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愛犬の飲む水の量が急に増えたり、食欲がなく元気がない様子が見られたりすると、「何か病気なのでは…」と、とても心配になりますよね。犬の腎不全は、特にシニア犬に多く見られる、飼い主として知っておくべき深刻な病気の一つです。
本記事では、腎不全とはどのような病気なのか、その種類や症状、原因、そして治療法について詳しく解説します。愛犬の健康を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
犬の腎不全とはどんな病気?治る?
犬の腎不全は、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分を適切に排出できなくなる状態のことです。腎臓は血液をろ過して尿を作り、体内の毒素を排出する重要な臓器です。この働きが損なわれると、体全体の健康に影響を及ぼします。
腎不全の種類
腎不全には、大きく分けて急性腎不全と慢性腎不全の2種類があります。それぞれ発症の仕方や進行の速度、治療方法が異なります。以下でそれぞれの特徴について詳しく解説します。
急性腎不全
急性腎不全とは、数時間から数日という短期間で、腎機能が急激に悪化する状態です。中毒物質の摂取や感染症、重度の脱水などが原因となります。
症状の進行が非常に速いですが、原因を特定し、迅速かつ適切な治療を行えば、腎機能が回復する可能性があります。一刻も早い動物病院の受診が重要です。
慢性腎不全
慢性腎不全は、数ヶ月から数年かけて、ゆっくりと腎機能が失われていく状態です。加齢による機能低下が主な原因で、犬の腎不全のほとんどがこのタイプです。
残念ながら、一度壊れてしまった腎臓の組織は再生しないため、完治は望めません。治療の目的は、残された腎機能への負担を減らし、病気の進行を穏やかにして、QOL(生活の質)を維持することになります。
犬の腎不全は完治する?余命や病気の進行について
急性腎不全は、治療がうまくいけば回復も望めますが、手遅れになると数日で亡くなることもあります。
一方、犬の腎不全の多くを占める慢性腎不全は、ゆっくりと進行する病気であり、残念ながら失われた腎機能が元に戻ることはありません。この場合、治療の目標は「完治」ではなく、「いかに病気の進行を遅らせ、QOL(生活の質)を高く維持するか」に置かれます。
余命や進行スピード
慢性腎不全の余命は、診断された時のステージによって目安が示されます。早期のステージ1や2であれば、適切な食事療法やケアを続けることで、数年単位で穏やかに過ごせる子も少なくありません。しかし、症状が顕著になるステージ3以降では、予後が数ヶ月から1年程度となることもあります。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、個体差が大きいことを理解しておきましょう。個々の生命力や治療への反応によって大きく変わることもあります。
腎不全に関連する病気
腎不全に関連する病気として、腎臓病と尿毒症があります。それぞれの病気の特徴について詳しく見ていきます。
腎臓病
腎臓病は、腎不全の前段階として腎臓に異常や障害が生じた状態を指します。具体的には、糸球体腎炎や腎盂腎炎といった炎症性疾患が含まれます。これらの病気が進行すると、腎機能が徐々に低下し、老廃物の排泄や体内の水分調整がうまくできなくなります。
腎臓病は初期には症状が現れにくいことが多く、多飲多尿や軽い食欲不振といった些細な変化から始まることがあります。そのため、特に高齢の犬や基礎疾患を持つ犬に対しては、定期的な健康診断や尿検査を行うことが早期発見の鍵となります。
尿毒症
尿毒症は、腎不全が進行し、腎臓の機能がほとんど失われた結果、体内に老廃物や毒素が蓄積する状態を指します。この状態になると、腎臓が血液をろ過して不要な物質を排出する能力をほぼ失い、全身にさまざまな症状を引き起こします。
尿毒症を防ぐためには、前段階である腎臓病や腎不全の早期発見と管理が欠かせません。日頃から愛犬の健康状態を観察し、異変を感じた際には速やかに動物病院で診察を受けることが重要です。
犬の腎不全の初期症状・末期症状
初期に見られる症状
病気が静かに進行し始める初期段階では、症状も非常に軽微で、見過ごされがちです。以下の変化がないか、注意深く観察してみてください。
