呼吸困難

犬の呼吸が早くて荒いのはなぜ?原因や病気、対処法

愛犬が、いつもより「ハァハァ」と早い呼吸をしている…。だけど、特に走り回ったわけでもない。そんなとき、「苦しいのかな?」「何か病気だったらどうしよう」と不安になりますよね。

犬の呼吸が速くなる原因は、暑さや興奮といった一時的なものから、心臓や肺の病気が隠れている場合まで様々です。

この記事では、犬の呼吸が早くなる原因や懸念される病気、対処法について解説します。正しい知識で、愛犬の「いつもと違う」に気づき、健康を守ってあげましょう。

犬の呼吸が早くなる主な原因

愛犬の呼吸が速くなるのには、必ず理由があります。運動後の一時的なものなのか、あるいは何らかの不調のサインなのか。以下で、犬の呼吸が早くなる原因を紹介します。

1. 運動後

犬も人間と同じく、運動時には筋肉が大量の酸素を消費するため、体外から酸素を早く取り込もうとして呼吸が速くなります。これは正常な生理的現象で、運動を終えてしばらくすると呼吸は自然に落ち着きます。

ただし、少しの運動で息が荒くなったり、運動を嫌がったりする場合は、心臓や呼吸器に問題があるかもしれません。そのため、体調や体型に合わせて適度な運動を心がけ、運動後には十分な水分を与えて休息を取らせることが大切です。

2. 体温調節

犬は、人間のような汗腺がほとんどないため、汗をかいて体温を調節することができません。代わりに、パンティング(口を開けて舌を出し、速く浅く呼吸する行動)によって体温を調節しています。パンティングは、運動後や暑い日に見られる正常な反応なので、涼しい場所で休ませてあげれば、自然と落ち着きます。

3. ストレス・不安

犬の早い呼吸は、精神的なストレスが原因のこともあります。人間がドキドキすると呼吸が速くなるのと同じで、犬も不安や恐怖を感じると一時的に呼吸が速くなります。例えば、雷や花火の音、あるいは動物病院などが苦手な子によく見られる反応です。

ストレスの原因がなくなれば、呼吸も自然と落ち着くので、まずは安心させてあげましょう。

4. 加齢による心肺機能の低下

愛犬がシニア期に入り、以前より疲れやすくなったと感じたら、それは加齢による心肺機能の低下が原因かもしれません。

年を重ねると、人間と同じように心臓や肺の働きが少しずつ衰えてきます。そのため、若い頃は平気だった散歩でも、息が上がりやすくなるのです。

これは自然な変化ですが、無理は禁物。愛犬のペースに合わせた、穏やかな運動を心がけましょう。

5. 怪我や病気による痛み

犬の呼吸が速くなる原因のひとつに、怪我や病気による痛みが考えられます。

犬は言葉で痛みを伝えられないため、呼吸の速さが数少ないサインの一つになります。外傷のような目に見える怪我だけでなく、お腹の病気による内臓の痛みは、飼い主さんには分かりにくいもの。日頃から体を優しく触って、痛がる場所がないかチェックしてあげましょう。

6. 異物誤飲

えずき、よだれ、速い呼吸。この3つのサインが同時に見られたら、異物の誤飲を強く疑ってください。飲み込んだものが喉や食道を塞ぎ、呼吸を圧迫している可能性があります。舌の色が青紫色になるチアノーゼは、体が酸欠に陥っている非常に危険なサインです。

中毒症状の場合もあるため、何を飲み込んだか分からなくても、これらの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診することが重要です。愛犬の呼吸が急に速くなった時、何かを飲み込んで喉に詰まらせている可能性も考えられます。

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7.体重過多(肥満)

愛犬の肥満も、呼吸が速くなる原因の一つです。体に余分な脂肪がつくと、心臓や肺、気道を常に圧迫してしまいます。そのため、少し動いただけでも息が上がりやすくなるのです。

肥満は、呼吸器だけでなく、体全体に大きな負担をかけます。もし、愛犬が太り気味であれば、それが息切れの原因かもしれません。

犬の正常な呼吸数

犬の正常な呼吸数の基準は、1分間に10〜35回です。ただし、これはあくまで目安であり、小型犬は大型犬に比べて呼吸数が多くなる傾向があり、運動後や興奮時には、体温調節のために一時的に呼吸が早くなります。

そのため、普段から愛犬が眠っている時や、リラックスしている時の呼吸数を数えておき、「うちの子の平常時」を知っておくことが、いざという時の的確な判断につながります。

犬の呼吸数の測り方

犬がリラックスしている安静時に、呼吸数を測ってみましょう。

胸やお腹が上下する動きを、1回の呼吸としてカウントします。

  • 安静時(寝ている時やじっとしている時)、1分間に何回呼吸するかを数えます。
  • 短時間で測定する場合は、10秒間の呼吸数を6倍にするか、15秒間の呼吸数を4倍にして、それを1分間の呼吸数とします。
  • 測定は犬がリラックスしている状態で行い、日常的にその数値を把握しておくことで、異常があった際にすぐに察知することが可能です。

