耳疥癬

犬の耳ダニとは?症状や原因、治療法、対処法を紹介

「愛犬がしきりに耳を痒がる」

「耳の中から、黒いコーヒーかすのような耳垢がたくさん出てくる」

もしこのようなサインが見られたら、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)」という寄生虫が原因の皮膚病かもしれません。耳ダニ症は、特に子犬で発症しやすく、強い痒みを引き起こすだけでなく、放置すると外耳炎などを悪化させる厄介な病気です。

この記事では、耳ダニ症の初期症状の見分け方から、感染の原因、動物病院での治療法、家庭でできる対処法と予防策まで解説します。

【耳ダニかも?】愛犬の耳セルフチェックリスト

愛犬に以下のサインがないか、チェックしてみましょう。1つでも当てはまる場合は、耳ダニ症の可能性があります。

  • 黒や茶褐色の、乾燥した耳垢が大量に出る
  • 耳や頭をしきりに振っている
  • 後ろ足で耳のあたりを激しく掻いている
  • 床や家具に耳をこすりつけている
  • 耳から独特のツンとした臭いがする
  • 耳の周りの毛が抜けたり、赤くなったりしている

犬の耳ダニ(耳ダニ症)とは?

犬の耳ダニ症は、「耳疥癬(みみかいせん)」とも呼ばれる「ミミヒゼンダニ」という小さなダニが耳の穴に寄生して起こる皮膚病です。大きさは0.3~0.5mm程度と非常に小さく、肉眼では見ることはできません。

ミミヒゼンダニは、耳垢や皮膚の表面のフケなどをエサにして繁殖を繰り返し、その糞や唾液などがアレルギー反応を引き起こすことで、犬に激しい痒みをもたらします。

特に、ペットショップやブリーダーから迎えたばかりの子犬や子猫で感染が多く見られますが、成犬でも感染している動物との接触でうつります。生命力が強く、自然治癒することはほとんどないため、放置すれば症状は悪化する一方です。必ず動物病院での適切な治療が必要となります。

犬の耳ダニは人に感染する?

耳ダニは人に感染することがあります。ただし、ミミヒゼンダニは人間の皮膚上では長期間生存・繁殖できないため、その症状は一時的です。感染した場合、ダニが皮膚に侵入した箇所に、痒みを伴う赤い発疹が出ることがあります。

飼っている犬の耳ダニ治療が完了すれば、人の症状も自然に治まります。

犬の耳ダニの症状

犬が耳ダニを発症すると、以下の症状が見られます。

1. 耳の痒み

耳ダニの主な症状は痒みです。

・耳や耳の後ろを頻繁に後ろ足で掻く
・頭を頻繁に振る
・テーブルや絨毯に耳を擦り付ける行動
・耳を激しく掻くことによる傷や脱毛の発生

などがみられます。

2. 黒い耳垢

茶褐色や黒色の乾いた耳垢が大量に生成され、頻繁に耳掃除を行っても、耳から多量の黒い耳垢が続けて出たり、耳垢が増えて耳から異臭を発生することがあります。

3. 進行した場合の症状:外耳炎・耳血腫など

激しい痒みから耳を掻きすぎたり、頭を振りすぎたりすることで、二次的なトラブルを引き起こします。

  • 外耳炎:耳の皮膚が傷つき、細菌感染を起こして赤く腫れあがり、膿が出ることもあります。
  • 耳血腫(じけっしゅ):頭を激しく振ることで耳の血管が切れ、耳たぶ(耳介)が風船のようにパンパンに腫れあがります。
  • 皮膚炎:耳だけでなく、顔や首周り、尻尾などにまで痒みが広がり、皮膚炎を起こすこともあります。
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犬の耳ダニが起こる原因

犬の耳ダニは、すでに感染している犬や猫との直接的な感染によって感染するのが一般的な原因です。特に子犬の場合は、母犬から感染しているケースが多く見られます。

また、直接的に触れ合わなくても、感染した動物が使っていたベッドやブラシ、キャリーバッグなどに落ちたダニや卵が、別の犬にうつることもあります。そのため、以下のような場所は感染リスクが高まるため注意が必要です。