1. 水を飲む量、おしっこの量が明らかに増えた(多飲多尿)
腎不全の症状の1つ目は多飲多尿です。腎臓の尿を濃縮する機能が低下し、薄い尿がたくさん出るようになります。体は水分不足を補おうとするため、水を飲む量も自然と増えるのです。
「最近、お水の減りが早いな」と感じたら、一度24時間の飲水量を測ってみることをおすすめします。
2. 体重が少しずつ減ってきた
食欲は普段と変わらないように見えても、体重が徐々に減少することがあります。
これは、体に必要なタンパク質が尿に漏れ出てしまったり、老廃物の影響で栄養をうまく利用できなくなったりするためです。定期的に体重を測定する習慣をつけましょう。
3. 毛ヅヤが悪くなり、パサついてきた
皮膚や被毛は、体の栄養状態を反映する鏡です。腎機能の低下による栄養不良や脱水は、毛ヅヤの悪化やフケの増加として現れることがあります。
進行・末期に見られる症状
腎不全が進行し、体内に毒素が溜まる「尿毒症」の状態に近づくと、より分かりやすい症状が現れるようになります。
1.食欲不振・元気消失
体内に溜まった毒素が、吐き気や倦怠感を引き起こします。大好きだったおやつを食べなくなったり、散歩に行きたがらなくなったり、寝てばかりいるようになったりするのは、体が「つらい」と感じているサインです。
2. 嘔吐・下痢
尿毒症の毒素は、胃や腸の粘膜を直接刺激し、荒らしてしまいます。これにより、頻繁な嘔吐や、時には血が混じった下痢などを引き起こすことがあります。嘔吐や下痢は脱水症状をさらに悪化させるため、非常に危険な状態です。
3. 口臭や口内炎
体外に排出できない尿素などの毒素が、唾液中の酵素によって分解され、ツンとしたアンモニアのような口臭を発生させます。
また、毒素の影響で口の粘膜に炎症や潰瘍(口内炎)ができ、強い痛みからよだれが増えることもあります。
4. 貧血によるふらつき
腎臓は、赤血球を作るように指令を出すホルモン「エリスロポエチン」を分泌しています。腎機能が低下するとエリスロポエチンが作られなくなり、貧血が進行します。
舌や歯茎の色が白っぽくなったり、少し歩いただけでも息切れしたり、ふらついたりする様子が見られます。
5. 痙攣(けいれん)発作
腎不全の末期症状として現れる、最も重篤なサインの一つです。尿毒症が脳の神経系にまで影響を及ぼすことで、てんかんのような痙攣発作を引き起こします。この症状が見られた場合は、命に関わる非常に危険な状態です。
これらの症状は、一つだけでなく複数が同時に現れることもあります。どんな些細な変化でも、「いつもと違う」と感じたら、自己判断せず、まずはかかりつけの動物病院に相談しましょう。
慢性腎不全のステージ(IRIS分類)とは
慢性腎不全の重症度は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が策定した国際的な分類基準(IRISステージ分類)に沿って、主に血液検査の「クレアチニン(CREA)」の数値で判断されます。ステージを理解することで、愛犬が今どのような状態にあるのかを把握しやすくなります。
ステージ1:腎機能低下の始まり(クレアチニン値 < 1.4 mg/dL)
ステージ1の段階では、血中クレアチニン値は正常範囲内ですが、尿検査でタンパク尿が見られたり、画像診断で腎臓の形態異常が確認されたりします。
飲水量の増加など、ごく僅かな変化以外に目立った症状はほとんどありません。
ステージ2:腎機能の軽度低下(クレアチニン値 1.4~2.8 mg/dL)
腎機能の低下が少しずつ進行し、多くの犬で多飲多尿の症状が見られるようになります。
まだ食欲や元気は比較的保たれていることが多いですが、積極的な治療(食事療法など)を開始すべき段階です。
ステージ3:腎機能の中等度低下(クレアチニン値 2.9~5.0 mg/dL)
多くの飼い主が「おかしい」と気づく症状(食欲不振、嘔吐、体重減少、貧血など)が現れる段階です。
体内に毒素が溜まり始めているため、点滴治療や内服薬の投与など、積極的な内科治療が必要になります。
ステージ4:末期の腎不全(クレアチニン値 > 5.0 mg/dL)
腎臓がほとんど機能しておらず、尿毒症の症状が重篤になります。嘔吐や食欲不振が続き、痙攣発作などを起こすこともあります。
