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食パンを焼いていると、香ばしい香りに誘われて愛犬が寄ってくることはありませんか?これは、パンに含まれる糖分とタンパク質が加熱されて生じる「メイラード反応」によるものなんです。この反応で生まれる香ばしさは、私たち人間だけでなく犬にとっても大変魅力的です。
そんな愛犬の真剣な眼差しを向けられたものの、「食パンを食べさせても大丈夫なのか?」と気になりますよね。今回は、犬に食パンを与える量やメリット、注意点を解説します。犬に食パンを与えようか迷っている飼い主さんはもちろん、これから犬を飼おうと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
犬に食パンを与えても問題ない!
健康な犬であれば、食パンなどのシンプルなパンは少量食べても問題ありません。
食パンの主な材料である小麦粉、パン酵母、砂糖、塩、バター、水などは、犬にとって直接的に有害な成分ではないのです。
しかし、食パンは犬の健康維持に必要な栄養素がすべて含まれているわけではなく、あくまで炭水化物が中心の人間の食べ物です。いくら安全な食材といえ、与えすぎは肥満や栄養の偏りを招きます。
愛犬の健康を考えるなら、主食としては栄養バランスの整ったドッグフードを与えるようにして、パンはおやつ程度に留めましょう。
犬に与えてもいい食パンの適量は?
食パンを与える際の適量は、愛犬の体重によって様々です。一般的な目安として、1日の総カロリー摂取量の10%以下に抑えることが推奨されています。例えば、6枚切り食パン1枚(約12cm×12cm)は約160kcalと仮定すると、以下のような量が目安となります。
- 小型犬(~5kg):1日あたり食パン1/6枚
- 中型犬(~15kg):1日あたり食パン1/4枚
- 大型犬(~25kg):1日あたり食パン1/3枚まで
ただし、これはあくまでも健康な成犬の場合の目安です。成長期で多くの栄養が必要な子犬や、代謝が落ちる高齢犬、持病がある犬の場合は、さらに控えめにするか、与える前に獣医師に相談しましょう。
主食のドッグフードの栄養摂取を妨げないように気をつける必要があります。
犬に食パンを与えるメリット
犬に食パンを与えるメリットは、以下の3つです。
- 炭水化物がエネルギー源になる
- おやつとして与えやすい
- 薬を包んで与えられる
各メリットを詳しく紹介します。
1. 炭水化物がエネルギー源になる
パンの主原料は「小麦粉」で、主成分は「炭水化物」です。
炭水化物は、3大栄養素のひとつで、生命維持に必要なエネルギー源となる「糖質」とお腹の調子を整える「食物繊維」の2つに分けられます。
糖質は、体の中で1gあたり約4kcalのエネルギーを生み出し、たんぱく質や脂質に比べてすぐにエネルギーに変換されるため、少しエネルギーを補給したいときに少量与えるのは効果的です。食物繊維も、愛犬のお腹の調子を整えるのに役立ちます。
また、小麦粉にも「植物性たんぱく質」が含まれており、筋肉、骨、血液、皮膚の形成に重要な役割を果たします。さらに、たんぱく質の摂取は免疫力の向上にも役立ちます。
2. おやつとして与えやすい
食パンは、ふわふわした柔らかい食感で手でちぎりやすく、愛犬におやつとして手軽に与えられる食べ物です。トレーニングのご褒美や、コミュニケーションのためのおやつとしても使いやすいです。犬用のクッキーなどを常備していなくても、すぐにあげられるのは便利です。
しかし、先述の通り、食パンは犬にとって栄養バランスのとれた食べ物ではありません。与えすぎは肥満や栄養の偏りにつながる可能性があるので、基本的にはドッグフードを与え、パンはおやつ程度にしましょう。
3. 薬を包んで与えられる
動物病院の薬やフィラリア予防薬を愛犬に飲ませる際、食べ物に混ぜても残すことがあります。
