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犬がくしゃみをしている姿はそう珍しいものではないでしょう。
くしゃみは単なる反射や生理現象として起こることもありますが、病気が隠れている場合もあります。今回は、愛犬の健康を守るためにも、犬がくしゃみをする原因、犬のくしゃみで考えられる病気、対処法などについて解説します。
犬のくしゃみは危険サインの可能性も
くしゃみは本来、気道内の異物や分泌物などを排出するために生じる一種の防御反応なので、それ自体がただちに問題となるわけではありません。
しかし、くしゃみの頻度が高くなっている場合は風邪やアレルギーの他、呼吸器に何らかの異常や病変が生じている場合が多く、放置すると時には命に関わるケースもあります。異変を感じた場合は、動物病院を受診することが重要です。
逆くしゃみとは?
逆くしゃみとは発作性呼吸の一種で、犬がくしゃみを吸い込んだように見えることから「逆くしゃみ」と呼ばれています。
通常のくしゃみは空気が鼻孔から急速に押し出される現象ですが、逆くしゃみは空気を鼻孔から急激に連続して吸い込む発作性の呼吸です。このため、突然「ズーズー」や「グーグー」といった音を立てながら鼻から息を連続して吸い込みます。
逆くしゃみは生理的に起こることもあり、その場合、通常は1分前後で治まり、その後何事もなかったかのように元気になることが多いです。
ただし、頻度が多い場合には病気のサインかもしれませんので、動物病院を受診しましょう。
犬がくしゃみをする原因
犬のくしゃみは、さまざまな理由で発生しますが、基本的には外部の刺激や体内の防御反応として自然に起こるものです。中でも代表的な原因は以下の通りです。
- 異物による刺激
- 強い匂いによる刺激
- アレルギー反応
- カーミングシグナル
それぞれの原因について、詳しく解説していきます。
1. 異物による刺激
1つ目の原因は、犬が異物を吸い込んだときに、それを排除するためにくしゃみをすることです。犬は日常的に鼻を使って周囲の情報を収集しています。散歩中や家の中で、ホコリや小さな異物を鼻腔に吸い込むことがあり、これがくしゃみの一因となります。
くしゃみは異物を排出するための生理現象であり、一時的であれば特に心配はありません。
ただし、頻繁にくしゃみをしたり、鼻を気にするそぶりを見せる場合は、異物が鼻腔に深く入り込んでいる可能性があります。このような場合は、無理に取ろうとせず、動物病院での診察が必要です。
また、犬が吸い込みやすい小さな物を床に置かないよう、環境にも気を配ることが重要です。
2. 強い匂いによる刺激
2つ目の原因は、強い匂いによる鼻腔への刺激です。犬の嗅覚は人間の数千倍も敏感だと言われています。そのため、香水、タバコの煙、殺虫剤、香辛料などの強い匂いは犬にとって過剰な刺激となり、くしゃみを引き起こすことがあります。
家の中で頻繁にくしゃみをしている場合、これらの匂いが原因である可能性が高いです。
この問題を軽減するためには、香水や消臭剤を無香料のものに変える、空気清浄機を設置するなどの対策を講じると良いでしょう。また、煙草の煙や香辛料が近くにある環境では、犬が過度な刺激を受けないように工夫することが大切です。
3. アレルギー反応
3つ目の原因は、アレルギーによる鼻腔の刺激です。アレルギーは、犬がくしゃみをする一般的な原因の1つです。特に、ハウスダストや花粉、ダニなどがアレルゲンとなる場合があります。これらが犬の鼻腔を刺激し、くしゃみや鼻水といった症状を引き起こすことがあります。
アレルギーによるくしゃみは、特定の季節に集中することが多いですが、環境内のアレルゲンが原因であれば、年中くしゃみが続くこともあります。
アレルゲンを特定するためには、動物病院での診察や検査が必要です。また、定期的な掃除や空気清浄機の設置など、アレルゲンを減らす環境づくりが有効です。
4. カーミングシグナル