ステージ4の段階では、QOL(生活の質)をいかに維持するかを目的とした、緩和ケアが中心となります。
腎不全の主な原因
犬の腎不全の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が挙げられます。
- 加齢による腎機能の低下
- 中毒性物質の誤飲・誤食
- 感染症
- 歯周病
- 遺伝的要因
- 他の疾患からの影響
それぞれの原因について、以降で詳しく解説します。
1. 加齢による腎機能の低下
犬の慢性腎不全で最も多い原因が、加齢による腎機能の自然な衰えです。年齢を重ねると共に、血液をろ過する腎臓の細胞(ネフロン)が少しずつ壊れていき、再生することはありません。
7歳以上のシニア期に入ると、どんな犬にでも起こりうるリスクだと認識しておくことが大切です。
2. 中毒性物質の誤飲・誤食
愛犬が特定の食品や物質を誤って摂取すると、急性腎不全を引き起こす危険があります。特に注意が必要なのは以下のようなものです。
- ブドウやレーズン
- ユリ科の植物(ユリ、玉ねぎなど)
- 農薬や殺虫剤
特にブドウやレーズンの摂取は、少量でも急性腎不全を誘発することが報告されています。
これらの食品や植物を犬の手の届く場所に置かないよう注意し、散歩中も異物を食べないよう注意しましょう。
3. 感染症
レプトスピラ症などの細菌感染症は、腎臓に直接的なダメージを与え、腎不全を引き起こすことがあります。レプトスピラ症は、感染した動物の尿や汚染された水を介して感染するため、散歩中の水たまりや野生動物との接触に注意が必要です。
予防接種や適切な衛生管理を行い、飼い主として感染リスクを抑える努力をしましょう。
4. 歯周病
見過ごされがちですが、重度の歯周病も腎臓病の大きなリスク要因です。口内で増殖した歯周病菌が血流に乗り、全身に運ばれて腎臓に定着すると、そこで慢性的な炎症を引き起こし、徐々に腎機能にダメージを与えていきます。
5. 遺伝的要因
一部の犬種では、遺伝的に腎疾患のリスクが高いことが知られています。腎不全のリスクが高いとされる犬種は、以下のとおりです。
- シーズー
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- ゴールデン・レトリーバー
これらの犬種を飼育する場合は、特に腎臓の健康状態に注意を払い、定期的な検査を受けることが推奨されます。
6. 他の疾患からの影響
心臓病や高血圧、糖尿病、特定の腫瘍なども、腎不全の引き金となります。心臓病などで腎臓への血流が減少すること(腎前性)や、尿路結石や腫瘍で尿の通り道が塞がれること(腎後性)も、結果として腎臓そのものに負担をかけ、機能不全に陥らせる原因となるのです。
腎不全を診断するための検査
腎不全の診断では、主に以下のような検査が行われます。
血液検査
腎機能の指標となるBUN(尿素窒素)やCREA(クレアチニン)の数値を測定します。特にクレアチニン値は、慢性腎不全のステージ分類に用いられる重要な項目です。
また、近年ではより早期の腎機能低下を発見できる「SDMA」という検査も広く行われています。貧血や電解質バランスの異常も、この検査で確認します。
尿検査
尿の濃さを測る「尿比重」や、尿中にタンパク質が漏れ出ていないかを調べる「UPC(尿タンパク/クレアチニン比)」などを測定します。腎臓の、尿を濃縮する能力がどれだけ残っているかを評価するための検査です。
超音波・レントゲン
超音波(エコー)検査やレントゲン検査で、腎臓の大きさや形、内部の構造に異常がないかを確認します。
血圧測定
腎不全は高血圧を併発しやすい病気です。高血圧は、さらに腎臓や心臓、目にダメージを与えるため、血圧の管理は重要です。定期的な血圧測定で状態を把握し、必要に応じて降圧剤を使用します。
腎不全の治療方法
《急性腎臓病の場合》
原因となっている病気が判明している場合は、その病気を治療します。
また、腎臓を保護し、腎機能の回復を待つために点滴を行いつつ、腎不全による尿毒症の症状を改善するための対処療法が施されます。急性腎臓病が重度で、尿が作られない場合や点滴治療に反応しない場合は、透析治療という選択肢もあります。
《慢性腎臓病の場合》
すでに破壊されてしまった腎臓の組織は、再生することがないため、完治を目標にするというよりも、血液中の老廃物や毒素を体内にためすぎず、体調を維持しながら進行を遅らせることを目標に治療が行われます。