  • ペットショップ、ブリーダー施設
  • ペットホテル、トリミングサロン
  • ドッグランなど、多くの犬が集まる場所

免疫力の低い子犬やシニア犬、あるいは持病を持つ犬は、感染後に症状が重症化しやすいため、特に注意が必要です。

動物病院での検査と治療法

耳ダニが疑われる場合、動物病院では以下のような検査と治療が行われます。

検査・診断方法

獣医師は、耳鏡を使って耳の中の状態を観察します。次に、その耳垢を顕微鏡で見てミミヒゼンダニの本体や卵がいないかを確認。この検査でダニが確認できた場合に、確定診断となります。

主な治療法

耳ダニの治療は、ダニを駆除する薬の投与が中心となります。一度の投与だけでなく、卵から孵化するサイクルに合わせて、根絶するまで治療を続けることが大切です。

  • 駆除薬の投与:首筋に垂らすスポットタイプの駆除薬(例:レボリューション、アドボケートなど)が一般的です。耳の中に直接入れる点耳薬が処方されることもあります。
  • 耳の洗浄:病院で、溜まった黒い耳垢を専用の洗浄液で優しく洗い流します。これにより、薬の効果が高まり、痒みを和らげることができます。
  • 二次感染の治療:外耳炎などを併発している場合は、抗生剤や抗炎症薬の点耳薬や内服薬が併用されます。

治療期間と治療費の目安

治療期間と治療費の目安は以下のとおりです。

  • 治療期間:ダニのライフサイクルに合わせて、1ヶ月が目安です。通常、2〜4週間間隔で数回の駆除薬投与を行います。
  • 治療費:初診料、検査料、耳の洗浄、駆除薬などを合わせて、初回の治療費は5,000円〜15,000円程度が目安です。症状の重症度や、通院回数によって総額は異なります。

犬の耳ダニの対処法と予防法

動物病院での治療と並行して、ご家庭でのケアも行っていきましょう。

耳掃除をする

治療中は、獣医師の指示に従って耳掃除を行います。基本的には、耳の入り口付近の見える範囲を、専用のイヤークリーナーを染み込ませたコットンで優しく拭う程度に留めましょう。綿棒を耳の奥まで入れると、耳道を傷つけたり、耳垢を奥に押し込んだりする危険があります。

身の回りの環境を綺麗にする

耳ダニは犬の体から離れても、カーペットや寝床で数日間生存できます。再感染や、他のペットへの感染を防ぐため、以下の対策を徹底しましょう。

  • 犬が使っているベッド、毛布、おもちゃなどは、熱湯消毒するか、頻繁に洗濯・天日干しする。
  • 部屋全体をこまめに掃除機がけする。

なお、複数の犬や猫と暮らしている場合は注意が必要です。一匹に耳ダニが見つかった場合、症状が出ていない他の子も、すでに感染していると考えるべきです。一匹だけを治療しても、他の子から再び感染してしまう「うつし合い」の状態になり、永遠に完治しません。同居している全ての犬・猫を、同時に、そして完全に駆虫し終わるまで治療を続ける必要があります。

犬の耳ダニに関するよくある質問

最後に犬の耳ダニに関するよくある質問に答えていきます。

犬の耳ダニは自然治癒しますか?

自然治癒することはほとんどありません。 ミミヒゼンダニは非常に繁殖力が強く、治療をしなければ耳の中で増え続け、症状は悪化する一方です。必ず動物病院での駆除薬が必要です。

市販の耳掃除薬や、フロントラインなどの市販薬で治せますか?

自己判断での市販薬の使用は危険なため、推奨されません。 市販のイヤークリーナーには殺ダニ効果はなく、症状を悪化させる可能性もあります。

また、フロントラインプラスはノミ・マダニ用であり、ミミヒゼンダニへの効果は認められていません。必ず動物病院で、適切な薬を処方してもらってください。

耳ダニはどこから来るのですか?

ほとんどが、すでに感染している他の犬や猫との接触によってうつります。母犬から子犬へ、あるいはペットショップやドッグランで他の犬から、といったケースが考えられます。

まとめ

犬の耳ダニ症は、黒く乾燥した耳垢と激しい痒みが特徴的な寄生虫疾患です。幸い、適切な駆除薬で完治できる病気ですが、放置すると二次的な感染症を引き起こし、治療が長引いてしまいます。

愛犬が耳を異常に痒がっていたり、特徴的な黒い耳垢が見られたりした場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

また、治療と並行して、ご家庭での環境整備を徹底することが、再感染や他のペットへの感染拡大を防ぐ上で重要です。