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愛犬の食事やおやつとして、良質なタンパク質源として牛肉を加えたいと考える飼い主様は多いのではないでしょうか。牛肉は、良質なタンパク質やビタミンを豊富に含む食材です。
しかし、牛肉にはアレルギーのリスクや、部位による脂質量の違いなど、知っておくべき注意点があります。これらの知識がないまま与えてしまうと、かえって愛犬の健康を損なうことにもなりかねません。
この記事では、「犬に牛肉を与えても本当に安全なのか?」「どの部位を与えるのが適切なのか?」という疑問を解決するために、牛肉の栄養素や与える際の注意点について詳しく解説します。
犬に牛肉を与えても問題ない
結論からいうと、犬に牛肉を与えることは問題ありません。犬は肉食寄りの雑食動物であり、肉の消化に適した裂肉歯と消化器官を持っているからです。そのため、牛肉は良質なタンパク質源として、愛犬の体づくりをサポートしてくれます。
ただし、カロリーが高く、与え方を間違えると体に負担をかけることも。与える際は、年齢や健康状態に応じた配慮が重要になります。
牛肉に含まれる主な栄養素と効能
牛肉には、筋肉や皮膚、被毛の健康を支える良質なタンパク質をはじめ、効率の良いエネルギー源となる脂質、体の調子を整えるビタミンやミネラルなど、健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれています。ここでは、それぞれの栄養素が持つ犬への栄養効果を解説します。
1. タンパク質
タンパク質は、犬の健康を支えるために欠かせない重要な栄養素です。筋肉や骨、内臓、皮膚、被毛、血液、免疫細胞、さらにはホルモンや消化酵素など、体を構成し、機能させるあらゆる要素の材料になります。
また、免疫力の維持や回復力の向上にも深く関わっており、毎日の食事で適切に摂取することが大切です。
牛肉は高タンパクな食材として知られており、特にモモ肉には良質なタンパク質が豊富に含まれています。続いて、肩ロースなどの部位にも多く含まれており、成長期の犬や活動量の多い犬に適した食材の一つです。
ただし、タンパク質は消化・分解の過程で肝臓や腎臓に一定の負担がかかることがあります。健康な犬であれば問題なく処理できますが、腎臓や肝臓に疾患がある場合には、タンパク質の摂取量を制限することが推奨されるケースもあります。
そのため、ただ「多く与えればよい」というものではなく、体調や年齢、活動レベルに応じた適切なバランスを保つことが大切です。
2. 脂質
脂質は、タンパク質や炭水化物の2倍以上のエネルギーを供給し、効率的なカロリー補給が可能です。また、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を促し、体温調整や内臓保護にも重要な役割を果たします。
良質な脂質の適量を摂取することで、犬の皮膚を健康に保ち、被毛に栄養を与えて美しく維持する効果が期待できます。
3. ミネラル
亜鉛
牛肉100gに3.5~6.4gの亜鉛が含まれており、特に肩ロースに多く含まれます。亜鉛は、タンパク質の合成に必要な成分で、DNAやインスリンの合成、糖質の代謝、免疫反応を支える酵素の構成成分として働きます。さらに、ビタミンB群と共に肝臓機能を高める役割もあり、亜鉛が不足すると、発育不良・食欲不振・免疫低下・皮膚疾患・脱毛などの症状が現れることがあります。
鉄
体を動かすために欠くことのできないミネラルです。筋肉内で酸素を受け取り、血液中で酸素を運ぶ役割を持ち、不足すると皮膚や被毛のトラブルにつながります。
カリウム
過剰な塩分を排出し、ナトリウムとのバランスを保ち、血圧を安定させる働きがあります。ただし、腎機能が低下している場合には、過剰摂取で心臓にダメージを与える可能性があるため摂取量には注意が必要です。
4. ビタミン
ビタミンB12は、タンパク質の合成やエネルギー代謝をサポートし、正常な赤血球を作り出す“造血作用”をもつ補酵素です。また、末梢神経を構成する核酸やリン脂質の生成を促進し、神経を修復する働きもあります。
犬に牛肉を与えるおすすめの部位
牛肉と一言で言っても、部位によって脂質の量や肉質は大きく異なります。愛犬の年齢や健康状態に合わせて最適な部位を選んであげることは、消化への負担を減らし、安全に楽しむための重要なポイントです。
ここでは、犬に与えるのにおすすめの部位と、それぞれの特徴、注意点について見ていきましょう。
1. もも肉
