Contents
愛犬の体を撫でているとき、ふと指先にザラッとした感触があり、毛をかき分けてみると「かさぶた」ができている…。
「どこかで怪我をしたのかな?」「でも、ぶつけた心当たりがないし、皮膚病かも?」と不安になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。飼い主さんの中には、「取ってしまいたい」と感じる方も多いですが、自己判断での処置はかえって悪化させる原因になります。
犬のかさぶたには、怪我から感染症、アレルギー、稀に腫瘍まで様々な原因があり、それぞれに適した対処法があります。この記事では、犬のかさぶたの原因となる主な疾患と、正しいホームケア、動物病院を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。
犬の皮膚のかさぶたを剥がすのはNG|まずできる自己対処と受診の目安
愛犬にかさぶたを見つけたとき、一番やってはいけないことは「無理に剥がすこと」です。かさぶたは、傷ついた皮膚を保護し、下で新しい皮膚が再生するのを助ける天然の絆創膏です。気になって剥がしてしまうと、傷口が再び開き、出血や細菌感染を引き起こして治癒が遅れてしまいます。
まずは慌てずに、以下の流れに従って対処しましょう。
まずは観察と保護
まずは患部を清潔に保つことが大切ですが、ゴシゴシ洗うのは避けてください。また、犬が気にして舐めたり掻いたりしないよう、エリザベスカラーや洋服を活用して物理的に保護します。この時、かさぶたの大きさや数を記録し、可能であれば写真を撮っておくと後の診断に役立ちます。
数日〜1週間様子を見る
保護した状態で、数日から1週間ほど様子を見ましょう。かさぶたが乾燥して小さくなり、自然に剥がれ落ちてきれいな皮膚が見えてくれば問題ありません。もし変化がなかったり、逆にじゅくじゅくしてきたりする場合は注意が必要です。変化がない、またはじゅくじゅくしている場合は要注意です。
以下の症状がある場合は早期受診
以下の症状が見られる場合、単なる擦り傷ではなく、細菌感染や寄生虫、アレルギー、あるいは腫瘍といった治療が必要な病気が原因である可能性が高いです。ホームケアだけで治そうとせず、早めに獣医師の診察を受けてください。
- かゆみが強い(頻繁に体を掻く、噛む、こすりつける)
- 範囲が広がっている(かさぶたの数が増えた、脱毛している)
- 異臭や膿がある(独特の脂っぽい臭いや、黄色い汁が出ている)
- かさぶたの下にしこりがある
- 元気や食欲がない
犬のかさぶたの原因
犬の体にみられるかさぶたは、皮膚が何らかのダメージを受け、そこを修復する過程で作られるものです。考えられる原因は、単純なケガから治療が必要な病気など様々です。ここでは、犬のかさぶたの原因を3つ紹介します。
外傷による怪我
散歩中に草木で皮膚をすってしまったり、他の犬との遊びやケンカで咬み傷ができたりと、物理的な外傷は、かさぶたの最も分かりやすい原因です。
傷口から出た血が固まり、かさぶたとなって、その下の皮膚が再生するのを守ります。浅いすり傷であれば、犬が舐めたりしない限り、数日〜1週間ほどで自然に治り、かさぶたも剥がれ落ちることがほとんどです。
ただし、以下のようなケガの場合は、家庭での処置だけでは危険です。細菌感染などを防ぎ、きれいに治すためにも、動物病院を受診しましょう。
- 他の犬や動物による咬み傷
- 傷が深く、皮膚が裂けている
- 出血がなかなか止まらない
- 傷の周りが、赤く腫れて熱を持っている、あるいは膿が出ている
皮膚病
かさぶたが「一つだけでなく広範囲にある」「繰り返しできる」場合、その多くは皮膚病が根本的な原因です。
- 細菌・真菌感染:膿皮症やマラセチア、皮膚糸状菌症など、菌が増殖して炎症を起こします。
- 寄生虫:ノミ・ダニや疥癬(ヒゼンダニ)などが寄生し、激しいかゆみを引き起こします。
- アレルギー:アトピーや食物アレルギーによるかゆみで、犬自身が皮膚を掻き壊してしまいます。
この場合、かさぶたは結果にすぎません。かゆみの根本原因となっている皮膚病そのものを治療しない限り、犬は体を掻き続け、かさぶたは次々とできてしまいます。
腫瘍