そんな時に活躍するのが食パンです。柔らかくて包みやすい食パンで薬を覆い、団子状にして与えると、愛犬が薬に気付かずに食べてくれることがあります。
さらに、食パンにジャーキーの香りをつけることで食いつきを良くすることもできます。
ただし、こうした工夫をする場合でも、食パンの量は必要最小限に抑えることが大切です。主食のドッグフードをしっかり食べられなくなってしまっては本末転倒ですから、薬を包める最小限の量に留めるようにしましょう。
犬に食パンを与える際の注意点
菓子パン犬に食パンを与える際は、以下の点に注意してください。
- 砂糖やバターの量を控える
- 糖尿病や肥満気味の犬には与えない
- パンの耳は与えない
- 量を与えすぎない
- アレルギーに気を付ける
それぞれの注意点を詳しく解説します。
1. 砂糖やバターの量を控える
菓子パンやバターロール、惣菜パンなどには、砂糖やバターが使われており、糖分や油脂分が多く含まれるので、カロリーを摂りすぎてしまう可能性があります。
糖分を過剰に摂取すると、肥満の原因となり、糖尿病や心疾患の悪化に繋がります。また、油脂分はエネルギー源や脂溶性ビタミンを運ぶ役割がありますが、摂りすぎると膵炎などの疾患に繋がる恐れがあります。何もつけず、焼いていない、シンプルな食パンの白い部分だけを与えるようにしてください。
2. 糖尿病や肥満気味の犬には与えない
血糖値の上げやすさの指標としてGI値というものがあります。GI値は最大100で、数値が高くなるほど血糖値を急激に上げる傾向があり、70以上だと高GI食品とされています。
食パンはGI値が95と高く、血糖値を上昇させやすい食べ物です。高いGI値は血液中の糖を処理するために、多量のインスリンが分泌されたり、インスリンの分泌が追いつかないことがあり、そのことによって肥満や糖尿病のリスクが高まります。
したがって、糖尿病や肥満気味の犬はできるだけ避けたほうが良いでしょう。
また、同じパンでもライ麦パン(GI値55)や小麦全粒粉食パン(GI値50)は、GI値がそれほど高くありませんので、どうしてもパンを与えたい場合には種類にも配慮すると良いかもしれません。
3. パンの耳は与えない
茶色い部分である食パンの耳は、白い部分に比べてカロリーが高く、また固いため、与える大きさによっては喉に詰まらせてしまうリスクがあります。もし食パンを与える場合は、柔らかい白い部分を選び、小さくちぎって与えることをおすすめします。
特に小さな愛犬に食パンを与える際は、一口サイズに細かくちぎって、ゆっくり食べられるよう工夫してあげましょう。
4. 量を与えすぎない
犬にパンを与える際は、量に注意が必要です。パンは意外とカロリーが高く(6枚切りの食パン1枚あたり約160kcal)、糖質や油脂分の過剰摂取は肥満や病気のリスクを高めます。
また、パンを与えすぎると、主食のドッグフードを食べなくなったり、食べムラが生じる可能性があります。パンはおやつ程度にとどめ、主食であるドッグフードの栄養吸収に影響を与えないようにすると良いでしょう。
5. アレルギーに気を付ける
「小麦粉」を主原料とするパンは「小麦グルテン」が含まれるため、消化が悪く、犬にアレルギーや腸トラブルを引き起こす可能性があります。
したがって、小麦アレルギーをもつ犬にはパンを与えることは控えるべきですが、小麦以外にも大麦やライ麦に対する交差反応(※1)に注意が必要です。
近年、小麦アレルギーを持つ犬が増えています。愛犬にパンを与える場合は、最初は少量から始めてアレルギー症状が出ないか注意深く観察しましょう。
また、パンには小麦以外にもアレルゲンとなる卵や乳製品、とうもろこし等が含まれる場合も多く、アレルギー体質の犬は併せて注意しましょう。
※1 交差反応
アレルギー反応が出る対象物と似ている、または、同じ分子構造を持つ別の食材や植物などにもアレルギー反応が出てしまうこと。
食パン以外のパンは与えても良い?