脂質が少ない赤身部分はタンパク質が豊富で、犬に与えるのに適した部位です。カロリーも比較的低いため、体重が気になる子や、シニア犬にも安心して与えられます。ただし、脂身が少ない分、肉質が硬いため、小さく切って与えるようにしましょう。
2. ヒレ肉
非常に柔らかく、脂肪も少ないため、犬にとって最も消化しやすい部位の一つです。病後で体力が落ちている時や、消化機能が弱い子にも適しています。ただし、高価な部位であるため、特別なご褒美として活用するのが良いかもしれません。
3. ロース肉
適度な脂肪があり、風味も良いため、犬の食いつきが良い部位です。特に肩ロースには、皮膚の健康に役立つ亜鉛が多く含まれています。また、バラ肉に比べ、脂質量が少なめですが、目に見える脂身の部分はできるだけ取り除いてあげると良いでしょう。
また、肉質が硬めなので、細かく刻んで与えると食べやすくなります。
4. レバー
栄養の宝庫とも呼ばれる部位で、ビタミンAや鉄分が非常に豊富です。貧血気味の子や、健康な子の栄養補給に役立ちます。ただし、ビタミンAは過剰摂取すると体に害を及ぼす可能性があるため、ごく少量(おやつとして数グラム程度)に留めましょう。
5. バラ肉
脂質が多く風味が良いことから、嗜好性が高い部位ですが、カロリーが高いため肥満のリスクや消化器への負担が懸念されます。カロリー過多や、急性膵炎等の疾患リスクを避けるため、与える量や頻度は控え目にしましょう。
犬に牛肉を与える際の注意点
牛肉は犬にとって優れた栄養源ですが、与え方を間違えると、かえって愛犬を危険に晒すことにもなりかねません。安全に楽しむために、必ず守ってほしい、いくつかの重要な注意点があります。以下、具体的なポイントを見ていきましょう。
1. 加熱して与える
市販の牛肉(生食用以外)には、サルモネラ菌などの細菌や寄生虫が含まれている可能性があり、食中毒のリスクを伴います。犬に与える際は、必ず茹でるか焼くかして、中心部まで十分に加熱してください。また、加熱することで余分な脂質を落とすこともできます。
2. 味付けはしない
人間用に味付けされた牛肉は、犬にとっては塩分や糖分、香辛料が過剰です。特に、玉ねぎやニンニクを使ったタレは、犬にとって中毒の原因となり、非常に危険です。焼肉のタレや、すき焼きの割り下などが付いた肉は、絶対におすそ分けしないでください。
3. 脂身の多い部位は避ける
牛肉の脂身は、犬にとって消化しにくく、下痢や嘔吐の原因となります。また、高脂肪な食事は、急性膵炎など命に関わる深刻な病気の引き金になる可能性もあるため注意が必要です。
与える際は、もも肉などの赤身の部分を選び、目に見える脂身は取り除いてあげましょう。
4. 適量を与える
基本的に、完全栄養食であるドッグフードを与えていれば、追加で何かを与える必要はありません。お肉の与えすぎは肥満の原因になるだけでなく、過剰なタンパク質摂取は、腎臓病のリスクを高める可能性があります。
おやつやトッピングとして牛肉を与える場合は、1日に必要な摂取カロリーの10%程度に抑えるように心がけましょう。
5. アレルギーに気をつける
アレルギーの心配がある場合は、まず、ごく少量から与え、様子を観察しましょう。
少量であっても、嘔吐、下痢、皮膚の痒みや赤み、目の充血など体調の異変がみられた場合は、すぐに与えるのを中止し、動物病院を受診しましょう。
6. 加工肉は与えない
加工食品には、タマネギやニンニク、ナツメグ等、犬が食べてはいけない成分が含まれている場合があります。また、人間用の味付けには、砂糖や塩が犬にとって過剰に含まれていることも多いため注意が必要です。
誤って食べてしまわないよう、加工肉は犬の手の届かない場所に保管しましょう。
7. 骨付き肉を与えない
多くの犬は、骨についた肉や骨そのものを、かじることを好みますが、割れた骨を飲み込むと消化器官が傷ついたり、腸閉塞を引き起こす危険があります。骨付き肉を調理する場合には、必ず骨をしっかりと取り除いてから与えるようにしましょう。
8. 牛肉の単独使用は避ける
シニア犬や、腎臓、肝臓など内臓疾患がある場合には、牛肉を単独で与えると、タンパク質が高く、内臓に負担をかけてしまうことがあります。必ず、茹で野菜をミックスして与えましょう。
《茹で野菜の作り方》
◆サキニコブ(血糖値を上げにくい野菜)
サツマイモ・キノコ・ニンジン・コマツナ・ブロッコリー
いずれも必ず細かくみじん切りし、3分以上茹でて、ゆで汁は捨てましょう。
※焼く、蒸す、レンジはNG
牛肉:茹で野菜=1:1
特にシニア期や内臓疾患のある愛犬ちゃんにはこの様な工夫をしてあげると無難でしょう。
牛肉以外の肉を食べさせても大丈夫?