4つ目の原因は、犬がストレスや緊張を感じたときに出す「カーミングシグナル」です。犬はストレスや緊張を感じた際、自分を落ち着かせるために「カーミングシグナル」としてくしゃみをすることがあります。
例えば、遊んでいる最中や、新しい犬や人に会ったときにくしゃみをすることがあります。これは体調が悪いわけではなく、感情の表れとしてのくしゃみです。
カーミングシグナルには、くしゃみの他にも、あくびをする、頭を振る、口を半開きにするなどの行動があります。犬の行動をよく観察し、必要以上にストレスをかけないように配慮することが大切です。
くしゃみがもたらす病気の可能性
犬のくしゃみは単なる生理反応に過ぎないこともありますが、頻繁に続く場合、何らかの病気が原因である可能性があります。可能性のある病気は以下の通りです。
- 突発性鼻炎
- ウイルス性鼻炎
- 歯周病
- ケンネルコフ
- アレルギー
- 鼻腔内異物
それぞれの病気について詳しく解説します。
1. 突発性鼻炎
1つ目の原因は、突発性鼻炎です。突発性鼻炎は、犬の慢性鼻炎の中でも最も多い病気です。この病気は、アレルギーや空気中の刺激物、あるいは免疫系の異常が関与していると考えられていますが、明確な原因が特定されることは少なく、完治することが難しいのが特徴です。
症状としては、頻繁なくしゃみ、透明で水のような鼻水が続くことが多いです。また、炎症が慢性的に続くため、くしゃみ以外にも涙や目ヤニが増えることがあります。
この病気は命に直接関わるものではないため、日常生活には大きな影響がない場合もありますが、治療には根気が必要です。通常、獣医師の指示のもとで、抗炎症薬や抗ヒスタミン薬などの薬物療法が用いられますが、環境の改善や定期的なケアも必要になります。
2. ウイルス性鼻炎
2つ目の原因は、ウイルス性鼻炎です。ウイルス性鼻炎は、犬ジステンパーウイルスやアデノウイルス、犬ヘルペスウイルスなどが原因で引き起こされます。くしゃみや鼻水に加え、咳や発熱といった風邪に似た症状が現れることが多いです。
特にジステンパーウイルスは、重篤な症状を引き起こし、命に関わることもあります。
犬のウイルス性鼻炎は、通常ワクチン接種によって予防することが可能です。特に、ジステンパーウイルスやパラインフルエンザウイルスに対するワクチンは、子犬の時期から定期的に接種することでリスクを大幅に軽減できます。
また、犬がウイルス性鼻炎に感染してしまった場合、早期の診断と治療が非常に重要です。ウイルスが広がる前に抗ウイルス薬や対症療法を行うことで、症状を軽減させることが可能です。
3. 歯周病
3つ目の病気は歯周病です。歯周病は、中高齢の犬に特に多く見られる病気で、口腔内の細菌が原因で歯茎や歯を支える骨に炎症が起こるものです。
上顎の犬歯は鼻腔に非常に近いため、炎症が鼻腔にまで広がり、くしゃみや膿の混じった鼻水が出ることがあります。また、口臭が強くなる、歯がぐらぐらしてくる、食欲が低下するなどの症状も見られることが多いです。
歯周病が進行すると、鼻腔と口腔が繋がってしまう「口腔鼻腔フィステル」という状態になることがあります。これは、くしゃみが頻繁に起こるだけでなく、鼻血や鼻水が止まらなくなるなどの深刻な症状を引き起こします。
治療には、歯石除去や抜歯といった外科的処置が必要になる場合が多いため、予防として定期的な歯磨きや歯科チェックが推奨されます。
4. ケンネルコフ
4つ目の病気はケンネルコフです。ケンネルコフは、犬の呼吸器に感染する伝染病で、特に犬が密集する場所で感染しやすくなります。ケンネルコフの原因には、犬ジステンパーウイルス、犬パラインフルエンザウイルス、ボルデテラ菌などのウイルスや細菌があります。
主な症状は、くしゃみ、乾いた咳、鼻水、発熱です。
この病気は、子犬や高齢犬など免疫力が弱い犬に感染すると重症化する恐れがあり、放置すると肺炎に発展することもあります。
治療には抗生物質や抗ウイルス薬が用いられますが、ケンネルコフを予防するためには、混合ワクチンを定期的に接種することが最も効果的です。また、感染を広げないために、感染した犬は他の犬との接触を避け、適切な治療を受けることが重要です。