一見かさぶたのように見えても、実は皮膚がんなどの腫瘍であるケースがあります。腫瘍の表面が自壊して出血し、かさぶたができている状態です。「何度剥がれてもまた同じ場所にかさぶたができる」「下にしこりがある」といった場合は、良性・悪性を問わず腫瘍の疑いがあるため、早急な検査が必要です。
【色・状態別】犬のかさぶたの特徴でわかる病気
かさぶたの色や、できている場所、その状態をよく観察することで、原因をある程度推測する手がかりになります。ただし、あくまで推測であるため、最終的な診断は、必ず動物病院で獣医師にしてもらってください。
1. 黒いゴツゴツしたかさぶた
可能性:老人性イボ(皮脂腺腫)、悪性黒色腫(メラノーマ)、角化症
高齢犬の背中や頭によく見られる、黒っぽくイボのようにゴツゴツしたものは、良性の腫瘍や老化現象であることが多いです。しかし、ごく稀に悪性度の高い「メラノーマ」が黒い塊として現れることがあります。「急に大きくなる」「出血しやすい」「周りが赤い」場合は要注意です。
2. 黄色いベタベタしたかさぶた
可能性:膿皮症、脂漏症
黄色い膿が固まったものや、過剰な皮脂とフケが固まったものです。皮膚がベタつき、独特の脂っぽい臭いを伴うことが多いです。細菌やマラセチア酵母が増殖しているサインであり、抗生物質や薬用シャンプーによる治療が必要です。
3. 赤みや出血を伴うかさぶた
可能性:アレルギー性皮膚炎、疥癬、外傷
かさぶたの周りの皮膚が赤く腫れている場合は、現在進行形で強い炎症が起きています。激しいかゆみを伴うことが多く、犬が掻き壊してしまうことで出血し、治りが遅くなります。
4. 全身に広がるフケのようなかさぶた
可能性:皮膚糸状菌症(カビ)、疥癬、魚鱗癬
細かい白い粉のようなかさぶたやフケが全身に広がっている場合、カビ(真菌)やダニの感染、あるいは皮膚のターンオーバー異常が疑われます。これらは人や他の犬にうつる感染症の可能性があるため、早めの受診と隔離が必要です。
犬のかさぶたの原因となる病気
ここでは、かさぶたの原因として考えられる6つの病気について紹介します。
1. 脂漏症(マラセチア皮膚炎)
脂漏症は、皮脂の分泌異常により、皮膚が脂っぽくベタついたり、乾燥して大量のフケが出たりする病気です。過剰な皮脂を餌にして、皮膚の常在菌である「マラセチア酵母」が増殖すると、強い赤みとかゆみ、独特の発酵臭を伴うようになります。
慢性化すると皮膚が黒く、分厚く苔癬化し、治りにくいかさぶたを作ります。シーズーやコッカースパニエルなどに多い病気です。
2. 膿皮症
膿皮症は、主に毛穴を中心に皮膚の中で細菌が増殖し、炎症を起こす皮膚病です。
原因となる細菌は本来病原性の強いものではなく、皮膚のバリア機能が健康であれば、これらの細菌が問題を起こすことはありませんが、皮膚のバリア機能が低下すると発症しやすくなります。
症状は、初期には毛穴と一致した赤い小さな皮膚の隆起や黄色い膿が入った小さな隆起、広がると円形に脱毛し周囲が赤くなる症状やかさぶたのようなできものが見られます。
3. 皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症は、皮膚の角質を特に好む、糸状菌という真菌による皮膚炎です。
最初に感染したところから円形に脱毛し、赤くなる症状が典型的で、フケやかさぶたもよく見られます。
範囲が広がると他の皮膚炎と肉眼的に区別するのが難しくなることがあり、同時に他の細菌感染を起こすこともあります。人間では水虫に代表される「白癬菌」もこの菌の仲間ですが、犬に多くみられる種類と全く同じものではありません。
一般的には内用薬、外用薬、抗真菌薬の入った薬用シャンプーにより治療をします。
4. ニキビダニ症(毛包虫症)
ニキビダニ症(毛包虫症)は、ニキビダニと呼ばれる寄生虫による皮膚病です。
感染は生後間もなく、母犬から子犬から感染することが多いといわれ、成長後の犬同士で感染することはありません。
免疫力の低下など、何らかの原因により共生関係が崩れると、ニキビダニが異常に増殖し皮膚症状を起こします。ニキビダニそのものは痒みを起こしませんが、細菌感染などを起こすと痒みが生じ、脱毛や炎症、皮膚の腫れなどが現れ、かさぶたが出来ることがあります。
5. 疥癬(かいせん)
疥癬は、ヒゼンダニという、目に見えないほど小さなダニが皮膚に寄生して起こる病気です。