牛肉以外にも、犬が食べても良い肉はたくさんあります。それぞれに栄養的な特徴や与える際の注意点が異なります。愛犬の体質や健康状態に合わせて、上手に食事に取り入れていきましょう。
鶏肉
鶏肉、特にささみや胸肉は、低脂肪・高タンパクで、犬にとって非常に消化しやすい肉です。初めての手作り食や、消化機能が落ちているシニア犬にも安心して与えられます。
ただし、サルモネラ菌などの食中毒を防ぐため、必ず中心部までしっかりと加熱してください。また、加熱した鶏の骨は、縦に裂けて喉や消化器官を傷つける危険があるため、絶対に与えてはいけません。
豚肉
豚肉は、疲労回復を助けるビタミンB1が非常に豊富です。夏バテ気味の時や、運動後の栄養補給に適しています。
一方で、生の豚肉には寄生虫がいる可能性があるため、牛肉以上に中心部までしっかりと加熱してください。また、バラ肉などの脂身の多い部位は避け、ヒレやももといった赤身の部分を選ぶようにしましょう。
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鹿肉
鹿肉は、高タンパク・低脂肪・低カロリーで、アレルギーを起こしにくい「低アレルゲンな食材として注目されています。牛肉や鶏肉にアレルギーがある子の代替タンパク源としても優秀です。
また、貧血予防に役立つ鉄分も豊富。与える際は、必ず加熱してからにしましょう。
馬肉
馬肉も、鹿肉と同様に高タンパク・低脂肪・低アレルゲンな肉です。グリコーゲンや鉄分が豊富で、栄養価が高いのが特徴。他の肉に比べて、アレルギーのリスクが低いとされています。人間用の新鮮な馬刺しであれば、生で与えることも可能ですが、安全を第一に考えるなら、軽く火を通してから与えるのがおすすめです。
犬と牛肉に関するよくある質問
最後に犬と牛肉に関するよくある質問に回答します。
生肉(牛刺しなど)は与えてもいいですか?
人間用の生食用として、衛生管理が徹底されたものであれば、理論上は少量なら可能です。
しかし、食中毒のリスクはゼロではないため、安全のために加熱することを強く推奨します。スーパーなどで販売されている加熱用の牛肉には、サルモラ菌などが付着している可能性があるため、絶対に生では与えないでください。
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子犬や老犬(シニア犬)に与えても大丈夫ですか?
牛肉を与えても大丈夫です。ただし、消化機能が未熟だったり、衰えていたりするため、より配慮が必要です。脂質の少ないもも肉を選び、細かく刻んで、十分に加熱して与えてあげましょう。
特にシニア犬の場合は、タンパク質の過剰摂取が腎臓に負担をかけることもあるため、与える量には注意が必要です。
牛肉アレルギーの症状は?
牛肉アレルギーの主な症状は、皮膚のかゆみ、赤み、下痢、嘔吐などです。もし、牛肉を与えた後にこれらの症状が見られた場合は、すぐに与えるのを止め、動物病院を受診してください。アレルギーは、少量でも発症する可能性があるため、初めて与える際は、ごく少量から試すことが重要です。
骨付き肉の骨は、与えてもいいですか?
骨付き肉の骨は絶対に与えないでください。特に、加熱した骨は噛み砕いた際に鋭く割れやすく、口の中や食道、胃腸を傷つける危険があります。また、大きな塊を飲み込んでしまうと、腸閉塞の原因にもなります。
骨付き肉を調理した場合は、必ず骨を完全に取り除き、肉の部分だけを与えるようにしてください。
すき焼きや焼肉のおすそ分けは大丈夫ですか?
絶対にNGです。人間用に味付けされた牛肉は、犬にとっては塩分や糖分、香辛料が過剰です。特に、玉ねぎやニンニクを使ったタレは、犬にとって中毒の原因となるため危険です。テーブルの上から盗み食いされないよう、注意が必要です。
まとめ
犬に牛肉を与えることは、問題ありません。牛肉には、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンなど愛犬の健康な体づくりに欠かせない栄養素が豊富に含まれています。日々の食事に少し加えることで、愛犬の喜びと健康をサポートできるでしょう。せっかく与えるなら、安全で愛犬が一番喜ぶ方法で与えたいですよね。
そのためには、脂身の少ない部位を選び、加熱するなどの調理法を工夫することが大切です。また、加工肉や骨付き肉は、健康を害する危険があるため、避けるようにしましょう。
この記事で解説した部位や調理法を参考に、愛犬にぴったりの与え方を見つけてください。