5. アレルギー
5つ目の原因として、アレルギーが挙げられます。犬も人間と同じように、アレルゲンに反応してくしゃみや鼻水を引き起こすことがあります。アレルギーの原因となるものには、花粉、ハウスダスト、ダニ、カビ、さらには食べ物まで様々です。
アレルギーによるくしゃみは季節性のものが多く、特に春や秋の花粉が多い時期に症状が悪化する傾向があります。
アレルギー症状は、くしゃみだけでなく、目のかゆみや皮膚の赤み、さらには食欲不振なども見られることがあります。アレルギーが疑われる場合は、動物病院での検査を行い、アレルゲンを特定することが必要です。
アレルゲンを避けるための対策としては、こまめな掃除や空気清浄機の使用、散歩後の体拭きなどが有効です。また、重度のアレルギーの場合は、アレルギー対策として薬の処方を受けることが推奨されます。
6. 鼻腔内異物
最後に、鼻腔内に異物が詰まっている場合も、くしゃみが続く原因となります。犬は散歩中や遊んでいる最中に、ホコリや砂、小さな植物の破片などを鼻に吸い込むことがあります。
これが一時的にくしゃみを引き起こすのは正常な反応ですが、異物が鼻腔内に深く入り込んでしまうと、くしゃみが止まらなくなり、鼻水や鼻出血を伴うこともあります。
さらに、異物だけでなく、鼻腔内に腫瘍ができた場合もくしゃみが長期間続く原因となります。特に高齢犬では、鼻腔内腫瘍のリスクが高く、くしゃみ以外にも顔の一部が腫れる、鼻血が頻繁に出るといった症状が見られる場合は、早急に獣医師の診察を受けることが必要です。
治療には異物の除去や、腫瘍の場合は外科的手術が必要になることがあります。
ケンネルコフの治療方法
ケンネルコフはくしゃみの原因の1つですが、犬の呼吸器に感染する病気で、早期に適切な治療を行えば1週間程度で回復することが多いです。
しかし、症状が重くなると命に関わることもあるため、慎重な対応が求められます。ここでは、具体的な治療方法をご紹介します。
抗生物質の投与
1つ目の治療方法は、細菌やマイコプラズマが原因である場合に使用される抗生物質の投与です。ケンネルコフの原因が細菌性の場合、抗生物質を使うことが一般的です。
特にボルデテラ菌やマイコプラズマなどの細菌が呼吸器に感染している場合、抗生物質の投与によって細菌の増殖を抑え、症状を改善させることが期待されます。
投薬は通常、1週間ほど続けられ、飼い主が自宅で内服薬を与えることが一般的です。抗生物質の処方に加えて、動物病院での定期的な診察が推奨されます。
ネブライザー
2つ目の治療方法は、ネブライザーを使った吸入治療です。ウイルスが原因のケンネルコフには、直接ウイルスを排除する治療法がないため、対症療法が行われます。その1つがネブライザーを使用した吸入治療です。
ネブライザーは、薬液を霧状にして犬の呼吸器に直接吸入させる装置で、気道を広げ、痰を出しやすくする効果があります。特に、犬が咳込み、呼吸が苦しそうに見える場合、この治療法は効果的です。
吸入治療は動物病院で行われることが多いですが、自宅でネブライザーを使用するケースもあります。
咳止めの投与
3つ目の治療方法は、咳を抑える薬の投与です。ケンネルコフの主な症状である乾いた咳を抑えるために、咳止めが処方されることがあります。特に、犬が咳込んで眠れない、食欲がないといった場合に、咳止め薬を使用することで症状が緩和されます。
咳止め薬は、犬の状態に応じて内服薬や注射で処方されることが多く、咳が続く期間中、定期的に与えることが推奨されます。ただし、咳を完全に止めることが目的ではなく、必要な量を調整しながら使用することが重要です。
水分補給と栄養管理
4つ目の治療として重要なのが、犬の体力を保つための水分補給と栄養管理です。ケンネルコフにかかると、食欲が低下したり、脱水症状を引き起こすことがあります。そのため、飼い主は十分な水分補給と栄養摂取をサポートすることが大切です。