犬が眠れないほどの、非常に激しいかゆみを伴うのが特徴で、耳のふちや肘、かかとなどに、分厚く、フケを伴うかさぶたができます。人や他の動物にもうつるため、注意が必要です。
6. アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、主に遺伝的な要因が強いと言われています。
激しいかゆみが特徴的で、人間のみならず犬にも発症します。強いかゆみによって皮膚を傷つけるほど掻きむしってしまうと、患部が赤く腫れ、炎症やかさぶたを引き起こします。
呼吸によってほこり、カビ、花粉などのアレルゲンを体内に取り込んだり、皮膚の保護機能が低下することで、アレルギー症状が現れることも少なくありません。
7. アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎は、体内にあるアレルゲンに感染して生じる皮膚炎で、いくつかの種類があります。症状は、痒み、かさぶた等の皮膚症状だけではなく、下痢などの消化器症状が現れることもあります。
【アレルギー性皮膚炎の種類】
●食餌性 ・・・ 食餌がアレルゲンになり、発症するもの
●接触性 ・・・ アレルゲンと接触することで発症するもの
●アトピー性 ・・・ アレルゲンとなる物質の吸引で発症するもの
犬にかさぶたが見られる際の正しい対処法とNG行動
かさぶたを見つけた時、良かれと思ってやったことが逆効果になることもあります。正しい対処法を知っておきましょう。
NG:無理に剥がす・人間用の薬を塗る
小さなかさぶたでも、無理に剥がすと傷口が広がり、細菌が入り込んで化膿するリスクが高まります。
また、「オロナイン」や「マキロン」、「ワセリン」などの人間用の薬や保湿剤を自己判断で塗るのもやめましょう。犬が舐めて下痢をしたり、成分が合わずに炎症が悪化したりすることがあります。特にワセリンは、膿皮症などの感染症がある場合に塗ると、菌を閉じ込めて悪化させる原因になります。
OK:舐めさせないにする
犬は違和感から患部を舐めようとしますが、犬の口内には雑菌が多く、傷の治りを遅らせます。エリザベスカラー、皮膚保護服、靴下などを活用し、物理的に舐めたり掻いたりできないようにしましょう。
OK:足の爪を短く切り、ヤスリをかける
かさぶたがある時、犬は違和感やかゆみから、どうしても患部を後ろ足で掻いてしまうことがあります。この時、爪が伸びていたり尖っていたりすると、一掻きで皮膚が裂け、傷が深くなってしまいます。
エリザベスカラーをしていても、届く範囲を掻いてしまうため注意が必要です。爪はこまめに短く切り、断面をヤスリで滑らかにしておくことで、万が一掻いてしまっても皮膚への物理的なダメージを抑えられます。
OK:シャンプーは優しくまたは控える
かさぶたの原因が汚れや軽度の脂漏症であれば、シャンプーで清潔にすることは有効です。しかし、傷口がジュクジュクしている場合や、痛がっている場合は、シャンプー剤が刺激になるため控えてください。洗う場合は、低刺激のシャンプーを使い、ゴシゴシ擦らず泡で包み込むように洗いましょう。
OK:ベッドやタオルを洗濯し、清潔を保つ
かさぶたの原因が「ノミ・ダニ」や「細菌感染」の場合、犬自身の治療だけでなく、生活環境のケアも重要です。愛犬が普段寝ているベッドやタオルが汚れていると、そこが雑菌の温床となり、治りかけの皮膚に再感染して症状を長引かせてしまいます。
皮膚に触れる布製品はこまめに洗濯し、天日干しや乾燥機で熱を加えて殺菌しましょう。
犬のかさぶたを繰り返さないための予防法
日々のケアで、かさぶたができにくい健康な皮膚を育んであげることが大切です。ここでは、犬のかさぶたの原因となる皮膚トラブルを防ぐための方法を紹介します。
ノミ・ダニなど外部寄生虫の予防を徹底する
激しいかゆみを引き起こすノミやダニは、掻き壊しによるかさぶたの原因です。ノミやダニを防ぐためにも、動物病院で処方される予防薬を、毎月、年間を通じて正しく投与しましょう。
また、こまめに掃除機をかけ、愛犬のベッドやタオルは、定期的に熱いお湯で洗濯するなど、生活環境を清潔に保つことも重要です。
定期的なブラッシングと保湿で皮膚を健康に保つ