主な治療として、食事療法や点滴、血液中の毒素を吸着する薬やサプリの投与が行われます。また、そのほかにも高血圧や貧血などの症状に応じて薬を投与する場合もあります。
食事療法
慢性腎不全の治療において、最も重要となるのが食事療法です。腎臓に負担をかけるタンパク質、リン、ナトリウムを制限し、必要な栄養素が調整された腎臓病用の療法食が処方されます。
食いつきが悪い場合でも、様々なメーカーから多様な製品が出ているため、獣医師と相談しながら愛犬が食べてくれるものを探します。
腎臓病に適切な栄養バランスと、
和漢植物による腎臓を含めた内臓ケアが可能な療法食
点滴治療
腎臓病の犬は脱水症状を起こしていることが多く、その緩和のために点滴による水分補給を行います。また、点滴により体液を増やし、尿量を増やして、老廃物の排泄を促す目的もあります。
投薬
腎臓病の時に与える薬剤は、腎臓そのものに効果があるものというよりは、症状を緩和し、体調を維持するために投与され、具体的には以下のような種類があります。
1)活性炭やリン吸着剤 → 血液中の窒素化合物やリンなどの毒素を減らす
2)降圧剤 → 高血圧や腎臓の保護
3)造血剤 → 腎性貧血の補助治療
4)制吐剤や止瀉薬 → 吐き気や下痢などの消化器症状
透析治療
人工透析は主に急性腎臓病の際に実施する治療で、自身の腎臓の代わりに血液を浄化する方法です。人工透析には以下の2種類がありますが、麻酔するため、希望する場合は大きな病院への紹介が必要になることもあります。
1)腹膜透析 内臓を覆う腹膜を利用して、血液を浄化する方法
2)血液透析 血液を一度体外にとりだし、浄化して再び体内に戻す方法
腎不全を予防するために飼い主ができること
ここでは、腎不全を予防するために飼い主ができることを紹介します。
定期的に健康診断につれていく
特にシニア期に入ったら、年に1〜2回の健康診断を習慣にしましょう。症状が出る前の僅かな腎機能の低下も、血液検査や尿検査なら見つけることができます。「何かが起こる前に見つける」ことが、何よりの予防になります。
いつでも新鮮な水が飲めるような環境を整える
きれいな水が十分に飲めることは、腎臓の負担を減らす基本です。家の複数箇所に水飲み場を用意してあげたり、循環式の給水器を試してみたりと、愛犬が自然と水分を摂りたくなるような工夫をしてあげてください。
毎日の歯磨きで、口の中から腎臓を守る
口内環境の悪化は、腎臓の健康と深く関係しています。歯周病菌が体内に侵入し、腎臓にダメージを与えることがあるのです。愛犬の体を守るためにも、毎日の歯磨きをぜひ習慣にしましょう。
暮らしの中に潜む「危険」を遠ざける
急性腎不全の原因となる中毒は、家庭内の誤飲から起こることが多いです。犬にとって猛毒となるぶどうやユリ科の植物、人間用の薬などは、愛犬の手が絶対に届かない場所に厳重に保管しましょう。散歩中の拾い食いにも注意が必要です。
バランスの取れた食事と適度な運動を心がける
肥満は、高血圧や糖尿病を引き起こし、間接的に腎臓に負担をかけます。
愛犬の年齢や犬種に合った、栄養バランスの取れた総合栄養食を適量与え、適度な運動を心がけることが、生活習慣病と、その先にある腎不全の予防に繋がります。人間用の塩分の多い食べ物は与えないようにしましょう。
まとめ
本記事では、腎不全とはどのような病気なのか、その種類や症状、原因、そして治療法について詳しく解説しました。
腎不全は、犬の健康に大きな影響を及ぼす深刻な病気です。一度損傷した腎臓の機能を完全に回復させることは難しいため、早期発見と適切なケアが重要です。
今回ご紹介したように、腎不全の症状や原因を理解し、適切な治療法を選ぶことが愛犬の健康を守る第一歩となります。また、日頃の食事や生活環境を見直し、予防に努めることも大切です。
愛犬の飲む水の量が急に増えたり、食欲がなく元気がない様子が見られたりすると、「何か病気なのでは…」と、とても心配になりますよね。犬の腎不全は、特にシニア犬に多く見られる、飼い主として知っておくべき深刻な病気の一つです。
本記事では、腎不全とはどのような病気なのか、その種類や症状、原因、そして治療法について詳しく解説します。愛犬の健康を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

