルゲンとなる物質の吸引で発症するもの

腫瘍が原因でかさぶたができている場合も

腫瘍(できもの)が原因で、犬にかさぶたができるケースがあります。皮膚の炎症や損傷によって、表面が破れ、出血や浸出液がたまることで、かさぶたができることがあります。

扁平上皮癌や皮膚リンパ腫など、皮膚にできる腫瘍の場合、他の皮膚疾患と区別することが難しい場合もあります。しかし、しこりが日に日に大きくなる場合は、悪性の可能性があります。しこりを見つけたら、大きさに関わらず早めに動物病院を受診しましょう。

犬にかさぶたが見られる際の対処法

犬のかさぶたは、基本的に人間のかさぶたと同じです。かさぶたは、傷ついた皮膚を覆い、内部で皮膚の再生を促します。傷を早く治すためにも、無理に剝がさないことが大切です。

■無理に剝がさない
小さなケガなどが原因でできた「かさぶた」は、放置するのが最善の治療法です。

犬の体にかさぶたを見つけても無理に剥がしたり、人間用の薬を塗るのはやめ、自然に剥がれ落ちるまで待ちましょう。かさぶたを無理に剥がすと、傷口が露出し、出血や細菌感染のリスクが高まります。

また、人間用の薬は犬への使用が想定されていないため、犬が舐めた場合、体調不良やアレルギー症状を引き起こす可能性があります。

■舐めたり掻いたりさせない
犬はかさぶたの違和感からどうしても患部を舐めたり、後ろ足で掻いたりしてしまいます。

しかし、犬の口内は細菌が多く、舐めることで傷口が化膿するリスクがあります。

また、爪で掻き壊せば、さらに深い傷になりかねません。エリザベスカラーや保護服、あるいは足先の保護ソックスなどを活用し、物理的に患部を守ってあげることが重要です。

 ■シャンプーや強い刺激を避ける
瘡蓋ができている間は、シャンプーを控えましょう。皮膚が濡れてふやけると、かさぶたが剥がれやすくなってしまいます。

また、シャンプー剤の成分が治りかけのデリケートな皮膚への刺激となることも。同様の理由で、洋服の摩擦なども刺激となるため、患部がこすれない、ゆったりした服などを選びましょう。

■良くならない場合は、動物病院を受診する
かさぶたが数日間治らず、大きくなったり、痛みや脱毛、フケなどの症状が見られたりする場合は、動物病院を受診しましょう。

《動物病院を受診する際》
①かさぶたがいつから出来ているか
②かさぶたの原因
③かさぶたの大きさに変化があるか

などを事前にメモしておきましょう。
※かさぶたの状態がどのように変化していくかを写真に記録しておくと、獣医師による診断に役立ちます。

犬のかさぶたを繰り返さないための予防法

日々のケアで、かさぶたができにくい健康な皮膚を育んであげることが大切です。ここでは、犬のかさぶたの原因となる皮膚トラブルを防ぐための方法を紹介します。

ノミ・ダニなど外部寄生虫の予防を徹底する

激しいかゆみを引き起こすノミやダニは、掻き壊しによるかさぶたの原因です。ノミやダニを防ぐためにも、動物病院で処方される予防薬を、毎月、年間を通じて正しく投与しましょう。

また、こまめに掃除機をかけ、愛犬のベッドやタオルは、定期的に熱いお湯で洗濯するなど、生活環境を清潔に保つことも重要です。

定期的なブラッシングと保湿で皮膚を健康に保つ

ブラッシングを行うことで、抜け毛や汚れを取り除いて皮膚の通気性を保ち、皮膚炎の温床となるムレを防ぎます。皮膚の赤みやできものを早期発見することにもつながるので、ブラッシングは定期的に行う習慣をつけましょう。

また、シャンプー後や乾燥が気になる時には、犬用の保湿剤で皮膚のバリア機能を補ってあげましょう。

バランスの取れた食事で、内側から皮膚を強くする

皮膚のバリア機能を支える必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6など)や、皮膚の新陳代謝を助ける亜鉛、ビタミン類がバランス良く含まれた、質の高い総合栄養食を与えましょう。

もし、特定の食物アレルギーが原因で皮膚を掻いている場合は、獣医師の指導のもと、アレルゲンを含まないフードに切り替える必要があります。

ストレスの少ない生活環境を整える

精神的なストレスは、体を執拗に舐めたり掻いたりする常同行動を引き起こし、皮膚炎の原因となることがあります。毎日の散歩や遊びの時間を十分に確保し、エネルギーを発散させてあげましょう。

また、雷や来客の際に隠れられる、静かで安心できる自分だけの場所を用意してあげることも、心の安定に繋がり、ストレス性の皮膚トラブルを減らす助けになります。

犬もストレスを抱える?飼い主が気付けるサインや解消法をご紹介

皮膚疾患及び腫瘍対策の療法食とサプリメント

かさぶたの原因となる脂漏症、膿皮症、真菌症、アトピーやアレルギー性皮膚炎などの疾患による、 皮膚の炎症を鎮め、体の中の不要なもののデトックスを促していくドッグフードとサプリメント、かさぶたの原因の腫瘍に対応したドッグフードとサプリメント

犬の皮膚のかさぶたに関してよくある質問

最後に、犬の皮膚のかさぶたに関するよくある質問に答えていきます。

犬のかさぶたは自然に治りますか?

単なるすり傷など、原因が軽度であれば、犬が患部を気にしない限り、自然に治って剥がれ落ちます。しかし、1〜2週間経っても治らない、大きくなる、数が増えるなどの場合は、病気が隠れている可能性があるため、動物病院を受信しましょう。

人間や他の犬にうつりますか?

ヒゼンダニによる疥癬やカビの一種である皮膚系糸状菌症が原因の場合は、他の犬や人間にもうつる可能性があります。多頭飼いの場合は、診断結果がわかるまで接触を避け、触った後はよく手を洗うようにしましょう。

犬のかさぶたにワセリンなどを塗ってもいいですか?

自己判断で何かを塗るのはやめましょう。ワセリンは皮膚を保護しますが、かえって毛穴を塞ぎ、細菌の増殖を促すことがあります。また、犬が舐めてしまうリスクも。

まとめ

かさぶたには様々な原因があり、ただの怪我ではないかもしれません。

かさぶたがいつ、どのようにできたのか?他の症状はないか?繰り返しできているか?など、かさぶたの状況を多角的に把握することが大切です。

愛犬の体にかさぶたを見つけたら、無理に剥がさず、早めに動物病院を受診することをおすすめします。皮膚病や腫瘍は、早く検査をすることで愛犬に苦しい思いをさせずに済むこともあります。かさぶたは放置せず、治るまで毎日注意深く観察しましょう。

特に被毛の長い犬は、かさぶたに気付きにくいため、こまめにブラッシングやシャンプーなどのお手入れをしながら、しっかりとチェックするようにしましょう。