呼吸数を測定することで、犬が快適に過ごしているか、ストレスや健康上の問題がないかを確認することができます。暑い時期や環境の変化により呼吸数が変わることもあるため、季節ごとにも観察しておくと役立つでしょう。

犬の呼吸が早いことで懸念される病気

安静にしている時でも愛犬の呼吸が早い場合、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。ここでは、呼吸が早いことで懸念される代表的な病気について解説します。

1. 呼吸器疾患(肺炎や気管支炎)

■肺炎
肺炎は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫などによる感染が原因で、肺胞とその周辺に炎症が生じる感染症です。このほか、誤嚥(食べ物や液体が気管に入ること)や刺激性の薬物、ガスの吸入などが原因で起こることもあります。

主な症状として、咳、鼻水、呼吸困難、震え、食欲不振、発熱などが見られ、場合によっては肺以外の場所にも感染が広がる可能性があります。肺炎は重症化しやすく、特に子犬や老犬では命に関わるリスクが高いため、症状が見られたら迅速に獣医師の診断を受けることが重要です。

■気管支炎
気管支炎は、主にウイルスや細菌による感染、寄生虫、ハウスダスト、タバコの煙などの化学物質、あるいは誤飲が原因で、気管支に炎症が生じる病気です。

犬が気管支炎にかかると、特徴的な乾いた咳をします。また、食欲不振や元気の低下が見られることもあります。この状態が慢性化すると治療が困難になり、重症化すると呼吸困難を引き起こすおそれがあるため、症状が現れたらできるだけ早く適切な対応をとることが重要です。

2. 心臓病

■僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓病の中で最も一般的なタイプで、心臓の左心房と左心室を隔てる僧帽弁が正常に閉じないことで血液が逆流する病気です。

この病気は初期段階では無症状であることが多いですが、進行すると運動や興奮時に咳が出るようになり、さらに悪化すると疲労感、体重減少、パンティング(呼吸が荒くなる)、呼吸困難などの症状が現れることがあります。また、毛細血管から血液中の水分が漏れ出し、肺水腫になる恐れもあります。

■心筋症

心筋症は、心臓の筋肉(心筋)に異常が生じ、心臓の機能が低下する病気です。心筋が正常に収縮できなくなると、酸素を含んだ血液が全身に十分に循環せず、体内の酸素不足が引き起こされます。これによって、呼吸数の増加やパンティング(呼吸が荒くなる)などの症状が現れることがあります。

3. 中毒症状

犬が危険な食材を誤飲・誤食してしまった場合、その食材による中毒症状が原因で呼吸数が異常に増えることがあります。

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犬の呼吸が早い場合の対処法

犬の呼吸が早い場合は、以下の対処法を試してみましょう。

1. うつ伏せの姿勢をとらせてあげる

愛犬の呼吸が早いときは、楽な姿勢をとらせ、快適な室温に設定してあげましょう。犬は、うつ伏せの姿勢が最も呼吸しやすいとされています。顎の下にタオルなどを置いて、少し頭を高くしてあげると、さらに呼吸が楽になります。

また、室温は21〜25℃、室温は50%〜60%程度が快適です。エアコンなどを活用して、涼しく過ごしやすい環境を整えてあげましょう。

2. 動物病院を受診する

愛犬に以下の症状が見られる場合は、緊急性が高いため、速やかに動物病院を受診してください。

・自然な呼吸ではなく、努力呼吸が見られる場合
(胸郭や肩を大きく動かして息をしている状態)
・上を向いて呼吸している、または通常の姿勢で呼吸できない
・咳が長く続いている
・舌や口内の粘膜が青色や紫色(チアノーゼ)、または白っぽく変色している
・異常な呼吸が5分以上続いている
・横になることができず、立ったまま苦しそうにしている

受診の際には、状況を詳細に伝えるために、愛犬の呼吸状態を動画に撮影し、服用中の薬があれば一緒に病院に持参すると役立ちます。また、運動直後や暑さなど明確な原因がある場合には、涼しい場所で様子を見ることも大切ですが、状態が改善されない、もしくは悪化する場合は、すぐに病院を受診することが推奨されます。

まとめ

犬の呼吸が早い原因は、運動後のような心配ないものから、心臓病などの危険な病気まで様々です。運動後でもないのに呼吸が速い場合は、病気のサインかもしれません。特に、咳をしていたり、舌の色がおかしかったりするときは、緊急性が高いと考えられます。

愛犬のいつもの状態を知っておくことが、いざという時の冷静な判断につながります。異常を感じたら、この記事を参考に、早めに動物病院へ相談してください。