ブラッシングを行うことで、抜け毛や汚れを取り除いて皮膚の通気性を保ち、皮膚炎の温床となるムレを防ぎます。皮膚の赤みやできものを早期発見することにもつながるので、ブラッシングは定期的に行う習慣をつけましょう。
また、シャンプー後や乾燥が気になる時には、犬用の保湿剤で皮膚のバリア機能を補ってあげましょう。
バランスの取れた食事で、内側から皮膚を強くする
皮膚のバリア機能を支える必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6など)や、皮膚の新陳代謝を助ける亜鉛、ビタミン類がバランス良く含まれた、質の高い総合栄養食を与えましょう。
もし、特定の食物アレルギーが原因で皮膚を掻いている場合は、獣医師の指導のもと、アレルゲンを含まないフードに切り替える必要があります。
ストレスの少ない生活環境を整える
精神的なストレスは、体を執拗に舐めたり掻いたりする常同行動を引き起こし、皮膚炎の原因となることがあります。毎日の散歩や遊びの時間を十分に確保し、エネルギーを発散させてあげましょう。
また、雷や来客の際に隠れられる、静かで安心できる自分だけの場所を用意してあげることも、心の安定に繋がり、ストレス性の皮膚トラブルを減らす助けになります。
皮膚疾患及び腫瘍対策の療法食とサプリメント
かさぶたの原因となる脂漏症、膿皮症、真菌症、アトピーやアレルギー性皮膚炎などの疾患による、皮膚の炎症を鎮め、体の中の不要なもののデトックスを促していくドッグフードとサプリメント、かさぶたの原因の腫瘍に対応したドッグフードとサプリメント
皮膚のかさぶたの原因対応別オススメフードとサプリはこちら
◆和漢みらいのドッグフード 特別療法食(皮ふ・アレルギー)
◆和漢みらいのドッグフード 特別療法食 (栄養回復(G・A・N+))
◆和漢ペットサプリ アレルプラス
◆スーパーハナビラタケパウダー
犬の皮膚のかさぶたに関してよくある質問
最後に、犬の皮膚のかさぶたに関するよくある質問に答えていきます。
犬のかさぶたは自然に治りますか?
単なるすり傷など、原因が軽度であれば、犬が患部を気にしない限り、自然に治って剥がれ落ちます。しかし、1〜2週間経っても治らない、大きくなる、数が増えるなどの場合は、病気が隠れている可能性があるため、動物病院を受診しましょう。
人間や他の犬にうつりますか?
ヒゼンダニによる疥癬やカビの一種である皮膚系糸状菌症が原因の場合は、他の犬や人間にもうつる可能性があります。多頭飼いの場合は、診断結果がわかるまで接触を避け、触った後はよく手を洗うようにしましょう。
犬のかさぶたにワセリンなどを塗ってもいいですか?
自己判断で何かを塗るのはやめましょう。ワセリンは皮膚を保護しますが、かえって毛穴を塞ぎ、細菌の増殖を促すことがあります。また、犬が舐めてしまうリスクも。
かさぶたから変な臭いがするのはなぜですか?
細菌やカビが繁殖しているサインです。単なる怪我のかさぶたは無臭ですが、「膿皮症」や「脂漏症」が原因の場合、独特の脂っぽい臭いや、膿の臭いがします。臭いは皮膚バリアが崩れている証拠なので、シャンプーで誤魔化さず、早めに治療を受ける必要があります。
かさぶたが取れた後、毛は生えてきますか?
多くの場合は生えてきますが、時間がかかることもあります。炎症が治まれば、通常は元通りに毛が生えてきます。しかし、傷が深くて毛根が死んでしまった場合や、甲状腺機能低下症などのホルモン異常が背景にある場合は、その部分だけ毛が生えてこないこともあります。
まとめ
犬のかさぶたは、単なる怪我の跡であることもあれば、アレルギー、感染症、寄生虫、腫瘍など、様々な病気のサインである可能性もあります。たかが「かさぶた」と放置せず、以下のポイントをチェックしてください。
- かゆみはあるか?
- 色や状態はどうか?(黒い、ベタベタ、フケっぽい)
- 広がっていないか?
愛犬の体にかさぶたを見つけたら、無理に剥がさず、早めに動物病院を受診することをおすすめします。皮膚病や腫瘍は、早く検査をすることで愛犬に苦しい思いをさせずに済むこともあります。かさぶたは放置せず、治るまで毎日注意深く観察しましょう。
特に被毛の長い犬は、かさぶたに気付きにくいため、こまめにブラッシングやシャンプーなどのお手入れをしながら、しっかりとチェックするようにしましょう。
