場合によっては、流動食や栄養補助剤を使って、犬が無理なく必要な栄養を摂取できるように工夫することが求められます。特に、体力が落ちている犬には、消化の良い食事を少量ずつ与えることが効果的です。
くしゃみが止まらない時の対処法
最後に、犬のくしゃみは通常短時間で収まりますが、時には長時間続くケースもあります。こうした場面では、以下の対処法を検討してみてください。
- 動物病院を受診するタイミング
- 鼻腔内に異物がないか確認
- アレルギーの可能性を探る
- 重症化のリスクを考慮
それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。
1. 動物病院を受診するタイミング
1つ目の対処法は、早めに動物病院を受診することです。もし愛犬のくしゃみが1日に何度も続いたり、長時間止まらない場合は、すぐに動物病院へ連れて行くことを検討しましょう。
特に、くしゃみ以外に鼻水、咳、食欲不振、呼吸困難などの症状が見られる場合は、放置せずに専門的な診断を受けることが重要です。早期に受診すれば、症状の進行を防ぎ、適切な治療を始めることができます。
動物病院に行く際、症状を詳しく伝えることが診断の助けになります。愛犬のくしゃみの回数や頻度、その他の症状をメモしておいたり、動画を撮影しておくと、獣医師が診断する際の貴重な情報源になります。
2. 鼻腔内に異物がないか確認
2つ目の対処法は、犬の鼻腔内に異物が詰まっていないか確認することです。犬がくしゃみをする原因の1つに、鼻にホコリや砂、草などの異物が入るケースがあります。
通常はくしゃみで異物が排出されますが、もし長時間続く場合は、鼻腔に異物が残っている可能性があります。自宅で確認できる範囲であれば、慎重に観察してみましょう。
ただし、無理に取り出そうとせず、動物病院での検査を受けることが最善です。
3. アレルギーの可能性を探る
3つ目の対処法は、アレルギーが原因であるかどうか確認することです。犬も人間と同様に、アレルギーが原因でくしゃみを引き起こすことがあります。
特に、ハウスダストや花粉、ダニなどがアレルゲンとなり、くしゃみや鼻水が続く場合があります。もし、愛犬が特定の季節や環境でくしゃみをするようであれば、アレルギーの可能性が高いです。この場合、獣医師に相談し、アレルギー検査を受けることが推奨されます。
また、アレルギー対策として、こまめに掃除を行い、空気清浄機を使用するなどの環境改善も有効です。
4. 重症化のリスクを考慮
4つ目の対処法は、重症化するリスクを考慮して早めに行動することです。くしゃみが長期間続く場合、鼻腔内のポリープや腫瘍が原因であることがあります。
特に、くしゃみと一緒に鼻血が出る、片方の鼻孔からだけ血が出る場合は、腫瘍の可能性があります。こうした症状が見られた場合は、早期の診断と治療が不可欠です。
腫瘍の診断には、CTスキャンや内視鏡検査が必要になる場合もあるため、動物病院での精密検査を受けるなど、然るべき対処が必要となります。
まとめ
今回は、犬のくしゃみの原因や病気の可能性、対処法などについて網羅的に解説しました。犬も人間と同様にくしゃみをすることがあり、通常の生理現象であることが普通です。
しかし、中には病気などのサインであることもあるため、飼い主は愛犬の様子を観察し、異変があれば動物病院を受診するようにしましょう。
■犬のくしゃみは危険サインの可能性も
■逆くしゃみとは?
■犬がくしゃみをする原因
1.異物による刺激
2.強い匂いによる刺激
3.アレルギー反応
4.カーミングシグナル■くしゃみがもたらす病気の可能性
1.突発性鼻炎
2.ウイルス性鼻炎
3.歯周病
4.ケンネルコフ
5.アレルギー
6.鼻腔内異物■ケンネルコフの治療方法
・抗生物質の投与
・ネブライザー
・咳止めの投与
・水分補給と栄養管理■くしゃみが止まらない時の対処法
1.動物病院を受診するタイミング
2.鼻腔内に異物がないか確認
3.アレルギーの可能性を探る
4.重症化のリスクを考慮