食パン以外のパンを愛犬に与えても良いのか、気になる飼い主さんも多いはず。パンの種類によって与えても良いものと避けるべきものがはっきりと分かれます。ここでは、食パン以外のパンを与えていいか、それぞれのパンについて言及していきます。
1. 菓子パン
菓子パンは、見た目も香りも良く、愛犬も興味を示すかもしれませんが、残念ながら与えるべきではありません。菓子パンには糖分や脂肪分が多く含まれており、それが犬の肥満や歯周病等のリスクを高めてしまうからです。さらに、チョコレートやレーズンなど、犬に有害な材料を含む場合もあるため、与えないようにしましょう。
甘いパン、菓子パン、あんパン、クリームパン、メロンパンなども、高カロリーで血糖値を急激に上昇させてしまい、愛犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 惣菜パン
惣菜パンは人間にとって手軽で美味しい食べ物ですが、愛犬には危険な具材が含まれていることが多く、与えるべきではありません。惣菜パンの中でも特に注意が必要なのが、カレーパンやピザパン、ガーリックトーストなどです。これらの惣菜パンには、犬に有害なオニオンスライスやニンニクなどが使われていることがあります。スパイシーな調味料や香辛料なども愛犬の胃腸を刺激し、体調を崩す原因となってしまいます。
特に生の玉ねぎやニンニクが使われている場合は絶対に与えてはいけません。これらは犬の赤血球を破壊し、
3. 米粉パン
米は小麦や大麦に比べて犬にアレルギー反応が起きにくい食材ですが、完全にアレルギーのリスクがないわけではありません。
最近人気の米粉パンについても、犬に与えるのには適していない面があります。小麦粉の代わりに米粉が使われていますが、米粉にはフワフワの食感を生み出すグルテンが含まれていないため、「小麦グルテン」が混ぜられていることがあります。
「小麦グルテン」は小麦粉のタンパク質ですので、米粉パンにもアレルギーの可能性があるということになります。また、グルテンを使用しない場合、増粘剤などの添加物が多く含まれていることもあるため、犬にはおすすめできない商品が多いです。
4. フランスパン
フランスパンは小麦粉、塩、イースト菌という極めてシンプルな原料で作られているため、一見すると愛犬に与えても問題なさそうに思えます。
しかし、フランスパンは通常の食パンよりも硬く、特に表面のパリパリした部分は喉に詰まるリスクがあります。また、塩分が食パンよりも強めに効いていることが多く、塩分過多になりやすいです。食パンと同様、与えるとしても極少量に留め、できれば柔らかい部分を小さくちぎって与えるようにしましょう。
5. ロールパン
ロールパンは食パンと同じく小麦粉を主原料としていますが、バターやマーガリンなどの油脂がたっぷり練り込んで作られているのが特徴です。油脂の過剰摂取は愛犬のお腹を緩めてしまい、下痢を引き起こすことがあります。また、高カロリーであるため、与えすぎると肥満の原因にもなってしまいます。そのため、ロールパンを与えるのは控えめにしましょう。
犬が食パン以外のパンを食べてしまったときの対処法
愛犬が気づかないうちに菓子パンや惣菜パンを食べてしまった場合、まず慌てず、何を、いつ、どのくらい食べたかを確認してください。
特に、チョコレート、レーズン、玉ねぎなどの危険な具材が含まれているパンの場合は、症状が出ていなくても、すぐにかかりつけの獣医師に連絡して指示を仰ぎましょう。その際、以下の情報を伝えると診断がスムーズです。
- 食べたパンの種類(可能なら成分がわかるパッケージ)
- 食べたおおよその量
- 愛犬の体重
- 食べてからの経過時間や様子
具材が入っていないシンプルなパンの場合は、少量であれば深刻な問題になることは少ないでしょう。とはいえ、いつもと様子が違う、嘔吐や下痢などの症状が出た場合は、すぐに獣医師に相談するようにしましょう。
犬がパンを誤飲しないための予防策
パンの誤飲事故を防ぐためには、日頃からの適切な環境づくりと管理が重要です。まずは、パンやお菓子類は必ず戸棚やタッパーに入れて保管し、テーブルの上に放置しないようにしましょう。
特に子犬は好奇心旺盛で何でも口にする傾向があるため、目を離した隙を狙われることもあるので、食事中は特に注意が必要です。また、食事の後片付けはすぐに行い、パンくずなども床に残らないよう、こまめに掃除することも大切です。
飼い主様一人が気をつけていても、他の家族がパンを与えてしまっては意味がありません。家族全員で予防の意識を共有し、徹底することも重要です。特に小さな子どもがいる家庭では、おやつを食べながら歩き回ったり、パンを放置したりしないよう、しっかりと教える必要があります。
犬と食パンについてよくある質問
最後に犬と食パンについてよくある質問に回答していきます。
Q1:犬に食パンを与えても大丈夫ですか?
健康な犬であれば、食パンを適量与えることは問題ありません。食パンの主な原材料である小麦粉、イースト菌、塩などは、適切な量であれば犬にとって有害ではありません。ただし、あくまでおやつとして与え、一日の総カロリーの10%以下に抑えることが大切です。また、初めて与える際は少量から始めて、アレルギー反応が出ないか様子を見ましょう。
Q2:食パンの耳を与えても大丈夫ですか?
食パンの耳は、白い部分と比べて硬く、カロリーも高いため、できるだけ与えない方が無難です。特に小型犬の場合、喉に詰まらせる危険性があります。どうしても与える場合は、細かくちぎって柔らかくしてから与えるようにしましょう。また、一度に大量に与えることは避け、少量ずつ様子を見ながら与えます。
Q3:犬に与えてよいパンの種類は?
シンプルな材料で作られたプレーンな食パンやフランスパンは、少量であれば与えても問題ありません。できれば添加物が少なく、砂糖や油分を控えめに作られたものを選びましょう。また、特に食欲不振の高齢犬の場合は、パンの香りが食欲を刺激するきっかけになることもあります。ただし、必ず獣医師に相談してから与えるようにしてください。
Q4:犬に与えてはいけないパンの種類は?
チョコレートパン、レーズンパン、玉ねぎやニンニクの入った惣菜パンは絶対に与えてはいけません。これらの食材は犬にとって有害で、健康に影響を及ぼすリスクがあります。また、糖分や油分の多い菓子パンも、肥満や膵炎などの原因となる可能性があるため避けましょう。
Q5:犬用パンと人用パンの違いは?
犬用パンは、犬の健康を考慮して塩分や糖分を控えめに作られており、添加物も最小限に抑えられています。また、サイズも犬が食べやすい一口大に作られていることが多く、消化にも配慮されています。一方、人用パンは味や香りを重視して作られており、塩分や糖分が多く含まれていることがあります。
とはいえ、犬用パンも塩分や糖分が含まれていることには変わりないので、与えすぎには注意が必要です。
まとめ
犬に食パンを与えること自体は、適量を守れば大きな問題はありません。 エネルギー補給や投薬の補助といったメリットもあります。しかし、
パンの耳や、バター・砂糖が多いパン、そして菓子パン・惣菜パンは、犬の健康を害する大きなリスクを伴います。必ず、何もつけないシンプルな食パンの白い部分を、1日の摂取カロリーの10%以内で与えるようにしましょう。そして、小麦アレルギーの可能性も忘れないでください。
愛犬は食パンを喜んで食べるかもしれませんが、食欲減退時を除き、基本的にはドッグフードを主食としましょう。


